ボクラノスタン







ふと目が覚めたのは背中の男が寝返りをうったからだった。

先ほどまでぎゅうぎゅうと後ろから抱えこまれていたせいか、身体中が軋んで痛い。

上半身だけ起き上がらせて横目で男を見やれば心地よさそうに寝息を立てている。

男鹿は舌打ちたいのを我慢して、床に落ちていたシャツを適当に拾って羽織り、ベッドを降りた。

瞬間、トロリと太ももの間を伝った白い体液に身体が震える。

昨日夕方に家を訪れてから、今の今まで身体を貪られた結果だ。数えるのも億劫なぐらい交わって、

肚の中に最奥に、これでもかと思うくらいに男の精を注ぎ込まれたのだ。


「ち、くしょーめ・・・ッツ・・・」


荒々しい行為の所為か熱の孕んだ入り口に、少しだけ差し込んだ指を開けば堰切ったように

こぷりこぷりと溢れ出す。さすがに奥まで指を入れて掻き出す勇気はなかった。

幾度中には出すなといっても、聞き入れてもらえないのだ。

もちろんゴムなんて使いやしない。

ようやっと流れ出なくなったそれにほっとして、大量に使ったティッシュをゴミ箱に捨てる。

一体どれだけ好き勝手に身体を使われたのやら。

ベッドサイドに置かれた目覚ましはまだまだ起きるには早い時刻をさしていたが、目が冴えてしまった

男鹿は喉の渇きを覚え、ゆっくり腰に負担が掛からないよう部屋の真ん中にある机の方に歩いていく。

これでいいや、と出しっぱなしになっていたミネラルウォーターに口を付けた。

温くなったそれはとても不味くはあったが昨日無理矢理飲まされた男の体液より断然マシで。

水に濡れた口元を手の甲で拭う。

考えれば考えるほど、何故あんな男と一緒にいるのだろうと男鹿は思った。

ファーストコンタクトでの互いの印象はあまりよくなかったはずだが、どうしてか気に入られてしまったらしい。

あれよあれよと一緒に居る機会が増えて―・・・実際には男が押しかけてばかりだったのだが・・・

気がついた時にはそういう関係になっていた。

要は15年間喧嘩づくしで女を知らない男鹿に男はつけ込んだ訳だが、それに男鹿は気づいていない。

その為当たり前だが、何故一緒にいるかという疑問に答えなど出るはずがなかった。

男鹿の気持ちが身体に付いていっていないのだから。

身体だけが慣らされて、覚えさせられて。



(嫌、なわけじゃねーけど)








「辰巳?」


薄暗い部屋の中、ふいに名を呼ぶ声は掠れていて、情事の最中を思い出させる。

急にベッドからいなくなった男鹿を手探りで探しているのか、シーツがごそごそと動いていた。


「辰巳」

「名前で呼ぶな・・・・ここに居るだろーが」


むくりと起き上がる気配。

今度こそ男鹿はチッと舌打った。少し傍から離れたくらいで気づかれるなんて。

ひたりひたりと歩いて傍まで寄ってきた男―・・・東条は、そのまま男鹿の腕を引いて羽交い絞めた。

体格差で肩口に顔を埋めてくるのがくすぐったくて身を捩るが動けない、持っているペットボトルを

落としてしまいそうだ。腰に回された腕に、さらに身体が密着していく。

そのまま首筋に口唇を這わす男に腹が立って、男鹿は耳たぶに思いっきり噛み付いた。


「いってーな、もちっと優しく噛めねぇのか」

「誰がするかンなこと!どけよウゼェし水が飲めねぇだろ!」

「かわいくねーの」


さっきまではあんなに可愛いかったのにな?そう囁いてニヤリと厭らしく笑みを浮かべる東条。

シャツの裾から這い上がってくる大きな手の感触にゾクリと震える。

そのセクシャルな指の動きは始まりの意味。

何度も繰り返されてきた行為だ、男鹿にはそれが身に覚えがありすぎるほどあって。

何が男を煽り立てたのか―・・・?実は彼が今羽織っているシャツは東条のものだった。

己とは違う匂いに己の匂いが纏わりついていて、目の当たりにした瞬間から酷くそそられていた。

無意識に誘う恋人に、これからどうしてやろうかと東条は口角を吊り上げる。


「こいよ、次は足腰立たねーくらい揺さぶってやる」

「ふざけんなバカ、もう付き合ってられっか。このケダモノめ」

「褒めるなよ」

「褒めてねー!」


喚いたところで逃げられるはずもなく、がばりと身体を持ち上げられて、軽い荷物か何かのように

ベッドへと投げ落とされる。男との差を見せ付けられたようだった。

すぐさま覆いかぶさってきた東条に、男鹿はギロリと睨んでやる。

付き合わないぞ、と一方で、聞いてやるものかともう一方。

カーテンの隙間から覗くのは随分と明るくなってきた夜明け空。光が差し込むのは時間の問題だ。

刻一刻と学校に行かなきゃ行けない時間に近づいていく。




「絶対ヤらせねーぞ、昨日もさんざん中出ししやがっ・・・アッ・・?!」

「のワリには中に残ってねーな?処理したのか」





やっぱりまだ柔らけーな、などと厭らしい顔をして笑う東条の頬に。






「いっぺんコロス!!」







男鹿の怒りの鉄拳がきまったのは言うまでもない。








END









こういう情後の話とか好きです。でもって男鹿は認めてませんこの状況。
認めてないけど力で敵わないのでいっつも良いようにヤられます。
でも東条にはちゃんと気持ちがあるので男鹿も抵抗するけど嫌いにはなりません。