My Favorite Tunes : Part5

 

   

第 5 回 ( 17 / Feb / 2000 )

Le Roi David (ダビデ王)
Honegger, Arthur (オネゲル,アルチュール)

 

    今回は、オネゲルの出世作とも言える「ダビデ王」です。
    スイスの詩人ルネ・モラ (Rene Morax) が、設立したジョラ劇場の再開にあたり、
    旧約聖書に基づいた「ダビデ王」を上演しようと計画し、音楽の担当者を探していたが、
    何人かの作曲家に断られ、アンセルメ、ストラビンスキーの推薦により、
    当時無名のオネゲルに依頼がまわってきた。
    条件は厳しいものだったが、(作曲期間が数週間、オーケストラの人数は17人以内等)
    オネゲルは1921年2月25日に着手し、4月28日には完成したのである。
    初演時は、劇的詩篇 (Psaume dramatique) として、演奏されたが、
    のちに改訂し(モラも台本を改訂)現在は、交響的詩篇 (Psaume symphonique) として、
    世界各地で演奏されている。
    オネゲル自身は、モラの劇の舞台上演を伴う劇的詩篇「ダビデ王」こそが、
    完全な姿であると考えていたが、上演の困難さにより演奏されていないようである。
    是非一度聴いてみたいものです。

ボド / パリ国立歌劇場管弦楽団、エリザベート・ブラッスール合唱
ジャクリーヌ・ブルメイル(S) / デニス・シャーリー(A) / ジャック・ポッティエ(T) / アンリ・ドゥーブリエ(Na)
Concert Hall Society / SMS2450 (LP)

未だにこの演奏を超える録音は無いと思ってます

ボド / チェコpo、プラハpo合唱団、キューン児童合唱団
エダ・ピエール(S) / セン(A) / ラファリ(T) / メジュシュ(Na) / ガヤール(Na)
Supraphon / 60CO 1412-3 (11 0132-2)

後述してますが、以前の録音があまりにも素晴らしかったので・・・

シェイファー / フライブルグ・コレギウム・ムジクム、フランクフルト・カントレイ
コバーン(S) / カリッシュ(A) / ブロッフヴィッツ(T) / ライヒマン(Na) / ムューテル(Na)
Christophorus / CD 74523 (ドイツ語盤)

ドイツ語のため最初は違和感はありますが、
聴いてる内に気にならなくなってくる ・・・ そんな仕上がりです。

Piquemal / Orchestra de la Cité 、 Chœur Régional Vittoria d'Ile de France
Borst(S) / Todorovitch(Ms) / Rangon(T) / Fersen(Na) / Martin(Na)
NAXOS / 8.553649 (Original version)

ついに出ました、オリジナル盤です。演奏も充分満足出来るものです。
下記のサムエルの語りの部分も、しっかりと入ってます。CD1枚というのもグッドですね。
さすがNAXOSと言うべきか。


台   本 :


ルネ・モロ (フランス語) / 旧約聖書に基づく

初   演 :

1921年6月13日 ローザンヌ、ジョラ劇場
1924年3月14日 パリ、サル・ガヴォー (改訂版)

 

上記のボドには1965年 (オネゲル没後10年記念) に録音された素晴らしい演奏があります。
管弦楽編成は、改訂される前の原編成にもとずいて演奏されています。(何故改訂版で再録したんだろう)
日本では当時「コンサート・ホール・ソサエティ」という通販専門の会社があり、そこから発売されました。
 (蛇足ですが、ここから伝説のブーレーズ指揮「春の祭典」が発売されています)
CD化もされてるようですが (ACCO 20082-2 /1999.5)、多分入手は難しいでしょうね。
 もし、どこかで(中古店ででも)見つけられたら、即手に入れて私に連絡を (^^;
特に第12曲「呪文(まじない)」で巫女が、サムエルを冥界から呼び起こす場面は最高の聴きどころです。
巫女の声は、あるいは低く、あるいは高く、次第に狂乱しクライマックスを盛り上げます。
すべての音響が静止したとき、サムエルの声が奈落の底から響いてきます。
 "汝は何故に我を呼び起こし、我を煩わすや?" ( Pourquoi m'as-tu trouble pour me faire monter? )
という箇所、何度聴いても背筋がゾクッとします。
でも何故か、このサムエルの語りの部分 (L'Ombre de Samuel) が、他の盤では無いんです。
どうしてなんでしょう。どなたかご存じのかた、ぜひ教えて下さい。

