「古市君・・・・ちょっと相談事が」 「お断りします」 購買部でパンを買っていた古市は、その不気味なほど低く地を這うような友人の声色に瞬時に 頚を横に振った。こんな状態の友人―・・・男鹿にかかわると大体がロクでもない事に陥る。 これから昼食なのだ、お気に入りのパンを頬張る楽しみを失うのは出来る事だけ避けたい。 「すぐ済む。つか早くしねーとオレが死ぬぞ」 だがそんな古市のささやかな望みも男鹿の前では無きにしも非ず。 ガッチリと手首を掴まれると同時に何処へ向かうやら、人で賑わう購買部を引き摺られるように後にした。 元々目つきの悪い彼、否、今は女である故彼女と呼ぶべきか・・・どちらにせよ何があったのか 眉を険しく寄せて前方を睨み据えて歩く姿はどこか修羅のようにも見える。 頭の上に乗っかってしがみ付くベル坊もその雰囲気を察しているのか、大人しい。 行き交う生徒たちが壁に張り付いて男鹿の進路を避けるのも無理はなかった。 「何があったか知らんがお前、顔コワすぎ」 「うっせぇこちとら痛みに耐えてんだよ、いいからこっち!入れ」 「は?痛みに耐えてなに、SMごっこ?」 「だああっ!いーから入れっつってんだろ!アホ古市っ」 背を付き飛ばされて入ったそこは、校舎の中でも教師・生徒ともにほとんど利用されていないトイレ。 清掃されていないのか、天井や窓のあたりにはクモの巣が幾重にも張られていた。 何処へ連れて行かれる事かと古市は内心焦っていたが、辿りついた先が何の変哲もないトイレだと解り 身構えていた分拍子抜けたように肩の力が抜ける。 わざわざ何の為にこんな処へ。 後に続いて入ってきた男鹿に厭味の一言でも言ってやろうと振りかえった。 「・・・・・・・・・なにやってんのお前ええぇぇ!!」 辰巳ちゃんの憂鬱 − カレカノ番外2 − 男鹿が魔界の秘薬により、というかヒルダの戯れにより女性になったのはまだ最近の話だ。 見た目はさほど変わらない、変った処といえば180センチ近かった身長が10〜15センチばかり 縮んだくらいだろう。こうして男子用の学生服を着て今まで通り学校に通う事も可能である。 ―・・・と、思っているのは本人だけだと言う事を男鹿はまだ知らない。 やはりさらしを巻いても隠しきれない胸のあたりや線の細さは嫌でも目立つ。 加え、勝気な吊り目がさらに強調されて人目を惹く。 石矢魔高校ではアバレオーガ、子連れオーガに続き男鹿の美少女ぶりが噂の的になっているのだ。 そんな傍目は可憐な美少女と言っても過言ではない彼女であるが、彼女は所詮、男なのである。 元が男なのだから、同性に対して恥らいなどない。身体が女でも彼女は列記とした男なのである。 特に古市には家族に近い感情を持っているが故に、遠慮・羞恥などなんのその。 容赦など、あるわけがなかった。 「お前こそ何やってんだ?古市、鼻血垂れてんぞ」 「だ、おまっ、だって!」 古市が振り返って視界に飛び込んできたのは、ためらいもなくズボンを下ろした男鹿の姿であった。 白くしなやかな足がカッターシャツの裾からむき出しの状態、ズボンが踝のあたりで下着と一緒になって クシャリと纏まっている。 太ももの付け根ギリギリの処までカッターシャツに隠されている、見えそうで見えない際どいライン。 鼻元を押さえながらも、古市は思わず目がそこへ釘づけになるのを自重できなかった。 惑わされてしまってはいけない、眩むようなシチュエーション。 ― ああ友達ってなんだっけ。 「で、よ。相談ってゆーかどうすればいいか解んねーから見て欲しいんだけど・・・・」 ここなんだけど、と少しばかり背を丸めてシャツの裾を持ち上げる男鹿の行動に、古市は今度こそ ふらりと身体を後方に倒れさせたのだった。 (―・・・古市の根性無しめ・・・・やっぱり女の事は女に聞くべき、か?) 頭に血が上りすぎたのか、倒れたまま戻ってこない古市をそのままにして、男鹿はいつになくゆっくりと 廊下を歩いていた。当てにしていた友人は頼れない、では他はというと彼女に古市とならぶような 友人は皆無であった。 ふと最近知り合った邦枝 葵が脳裏を過ったが、やめておいた方がいいだろうと考え直す。 女の身体になっている事を隠しているわけではないし、バレた処で何も拙いことはないが 元々男であった己が今は女とはいえ、身体の事で女に聞くと言う事はどこかセクハラ気味ていて。 (それにしても、痛ぇ・・・・・気持ち悪ぃ・・・・) 今朝起きた時、下腹部にシクリとした痛みを感じたのがそもそもの発端だった。 その妙な違和感は時折のもので、平気だと思って学校へ来た矢先、痛みはどんどんと増して 今では重い鈍痛が仕切りなしに下腹部で渦巻いている。 男鹿が15年生きてきた中で初めて味わう何とも言えない苦しみであった。 「ベ、ベル坊すまねぇ・・・オレぁもう駄目だ・・・・」 「あうっ!」 よろける身体を叱咤してなんとか立ってはいるが、気を抜けば膝からガクリと落ちてしまいそうで。 弱気な男鹿を心配してかベル坊も心なしか涙ぐんでいる。 