2011年5月〜6月 三重県
安濃川
発眼卵放流の効果検証のため、長らく封印してきた安濃川釣行記。
今回、河川名を明記しての釣行記を再開した理由は後で記載するが、実は他にも理由がある。
書く気が失せたのだ。
思い起こせばそれは昨年(2010年)の9月。禁漁日も迫り、私は2010年最後の安濃川釣行を楽しんでいた・・・。
プロローグ
その日、管理人は普通に釣りをしていた。本当に、普通に釣りをしていただけだった。
突然、頭上から怒鳴り声が響き渡った。
「あの車、お前のやろ!ナンバー覚えたからな! ●●-●●!」
一瞬、頭が真っ白になった。意味が分からない。道路を見上げると、初老の男が、仁王立ちしてこちらを睨みつけている。
しかし、車を注意されたことから、自分が駐車した場所が通行の邪魔になったのかもと思い直し、とりあえず「すいません」と謝った。(日本人の悪い癖だね)
しかし、そのおじさんは近づいてきて、「ふざけたことばかりするなよ!もうこの川へ来るな!!」と再度怒鳴る。
いくらなんでも頭にきたので川から上がり、何を一体怒っているのかと聞くと、「お前は私の家の前で、くしゃみをした!」との事。
くしゃみした記憶はないので、「してませんが」と言うと、そこからは水掛け論。
「した!」
「してません」
「した!!」
「してません」
「2〜3回続けてした!!」
「してないって!」
「ハクショーン!と、わざと聞こえるように大きな声出してした!」
「してないって言ってんでしょーが!!」
こんなやり取りを延々10分。怒りを通り越して笑えてくる。
不意におじさん、
「した!2 週 間 ぐ ら い 前 に あそこに車停めてした!」
「ちょ・ちょっと待て(汗)。あなた、今俺がくしゃみしたみたいに言わなかった?」
「言ってない。2週間前に、そこへ車停めてくしゃみした!」
「2週間前にくしゃみしたかどうかなんて、覚えてるわけないだろ!あと、そこって道路やねーか!」
「私の家の前を通る道路だ!あなたのような気分の悪い人はこの川へ来なくていい!」
「この道路はあなたの庭!!?? この川は、あなたの私有地!!??」
「警察に言ってもいい!非常識だからお前を捕まえてもらう!」
こんな感じでさらに10分。埒があかないので、とりあえず
「わかりました。覚えていませんが、仮にくしゃみをしていて、それがあなたの気に障ったのならお詫びします。ただし、人を犯罪人呼ばわりしたあなたに対し、次の点を確認する」
ここから先の内容は、個人がモロ特定される内容なので、伏字だヨ
「あの×××はあなたのものか。●●や★★が置いてあるが、あなたのものか。その土地、◆◆◆って占有しているが、あなたの土地か。ここは河川区域の公用地で、私有地ではなかったと記憶している(あてずっぽ)」
突然おじさんのトーンが下がったので、一気に捲し立てる。
「あなたの行為は×××で明らかに窃盗だ。三重県民の共有の財産である★★★を個人で勝手に使用している。そのゴミは産業廃棄物処理法違反。その土地の◆◆◆は不法占拠あるいは不動産侵奪だ。刑事告発できる内容もある。自分の行為は棚に上げて、くしゃみ一つで他人をそこまで非難し、怒鳴り、一方的に文句言えるか内容か?!!」
言っとくが、6割方はハッタリだ。
こんな感じで延々20分。
話がかみ合わないのを我慢しつつ、じっくり話を聞くと、おじさんが台風の後、ゴミを片付けていることや不法投棄していく輩を何度も注意したこと、自殺者を発見してることなど、いろいろ話が膨らみ、
「あぁそうか。俺もこの川でアマゴの卵を放流してるんだよ。子供達が魚を釣れる環境を残さなければ、この川はただのゴミ捨て場になる。」
この川は、守らなければならないからな・・・みたいな会話になり、最終的に「安濃川が好きだという点では、お互い認識は一致しているようだな」「まぁ、そうとは言えるな」「あんたのような人を悪く言ってすまんかった。また釣りに来てくれ」で和解しました。
しかし、表面上は解決したものの、どうにも腹の虫が収まらない。管理人は、かれこれこの川に通って15年になるが、このオジサンを見始めたのはせいぜいここ2〜3年だ。
少し車を走らせ、それこそ10年来の付き合いになる顔見知りのじいちゃん(元・安濃川漁協組合員)に話を聞くと、どうやら最近移り住んできた人で、地元の人も知らない人が多く、変わり者だと聞いているとの事。