全3部27曲からなり、語り手が旧約聖書「サムエル記」に書かれている
ダビデの事蹟を要約しながら語り進める

第一部 (サムエル記 上第16章~下第1章に基づく)

    1:序奏 2:羊飼いダビデの歌 3:詩篇「主は讃えられよ」 3b:ファンファーレ・ゴリアテの入場
    4:勝利の歌 5:行列 6:詩篇「恐れてはならない」 7:詩篇「鳩のように翼があれば」
    8:予言者の歌 9:詩篇「神よ、我を哀れみたまえ」 10:サウルの陣営
    11:詩篇「神はわが永久の光」 12:呪文(まじない) 13:ペリシテ人の行進 14:ギルボアの嘆き

    プロローグにはじまり
    ダビデの生い立ち、羊飼いの少年ダビデの歌う素朴な神への賛歌
    石の礫を投げ一撃のもとに倒したゴリアテとの戦い
    若い世継ぎダビデの下に集まる人々の動きを見たサウル王の嫉妬
    ダビデは荒野に逃れ予言者のもとへ行き、苦難にたえ成長していく
    ダビデを追って野営したサウルが、寝ているところをダビデに殺される変りに槍と壺を奪われる
    ダビデはペリシテに逃れるが、ペリシテとイスラエルに戦がおき、戦いに利なきを知ったサウルは
    みずから巫女のもとに行き、予言者サムエルの霊を呼び出し、サウルは自分の終焉を知る
    ペリシテは戦に勝つが、ダビデはサウルとその子ヨナタンの死を聞き、ギルボアの丘で号泣する

第二部 (サムエル記 下第2章~下第6章に基づく)

    15:祭りの歌 16:聖櫃の前の踊り

    イスラエルの王となったダビデの戴冠の祝賀の音楽
    イスラエルの娘たちは、失われた民族の栄光をダビデに見いだし、新しい王を讃えて歌う
    国中の民が集まり、神によみされたダビデ王の戴冠を祝い歌う。
    (「ダビデ王」全曲の中で一番壮大な部分)

第三部 (サムエル記 下第7章~第24章・列王記 第1章~第2章に基づく)

    17:賛美の歌 18:召使の歌 19:懺悔の詩篇「神よ哀れみたまえ」
    20:詩篇「私は罪の子として宿り」 21:ダビデの詩篇「私は山に向かって目をあげる」
    22:エフライムの歌 23:ヘブライ人の行進 24:ダビデの詩篇「やさしい愛の心で主を愛す」
    25:詩篇「この恐ろしさの中に」 26:ソロモンの戴冠式 27:ダビデ王の死

    王となったダビデの数々の事蹟が語られる
    権威の絶頂となったダビデ、だがその王の心にも邪念が忍び寄り
    沐浴するバテシバの美しさに心を惑わし、その夫ウリアから奪いさり王妃にくわえた
    神エホバの怒りがくだり、最愛の子アブサロムが父にそむき反乱を起こす
    叛徒たちはアブサロムの森に鎮圧されたが、ダビデは殺された我が子を傷んで泣く
    ダビデは廻りの反対を押しきり民の数をかぞえたことで、もう一度神の怒りに触れた
    人民は疫病に苦しむが、ダビデは壮麗な宮殿を建立しエホバの怒りを和らげる
    ダビデはやがて年老い、イスラエルの地には平和が満ち、その館は黄金で飾られる
    パテシバの子ソロモンに王位を譲ったダビデは、新王の戴冠式を見下ろし
    ソロモンへの歓喜の声を聞きながら、この世の全てを成し終えたことを知り
    静かに神殿に横たわり、この世とこの世の至高者とを賛美しつつ生涯を閉じる

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