気まぐれで自分勝手で我儘で、己の信じた道だけを進む。

良く言えば孤高、悪く言えば協調性が無い一匹狼。そんな野生の猫を彷彿させるようなあの男を

懐かせるのは本当に手間がかかった。人は俺とあいつは同じだと言うがそうじゃない。

ようやく恋人と呼べる位置まで登ってきたは良いが悲しいかな、実感はあまり感じられなかった。

今日だってそうだ。

今から家に向かうぞ、と携帯にメールを打ったが返事は一向に返ってくる気配がない。

ぶっちゃけた話、あいつから返信して来た回数なんて指で数えられるくらいなのだ。

だから俺はこうして、勝手にあいつの家まで出向く。

先手は打ったのだ。後で何か喚かれようがお前が悪いで片づけてやる。




ピンポーン。













ャイアニズムプレリュード













「あら、虎ちゃんいらっしゃい。辰巳なら部屋にいるわよ」

「お邪魔します。あ、コレみなさんでどーぞ」


チャイムを鳴らすと出迎えてくれたのはおばさんだった。否、お義母さんと呼ぶべきか。

近くの店で買ってきたケーキの箱を手渡し、足早に二階へ続く階段を上がっていく。


「そうそう、ちょうど良かったわ!虎ちゃん、悪いけど辰巳に伝えといてくれない?」


登る途中で掛けられた声に頷いてニッコリと笑う。

なんでもこれからヒルダという金髪の女と、男鹿の姉とともに出掛けるので誰もいなくなって

しまうのだそうだ。いってらっしゃい、寧ろ都合がいいです。

思わぬ2人きりの状況に上機嫌で二階へ上がって、目的の場所のドアノブに手をかければ

鍵はかかってないのか、すんなりと開く。

視界に入りこんでくるのは相も変わらず物が散乱した部屋で、思わずため息がでたが

探していた人物がベッドの上で昼寝中なのを見つけ、それが苦笑に変る。

可愛い。額を出して薄く口唇を開いて、無防備な男鹿が堪らなく可愛い。

ベル坊を小脇に抱えて並んで眠る姿を見ていると本当の親子か兄弟のように見えた。


「こーゆーの見てるとイタズラしたくなるよなぁ」


物音を立てないよう忍び足で歩み寄り、ベッドサイドに腰をかける。

家の中ではハーフパンツにTシャツが定番なのか、むき出しのすらりと伸びた両足が魅力的だ。

元々体毛が薄く、足に触れても産毛ほどの手触り。

きゅっと引き締まった足首に誘われるように口づけを落とした。

2,3度繰り返し口唇を寄せたが起きる気配はない、微塵も動かない男鹿に気を良くして俺はこのまま

悪戯を続行することに決めたのだった。

次はもっと大胆に吸いついて後を残す。チッと音を立てて吸ったそこには真紅の所有の証。

足首に続いて脹脛、膝、柔らかい太ももへと少しづつ上へ上へ。

健康的に焼けた肌に色づいていく赤の色香、欲を引き起こされて煽られていく。

気がづけば悪戯では済まないほど夢中になってしまっていて、戻れない熱が堪り始めていた。

此処まで来てしまえば、あとは毒を食らわば皿までというもの。

ゆっくりとハーフパンツを脱がせていくと単色のシンプルな下着が見えてくる。

勿体ないとは思ったが面倒くさくなったので一緒にそれも引き下ろして足から抜き、床に放り投げた。


「フミー・・・」


その時不機嫌そうなベル坊の声が上がり、俺は一度忙しなく行為に勤しんでいた手を止めた。

もぞもぞと手足を動かし始めるのに目を覚ましそうな事を察す。


「ベル坊、イイ子だからもちっと寝てな」

「みゅ・・・」


優しく頭を撫でてやればベル坊は安心したようにうとうとし始め、再度深い眠りの中に引き込まれていく。

規則正しい寝息を立てて眠った赤ん坊を見届けて、ほ、と息を吐きたした。

そろそろ引き際かも知れないと思ったが、目の前にある極上の据え膳にはどうしても逆らい難い。

長めのTシャツの裾からのぞく太ももの付け根など、一度目にしてしまったらもう。


(止めれるハズがねーよな)