「付かず離れずがベストだな・・・」
川に頻繁に通う事もあり、敵には回したくない。「挨拶程度の付き合いにしておこう」と決めた。
この判断は正しかった。しかし、正解ではなかったのだ。これが後の悲劇を招く。
Round 2
2011年も解禁し、各地から様々な釣行記が発信される。
しかし、当サイトで3月にアップした釣行記は宮川の1回のみ。天気が悪い日を除き、ほぼ毎週通っているにもかかわらず、発眼卵放流の調査のため安濃川釣行記を書けないのは少しモヤモヤする。
何度かお伝えしているが、冬に発眼卵を放流し、翌年春には多数の稚魚が見られる。秋には10cm程度まで成長し、次の年の春、12cm位に成長した1年魚を確認・・・ここまでは良い。
しかし、安濃川では「1歳の夏」を境に、放流したアマゴの大多数が姿を消す。高水温、餌不足、鳥などの外敵。減少の要因は色々考えられるが、やはり疑わしいのは「釣り人に大量に抜かれているのではないか」ということ。
実際に全てをこの目で確かめたわけではないが、当サイトに寄せられるメール等からすると、釣りに限らず、網入れやトラップの設置など、夏場に相当荒らされている模様。
こんな状況が繰り返されるなら、むしろ沢山の釣り師に来てもらい、人的プレッシャーを高めた方が抜かれる数は減るのでは・・・。そう思い始めた。
色々考え事をして釣り上がっていると、釣行3回に1回は「くしゃみ事件」のオジサンと出くわす。
「コンニチハー」
「おう、釣れたか」
「先週、結構雨が降りましたねー。大丈夫でした?」
「大した事はなかったな」
こんな他愛のない会話。しかし、これで良いのだ。深入りすると危険な事は、先のトラブルで重々身に染みている。
しかし、そんな平和な日々は脆くも崩れ去った。
2011年、何回目の安濃川釣行だろうか。
川から上がり、私はロッドをバラし、帰り支度をしていた。
少し遠くに例のオジサンの姿が見えた。
車にシューズやウェーダー等の荷物を積み終わり、車に乗り込んだところ、ふと見るとオジサンが手を振っている。
私も「バイバイ」の意味で窓から手を振った。
車を走らせ、1kmほど山を下っただろうか。ふとバックミラーを見ると、1台の車が猛スピードで迫ってくる。そして、パッシングを繰り返し、車のすぐ後ろで蛇行運転を始めた。
運転席には・・・・・例のオジサン。
この瞬間、悟った。言葉は悪いが確信した。「くるっとる・・」
速度を落としたところ、例のオジサンは追い抜きざまに幅寄せを掛け、2台の車は停車した。
窓を開け、どうせろくでも無い事を言われるのだろうと覚悟して言った。
「何でした?」
「お前! なんで逃げるんや!!」
な?(泣)
「あのー、スイマセンが、手振ってもらったんで、私も手振り返して、普通に車走らせただけですが・・・」
「こっち来いって手振ったんや!」
知らんがな(汗)
「はぁ・・・で、何の用事でした?」
オジサン、おもむろに紙と鉛筆を取り出し、何か書き始めた。
「俺はこういう者や!兄ちゃんも、ここに名前と住所書いてや!」
「何で?」
「俺の家にはしょっちゅう泥棒が入るんや。庭に置いてあった物も盗られたりする。俺は兄ちゃんを信用しとるが、兄ちゃんがどこの誰か俺は知らん。でも、兄ちゃんは俺の家を知っとるやないか!」
「はぁ、確かに。」
「兄ちゃんが名前と住所教えてくれたら、あんたが来ても俺は安心できる。だから名前と住所書いてくれ!」
「確かに!それは一理あ・・ねーよ!!(怒)」
「あのな、オッチャン。俺はあんたの事いい人やと思ってるよ(思ってないけど)。でもな、俺には嫁と5歳と2歳の娘がおる。女ばっかや。俺はそいつら守らなあかん。前に一回揉めたけど、今日は車で追われてこんな事になっとる。すまんが、オッチャンには住所とかよう言えやんわ」
紳士的に、説得してみた。無駄だろうな・とは思いながら。
案の定、「何で教えられんのや!お前が泥棒と違うんか!?」と、身も蓋もない答えが返ってきたので、覚悟を決めた。
「それは、俺が名前と住所言わんとココを通さんという意味か?それなら、俺は警察呼ぶしかないけど、いいか?」
「呼んだらええやないか!」
ハイ、1・1・0!
