「黄金のバランス」
2つの分かれ道
T字路まであと20Km
とぼとぼ歩いてる
ぺたぺたと音がした
東へ向かうか
西へ向かうか
それは
砂塵をまとったボロ草履だけが
知っている
その草履の権力を奪い返すほど
彼の両足にはもう
エネルギーが残っていなかった
なすがままに歩こうと思った
この土地は
2年前まで乾ききった一面の砂漠だった
彼らの足にエネルギーがみなぎってた時代
思いのままのルートで歩けた
たった2年の技術革新で
舗装された道が
二つの街に続いた
蜃気楼でゆらゆらゆれる
T字路まであと10Km
とぼとぼ歩いてる
ぺたぺたと音がした
長い間突き詰め続けた結果が
まるで何も考えなかった結果と同じだなんて
ちょっと笑ったあとで
照り返す太陽の灼熱に
立ち止まった無音の黄金
携帯電話を取り出して
火星経由のコール
当たり前のように深く話せる二人に
時の長さと理由のない感謝を覚えた
海王星経由にローミングして
過去の真実を伝えた
彼は自分の悔いを採った
時の経過が君を守ってくれた
君の住む街はここから西へ2ヶ月
風の谷をのぞむ東の街もここから2ヶ月
一定速度を保って日が沈み
そことなく吹き出した北風の中
重低音の耳鳴り
月の照らすその砂丘を眼下に
歩き出す
風と無関係に夜空に浮かぶ星
きっとここが原点だったんだと
そう思った
月の光は彼を
彼女も
あの子さえ
天使にも悪魔にも変えてしまう
昔からの言い伝えじゃ
どっちに転ぶかは体調次第
そんな曖昧さを北風が縮ませた
T字路にたどり着いた
背中の荷物をどっさりと置いて
今夜ここで宿をとる
古代から続く永遠のバランスを
心に刻んだまま
願わくばそのまま
二度と目を覚ましたくない
面接官はそのT字路を
"ごみ箱"だと後世に伝えた
僕らはバランスを失った