普段なら足蹴りの一つでも飛んでくる男鹿の足が、眠っていて力の抜けた今ではすんなりと

持ち上げる事が出来る。敏感な足の付け根の内側に吸いついて痕を残せば「ん、」と僅かに身体が揺れた。

しつこくそこへ痕を散りばめながら、時折舌を這わして柔く食む。

ビクリ、と反応を返す男鹿は未だ眠ったままだ、起きてしまってもおかしくない程の行為だというのに

鋭い眼光を放つ特有の瞳は閉じられたきりで動かない。

― もしかしてすでに起きているのか?気づいているのか。

ならば。根を上げて目を開けるまで続けてやろう、我慢比べといこうじゃないか。

Tシャツの裾を胸の上まで捲り上げればほぼ全裸にちかい格好だ。

幾つめのキスマークになるか解らないそれを付けていく。鍛えられた腹筋、脇腹、肋骨の上にも。

そして胸、プツ、と主張する尖りに舌を這わし、ちゅっと吸いついた。





瞬間。





「そっからミルクは出ねぇっつってんだろこのクソガキっ!」


ゴツ、と加減して加減して加減されまくった拳骨が俺の頭の上に落とされる。


「・・・・・・・・・あぁ?ベル坊いつの間にそんな大きく成長を」

「いや男鹿、俺だから」

「東条?」

「そうそう」

「で・・・・・・お前俺の上でなにやってんだ?」


言い訳できないこの状況。寝込み襲っていましたと正直に話せば、さきほど食らった拳骨とは

比べ物にならないほどの威力を持った拳骨を頭の上ではなく右頬に喰らいました。

やはりさっきのあれはベル坊と勘違いされていた故の加減だったのだろう。


「おい、ベル坊隣の部屋に連れてけ。15Mは守れよ、俺が死ぬ」


そっぽを向いて早くしろと追い立てる男鹿の顔は少し赤い。恐らく俺が散々悪戯して煽った身体が

中途半端に熱を持って落ち着かないのだろう。

素直じゃないその強請り方に笑みを浮かべるとギロリとこちらを睨んできたので、帰れと怒鳴られる前に

ベル坊を連れて行った方が賢い選択だ。タオルケットに包んでやって隣の部屋に向かう。

そして空いているベッドに寝かせてやったと同時くらいに、男鹿の部屋から叫び声が聞こえてきた。

これは多分、自分の身体に散りばめられた異常なキスマークの数に驚いた声だ。





「東条っ!人の身体を変な病気みたいにしやがって笑ってんじゃねぇ!!」






俺の耐えきれず笑いだした声が隣の男鹿にも聞こえたのだろう。

病気だなんて、失礼な。

それは所有の証で愛の証。







解らないお前にはこの後たっぷり身をもって、しっかり理解して貰うべきだと思うが―・・・




覚悟はできているんだろうな?















END






















― おまけ 男鹿視点 ―









「ふっ・・・ァ、ッツ・・・」


身体の奥深くまで潜り込んだ東条の熱がアツイ。

イイところばかりを狙って突き上げてくる凶器のような太いそれが、いつしか己の身体になじんで。

肉を割って犯される行為に快楽だけが引き起こされていく。

胸元まで抱えあげられた両足、先ほど付けられた赤い痕が目について仕方がない。


「お前すげぇエロい感じになってるぞ」

「ンッ・・・く、ぅ・・・」


腰をぴたりと押しつけ、入り口を広げるようにぐちゃりと打ち込んだ楔をかきまわす東条の動きに

反り返った下肢の先端から白濁色の体液が溢れ出る。

もう果ててしまう。

果てて―・・・・



「ふぇうううぅ〜」



起きてしまったのかベル坊の愚図る声。これは泣くちょっと手前だ。

きっと俺を探しているのだろう。


「ちょ、おい退けろ東条っベル坊が泣く!」

「この状態で?!」

「この状態だから退けっつってんだよ、今電撃食らって腹上死なんてゴメンだぞ俺は!」

「せめてイッてから、とかダメか?」


何を悠長なことを、と怒鳴ってやろうかと息を吸い込んだ、その時、玄関で物音が聞こえてきた。

ガチャリと開く音がして、そのあとお袋の声。


「ただいまー、あれ?まだ辰巳たち部屋にいるみたい」

「ゲームでもしてんじゃない?まったく子供なんだから男って」


じゃあお茶菓子でももっていってあげましょうか、と下で女どもがわいわいし始める。

この流れはヤバイ、確実にヤバイ。




「とうじょっ・・・・ァッ!おい、やめろバ・・・ぁうっ・・・」

「まぁまぁ。すぐだから、大丈夫大丈夫」




何その根拠のなさと屈託のない笑顔。

それでも東条に染められてしまった身体は意志とは関係なく追い詰められていって。








やがて愚図る声が大きくなり始めたベル坊と二階へ上がってくるお袋の足音に、どうにでもなってしまえと

諦めて目の前の男の背中に腕を回すのだった。





















東条さん、男鹿さんの眠る姿に堪らず悪戯を始めるの話でした。