もはや、この男と話し合う気なんかありません。大人として、社会人として、まっとうな対応を期待するだけ無駄。
警察「110番です。どうされました?」
私「えーと、安濃川で釣りしてたんですけど」
警察「はい??それで?」
私「釣り終わって、家に帰るため車走らせてたら、追ってくる人がいまして、車停めたら名前と住所言えとか絡まれています」
警察「相手は凶器とか持ってます?」
私「凶器は持ってないと思いますが、パッシングしたり蛇行したりするので、付いてこられると危ないかもしれません。逃げても家まで付いてきそうです。」
警察「分かりました。とりあえず、あなたの身の安全を最優先して下さい。車に乗り込み、相手に近付かせないようにして下さい」
私「分かりました」
警察「相手の人相とか言ってもらえますか?」
私「●十代位の男性です。あ・・・、車動かし始めました。逃げるんかな?」
警察「今すぐ車種とナンバー言って下さい!」
私「■■■の×××。▲色で年式古いです。ナンバーは●●−●●。あ、停まりました。」
警察「すぐに何名かそちらへ向かわせます。何かあったら電話してください」
私「了解しました」
「警察が今から来ますんで、ここに居てください。言いたい事があれば、警察に言ってください。」
オジサンは、先ほどと打って変わっておとなしくなり、自分の車に乗り込んだ。
「折角の土曜日が・・・・」
気分は最悪。ふと携帯を見ると、見慣れないマークが画面に出ている。そのマークをクリックすると、「位置情報----・発信時刻--:--・緊急通報 警察」みたいな形で何か情報が送られたようだ。そう言えば、詳しい場所までは言わなかった気がするが、警察にGPS情報でも送られたのか?
待つこと20分。若い警察官が到着した。
警察「呼ばれた方はどちらですか」
「私です」
「では、少しお話を聞かせてください」
淡々と、自分の感情は伝えず、あった事だけを端的に伝えた。そして、名前と住所、職場と役職、名刺を渡し、くだらん事で警察を呼んだことをお詫びした。
「なるほど・・状況は大体わかりました。大変でしたね。」
次はオジサンの聴取の番。
なんか、身振り手振りを交えて熱弁を振っている。
「ワシは兄ちゃんの名前と住所聞きたいだけや!何でそれがあかんのや!」
「個人情報でもありますし、それは難しいですね。ただ、あちらの方からは、名前、住所、職場を私が代わりにお聞きしました。免許証も見ました。怪しい方ではないと、私がお約束します。」
「なんや!あんた聞いたんか!?ワ シ に も 教 え て く れ!」
こ い つ、 ア ホ か
なんか延々と話してるので、ダム湖を眺めていた。
斜面から足を滑らせたらしい鹿が転げ落ちてきて、必死に泳いでいた。
おばちゃんが寄ってきて、「あれ、何かしら」「鹿ですね」「へー、泳げるのね」「動物ですからね」「オホホホ」 写メをパチリ。「はっはっは」
オジサン、まだ何か説明している。物凄くどうでもよくなってきた。
警察「あのー、なんか自分とあなたは知り合いや言ってますけど」
私「知りません(即答)」
警察「あのー、あなたにもっと釣りに来てほしいだけなんやって言うてますけど」
私「はぁぁぁ!?」
思いっきり嫌そうに、オジサンに聞こえるように悪態をついてみた。釣りに来てほしい人間を、車で蛇行運転しながら追っかけまわすか??
オジサンの主張が聞こえてきた。
「ここは穏便に、お互い握手してお終いって事でどうや?な?な?」
警察「あのー、握手して終わりにしましょ言うてますけど」
小 学 校 の 学 級 会 か
そんな会話の最中、もう一台パトカーが到着し、2名の年配の警察が降りてきた。若い警察官は多分地元交番の巡査。しかし、この2名は県警本部の警邏隊っぽい。
こんな小競り合いで、警察が3名も来るか・・・?
疑問に感じていたところ、オジサンが俺の前に立ち、満面の笑みで手を差し出した。
「まぁ。これからも仲良くしようやないか(ニコッ☆)」
喧嘩する気はないので、仲良くしたいという人間と敵対する気はない。
自分でも分かるぐらい、超冷めた表情で、眉間にしわを寄せながら握手に応じ、その後、オジサンはそそくさと走り去った。
その後、遅れて到着した2名の警察官にもお詫びし、ようやくこの事件は幕引きとなった。
今にして思えば、若い警察官は頻繁に連絡を取っていたので、逮捕ありきで来たのかと思う。
あおり運転は、悪質な場合は暴行罪、車間保持違反(これは減点の対象)、煽られた方が怪我をしたら危険運転致傷罪に該当する。「名前と住所を書け!(さもなくば・・・)」という言動は、強要罪に該当する可能性がある。
「釣りしていてたら逮捕者が出た」ってのは流石にアホらしいので(どこぞの管理釣り場では殴り合いの流血事件があったらしいが)、とりあえず無事解決としておこう。
そして・・・・釣行記なのに、写真を一枚も載せてないという衝撃事実!
続編はちょっと待ってね。
5/4 10:30〜14:00
5/7 14:00〜15:30
5/21 10:30〜12:00
6/5 10:00〜13:30
現時点での釣行気はこれだけ。
長良川の車上荒らし事件もそうだけど、このようなトラブルに巻き込まれたり直面すると、正直物凄いテンションが下がるな。