仲良川

仲良(ナカラ)川は県道の西の終着点、白浜集落のすぐ西に位置する川です。西表では、浦内川、仲間川に続く第3の規模の川の一つで、河口より数キロ先まで、ヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギなどマングローブ植物が、群生して見られます。
 白浜港を出発し、早速河口から仲良川に入っていくと、まずその川幅の広さに驚かされます。河口域ではアマモが海底を覆い尽くし、大きな魚に追われた小魚の群れがカヤックのすぐ脇でアーチを描くように水面から飛び出す姿も見られます。
しかし、まずは、この河口部を抜けるまでが一苦労です。特に干潮時には大きな干潟が出現し、最短距離を突っ切れなくなる為、一端正面の内離れ島方面に大きく迂回して川の反対岸に近いところにある水路から川へ漕ぎ上がります。満潮時でも、潮が干潮に向かって動いていれば、これがなかなか大変で、漕いでも思ったほどに進まず、広すぎる景色が変わり映えのしないイメージを持たせる為、退屈に感じる人もあるでしょう。が、勿論、そこは我慢です。歌を唄うなり、競争するなり、えっちらおっちら乗り越えます。

 しかし、ピナイ川など流域の短い川でしかマングローブ林を見ていない方にとって、この河口域からはるか上流まで続く深いマングローブの森はその規模もさることながら、一本一本の木々の成長度合い、八重山では比較的少ないとされるメヒルギの数の多さ等、驚かされることも多いでしょう。要は考え方、感じ方次第ですね。
また、仲良川下流域は、かって西表島で採炭華やかなりし時代、就労者達が川面に水上家屋を建てて住んでいたと言います。そんなアジアらしい昔の光景にも思いをめぐらせながらも、無駄に休憩は取らずに出来るだけ頑張って漕ぎ続けることが大事となります。
と言うのも、この仲良川、実は片道6キロ以上を漕がねばならないのです。単純にそれだけでも2時間は見なければいけません。しかも、勿体無いことにこの川の支流は素晴らしい景観を持ったものが多く、時間の許す限りこれらに寄り道する方が絶対にお得なのです。
片道6キロのロングツーリングも終盤を迎えれば、川岸からはマングローブの姿が消え、亜熱帯の植物達が花の色を競い合うようになります。センダン、ノボタン、ユウナ、サガリ花、アダン。中にはフトモモまで見えます。そして、それらの奥から聞こえてくるのはアカショウビンやリュウキュウサンコウチョウ、シロハラクイナなどのさえずりです。水面に突き出した流木の上にはコバルトブルーのカワセミが留まり、僕らの姿を見つけては先へ先へ道案内を買ってでるでしょう。上空にはカンムリワシまでも弧を描いて舞っています。
また珍しい鳥も見られます。エメラルドに輝くキンバトの番やヤマショウビンなど写真は撮れなくとも、その感動はかなり大きいです。
途中、一大果樹園を作ろうとして果たせなかった男の桟橋が、その朽ちた姿を曝していますが、彼の植えた多くの果樹は今もこの奥でその実をたわわに結んでいるのでしょうか。

頑張って時間を稼いだなら、ようやくの休憩を兼ねて、いい感じのする支流にカヤックを進めて見ましょう。不思議なことにきっと風の音さえ、止んだ気がすることでしょう。
しばらく支流を奥に進んだら、パドルを置き、じっと漂ってみることをお奨めします。会話もやめて、少し自分の息遣いを追いかけてみます。すると、今まで気付かなかった色々な自然からのメッセージが読み取れるはずです。
木立に差し込む光の色。木漏れ日そのものの変化。マングローブの湿地自体が発する独特の匂い。生命の匂い。そして、風に揺れる遠くの森。近くの木。リュウキュウメジロやサンコウチョウの囀り。
そこではその環境の中で、明らかに「異質」である自分という存在に気付き、自らなんとか同化しようと無意識に努めてしまうのです。そして、その同化するという行為の気持ちよさこそが恥ずかしくもなく敢えて言うならば、「癒し」となっているのですね。

