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カンムリワシ

西表島、
隣人達の事件簿

保護され、段ボールに入れられて、石垣へ送られることとなったカンムリワシ。声にならぬ悲鳴をあげて、それでも僕達を威嚇した。

箱の上から覗き込む僕らをずっと睨みつけるのだが、しかし、その体には力はなく、立ち上げることさえ出来なかった。

運び込まれた直後のカンムリワシ。こんな大きな体でもやはり鳥。非常に軽いなと思ったら、後の調査で、ガリガリに痩せていたことが分った。「ヒーヒー!」という息を吐き出すような必死の威嚇。さすがに痩せても枯れても猛禽類だ。保護施設に搬送後、死亡。

イリオモテヤマネコが特別天然記念物だっていう話はかなり有名ですが、ではカンムリワシが同じ特別天然記念物だという話はどうでしょう?
実はヤマネコの島内100等前後に対し、島内200羽前後。同格に保護されてしかるべきものなのですが、一般レベルの意識では、なぜか、希少感が薄いのがこのカンムリワシです。
正確に言えば、西表島以外にも国内では石垣島で見られたり、またさらに南方に生息していたり・・・と実際に世界的レベルではヤマネコの希少性には劣ります。それ以外にも、密林の支配者として陰に潜み、なかなかお目にかかれないヤマネコに対し、カンムリワシは「ヒヒヒー!」という鳴き声も高く、大空を優雅に舞っている姿をよく目にし、また県道沿いの電信柱にじっと留まって下を眺めている姿もよく目にとまります。逆に言えば、それだけ人間にとっては親しみのある動物なんですね。島での方言名は「マヤダン」。
人々に危害を加えるハブを狩るところから、田圃の守り神などと呼んでいる人もいるようですが、それが果たして一般的であったかどうかは、「ヤマネコ」は神だった説同様、今となっては知る術もありません。しかし、その親しみやすさは今と同様、変わらないものであったでしょう。むしろ農作業で外にいる機会の多かった昔の人にとって、カンムリワシは余計に親しみを覚える存在であったかも知れません。
さて、このカンムリワシなんですが、ワシとは言え、あまり大きくありません。島では見かけませんが、分りやすく言えば、「トンビ」以下です。したがって、大空の覇者かと言えば、決してそうではなく、よくカラスに追いまわされ悲鳴をあげている姿も見かけます。そういうところにこの鳥の可愛らしさがあるのでしょう。
性格も攻撃的な猛禽のイメージからはやや異なり、狩りの方法も空中ダイブならぬ、電信柱待ち伏せ型。つまり、一時間でも二時間でもじっと電信柱の上に留まり、開けた道路上を横断しようとする動物(特にカニやヘビ)を待つという方法。

しかも、近年ではこうした道路の交通量も増え、また呑気でゆったりとした島人気質から、無闇に時間を争うかのような性格へ運転者の気質も変化した為、往来中の動物がよく轢かれるようにもなり、カンムリワシとしては一切の労力を払わずにこうした新鮮な餌を手に入れられるようになったわけです果たして、このことが彼らにとって良かったのか悪かったのかと言うと・・・。
この荒っぽい運転の事故に遭っているのは、何も彼らの餌となる小動物ばかりではないのです。他ならぬカンムリワシ自身が事故の犠牲になっています。待ち伏せ型の彼らがやっと餌にありつけると路上に飛び降り、小動物を攻撃したり、ついばんだりして夢中になっている時、向こうから猛スピードで車がやってきます。或いは猛スピードでなくとも、たまたまカーブの向こうから車がやってきたならば・・・。
実はワシタカの仲間は地面に降りた状態からの急上昇が出来ません。鳥にしてはやはり体が重たいのです。地面と一度並行に低空飛行してから徐々に上昇します。仮に車に気付いても、それが遅ければ、撥ねられる可能性も高いのです。実際、ヤマネコのように記事にならないだけで、カンムリワシの事故はかなりの数にのぼっています。
写真の固体は住吉の県道で蹲っていたのを保護されたものです。この時は「可愛そうに。事故にあったのだな・・・」ぐらいの感覚でしたが、しかるべき施設に送ってしばらく後に帰ってきた答えにより、「事故に遭ったのはしばらく以前であり、その後、餌が捕れなくなって衰弱し、路上に蹲っていたもの」という事情が分りました。このことは、即死してセンターなどに届けられる以上の数のカンムリワシが交通事故の犠牲にあっている可能性を示唆しています。最初は軽く羽根を傷めたぐらいのものが、次第にそれが原因で餌も捕れなくなってしまうのですね。野生動物の怪我は、一見小さなようでもすぐに生死に結びつくようです。皆さんも西表に来たら、決してスピードを出さずに運転して下さい。後から他の車が煽ってきても、無理せず、追い越させましょう。代わりに道路上に這い出してきた様々な動物が見えてくる筈です。

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