「花火」
やってはいけないことをやってしまったのかもしれない
口先の理想論であの子を混乱させた
鼻先の希望を与えて
確実に訪れる8割の裏切りを
2割の負の期待にゆだねて
マネージメントだと誰かがいった
仕事じゃないと否定した
爆音が響く
混乱する群集
包囲する警官が叫ぶ
”みんなの花火です
立ち止まらず右に歩いて下さい!”
伝統河川の橋の上
観衆のことまで考えていられない
花火は精いっぱい宇宙を目指した
この星を離れようと
地上の泥沼に唾を吐き
漬かりながら過ぎ行く時間の長さに
見極めをつけて
生まれながらのエネルギーを性に感じ
爆音と共に花火は散った
重力に負けて散る美しい様は
僕をガクガクと震わせて
泣きそうなくらい僕を癒して
爆音と共に花火は散った
時の終わりが近づくほど
製作者の意図を匂わせて
全くの裏切りを秘めながら
爆音と共に花火は散った
倒れそうに抱いたあの子の背中は
無条件で僕を受け入れて
添えられた指先が
僕の何が他人と違うのか
そんな議論を否定した
爆音と共に花火は散った
僕を砂場の小粒の一つのように
見下ろしながら
僕の力の届かないところで
生まれ育ち散っていった
その生き様を見せつけながら
僕は抱いた
彼女を抱いた
理性とか理想とか
将来展望とか責任とか
ポリシーとかプライドとか
病とか誕生とか
思いつくものすべて
僕は自分の理由をすべて無視した
獣になった
スピーカはちぎれる雑音を
言葉と呼べるものは何も無く
存在だけがぶつかって
深い深い眠りについた
光に目覚めて体がぬくもりを感じると
彼女がキスしてくれた
彼女は暴発した花火をその腕の中でもみ消した
何て伝えればいいのかと
記者は事件を追いながら考えていた
やってはいけないことをやってしまったのかもしれない
一般論に照らしても
方程式に合わないその解を
ロジカルにMECE手法で解こうとした
その議論の果ては
先送りばかりを繰り返し
政治家の薄汚れたクチモトから告げられた
もう昔の話じゃないですかと
裁判官もかったるそうにこっくりうなずいた
夜空に描かれた今年最後の巨大な枝垂れ柳が
喝采に包まれながら消えてゆく
せつない余韻を残しながら
はかない瞬間を僕の胸に焼き付けながら
粒粒と消えてゆく
ただただ泣いた
涙も流さずに
ただただ泣いた
涙も流さずに
ただただ泣いた