漁船の並ぶ白浜港を出発し、まずは河口を目指す。

やたらと川幅の広い下流部。漕いでも漕いでも進んだ気があまりしない

ここらでは、時折吹き降ろす谷間風にも負けず、
頑張って飛ばすべし。

むむ、水の色さえ違う支流。本流の風による水面のざわつきもぴたりとおさまる。

ただ、「ポチャッポチャッ」というパドルが水をすくう音だけを聞きながらゆっくり奥へと進む。

鏡のように水面に逆さに映えるオヒルギの木立。

支流の奥にてぼうっと漂う。光、匂い、音。全てが沁み込んでくる。

川幅は狭いので、カヤックの操作には慎重さが必要。Uターンの時もより慎重に。

かなり去りがたい。自分と環境が一対一で対話する気持ちよさ。

リフレッシュしたならば、再び快調に飛ばそう。先は長い。

不思議なオヒルギ。実は20年以上前に当時ここを訪れた学生が記念に柔らかい若木を結んで行ったのがそのまま育った。

サガリバナの支流。初夏に美しい花を咲かせるサガリバナの巨木が両岸を縁取り、また奥にまで生える。

この景色をジャングル的と言わずして、何をジャングル的と言おう。精霊の気配を感じる場所の一つ。

 さて、ようやく上流まで来てカヤックを降りると、ほっとするのも束の間。次は身支度を整えて、その先の美しい滝を目指します。道程は比較的易しく、平坦ですが、20分ほどの僅かなその距離の中でも、また多くの亜熱帯の動植物を観察することが出来るでしょう。
途中川の中を渡らねばならない場面や非常に滑りやすい場所もあり、足元には十分な注意が必要となります。また、ハブも割合に多い気がしますので気をつけましょう。
<-- 雨上がりなどに喜んで足に這い上がってくるのはヤマビル。最初とても小さかったのが、血を吸ってまるまると肥えてきた。不気味で人気は勿論ないが、蚊ほどにも痛くも痒くもない。満腹すると勝手に落ちるので無視を決め込む。無理に取ると血が止まらなくなるので、取る場合にはタバコの火が有効。
身体を起き上がらせ、吸い付く相手を探すヒル。驚くなかれ。嫌うなかれ。西表の山の中なら何処にでもいる。

ほら、もう滝が見えた!

到着した滝は非常に立派な滝。辺りはマイナスイオンが充満し、とても涼しい。水量も多く、夏場ならば遊びどころ満載。怪我ないように注意して遊びましょうね。

ピナイサーラのように直接高い場所から落ちてくる訳ではないが、その水量に圧倒され、立ち続けることは難しい。でも、やっぱり滝浴びが一番面白い。

滝壷は広く深い。飛び込みに手頃な岩もあったりして、やっぱり遊べる滝なのであった。言うまでもないが海とは違い、体は浮かびにくいので、泳げない人は要ライジャケ。

そうして、目指す滝が岩の上から見えた時、やっぱりちょっぴり感激するかも知れません。仲良の滝(通称。本来、名前はない。ナーラの滝、幻の滝などの呼び方も全くの出鱈目)はあくまで白く大きく、そして美しい滝なのです。滝の下に広がる広い大きな岩場は滑りやすいので焦らず、ゆっくり滝の真下まで接近しましょう。滝は逃げたりしません。因みに滝の下の大きな淵などは手長エビがいっぱいで、それなりに楽しめますので、後で戻ってきてもいいですね。
でも、とりあえずはぱあっと服を脱ぎすてて滝が見下ろす、大きな滝壷へ踊り込みましょう。きっもちいいぞ〜!

遊び疲れて体が冷えたなら・・・
簡単に作れる八重山そばなどで遅めのお昼。体を暖めましょう。これが本当に美味いんだ。

時間には余裕を持って、滝を出発すれば、行きとは違い、意外に漕ぎやすい帰りの川。またぞろ休憩かねて支流へ寄り道。

ラストスパート!

仲良川へは、いくつかのツアーが出ています。しかし、中には片道だけカヤックを使い、もう片道は動力船を使って送迎するというやり方をとっているショップもあります。それだけ、滝までの所要時間が長いということなのですが、逆に往復漕がせてくれるショップならば、完走し終えた時の充実感は非常に大きいということです。僕がガイドをしていて抱いた感想は、ああ、もっと時間に余裕があれば、あれもこれも見せれるのに・・・ということでした。それぐらい見所満載のコースですね。

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