泣かれるのは拙いと、慌ててベル坊の頭を撫でてやったが、先に限界が来たのは男鹿の方であった。 目の前が廻って、ふらりと前のめりに傾いていく身体を止める事が出来ない。 (あ、やべ・・・・ぶつか、る) だが衝撃を少しでも和らげようと出した手は、地面に着く事はなかった。 倒れこむ寸前であった細い男鹿の身体を、後ろから羽交い絞めるようにして止めた腕によって。 「男鹿、大丈夫か?!」 「・・・・・・あー・・・お陰さんで」 慌てる男の声に、心配ないと羽交い絞める腕をポンポンと叩いてほっと息を吐く。 それで腕が緩む事はなかったが、体制を整えた男鹿は少しだけ表情を和らげて、己を寸前で助けて くれた男―・・・東条に礼を言った。 「真っ青な顔色してるぞお前。保健室向かうからつかまっとけ」 己と対等に殴りあえるほどの人間が倒れこむなど尋常ではないと思ったのか、東条は 返事も待たずに男鹿の身体を軽々と抱き上げ、告げた通り保健室へと向かう。 保険医さえいれば何とかなるだろうと考えての行動であったが、辿りついた保健室には誰もいなかった。 ドアのガラスには“本日保険医不在”の張り紙。 タイミングの悪い保険医を呪いながら、取りあえず辛そうに顔を顰める男鹿をベッドに横たわらせる。 額に当てられた大きな東条の手が心地いいのか、深い呼吸を繰り返すと幾分落ち着き始めたようだ。 「気分はどうだ、熱とか測っとくか?」 「いい・・・・原因は解ってっから。オレぁもう死ぬんだきっと」 「おいおい、随分弱気じゃねーか。らしくねぇ」 「腹の痛みが普通じゃねーし・・・・・それより・・・・が・・・・」 「あぁ?」 横になったまま男鹿は億劫そうにベルトを外して、するりするりとズボンと下着を下ろしていく。 「お、が?」 「ちょっと前から血が止まらねーんだ。古市に見せたらアイツぶっ倒れるし」 アイツ血とか苦手じゃなかったハズなんだけど、と見当違いな科白を吐く男鹿に、東条は軽い眩暈を 起こしそうになっていた。見れば確かに内股に幾つもの赤い筋が出来ている。 血の流れた跡だ。 そう、腹の痛みもこの止まらない血も、つまりはアレだ、月経が来てしまったからだ。 「男鹿、お前保健体育受けたか?」 「・・・・・んん?」 「首傾げんな可愛いから。ほらアレだろ・・・・・女の、月一回くるやつ」 「・・・・・・・おお、アレか・・・・・ってふざけんな!!オレは女じゃねーぞ!!」 「女だろ。取りあえず先に足拭いてやるから待ってろ」 手際よく濡らしたタオルを用意して、乾いてしまった血の跡を丁寧に拭っていく。 しかし拭っても止血をしない事にはこのままズボンをはいたところで同じ事だろう。 タオルを持っていくる際に戸棚から見つけたそれを、東条は気まずそうに男鹿に手渡した。 知識はなかったが並べてあった棚に“生理用品”と書かれてあったので恐らく用途は間違いないはず。 「それしか無かったんだ、文句言うなよ。オレはベル坊と一緒に外に出てる」 「・・・・・文句もなにも使い方が解らないんですけど」 「オレも知らねーって。説明書読んで使え」 「嫌だ」 「じゃあそのまま帰るつもりか?」 「それも嫌だ」 「なら使え!」 「イヤです!」 「あのなぁ・・・・」 「なんか怖いから嫌だ!よし、お前がやれ!持ってきたのはお前だからな」 「は?」 何かとんでもない事を聞いたような気がして、東条は暫く目の前に突き出された四角い箱を 呆けるように見つめていた。ん、と無言で受け取れと訴える男鹿はどうやら本気のようで。 東条は本日二度目の眩暈を覚えることとなった。 恐る恐る受け取ったそれの使い方を読んで、更に自分の方が倒れそうになるのをなんとか堪えて 隣のベッドに座って此方を伺っているベル坊に。 「ごめんなベル坊ちょっとだけカーテン、閉めさせてな」 と、囁いた。 空気の読める賢い赤ん坊は本当に手間がかからず助かる。「ダ」と頷いてピースサインを寄こす当たり、 もしかするとこれから何が行われるか理解しているのかも知れない。 注) マニアックな表現なのでこっから反転。読みたい方のみどうぞ、苦情はご勘弁を。 箱から取り出したそれは大きさにすればさほどのものではないが、2人にとっては初めて目にする ものであり、説明書を読んだ東条は解っているが、男鹿に至ってはどう使うものなのかも解っていない。 不思議そうにそれを眺める男鹿に、東条は再度使用の確認を取った。 「本当に自分でしなくていいんだな?お前絶対暴れるなよ?怒るなよ」 「しつけーよ」 さっさとしろと言わんばかりに睨みつけてくる態度は、先ほどこれを使うのが怖いと言った人間の ものとは思えない程のふてぶてしいものだ。 こうなると東条にも悪戯心が沸くというもの。泣いても知らないからな、と聞こえないよう囁いて。 綺麗に拭った両足をパカリと左右に割って、閉じれないよう身体を滑り込ませる。 そして血の流れ出るその場所を指で開いて用意した生理用品の先端を中心へ宛がった。 「ぎゃああぁー?!どこ、何やってお前!変態っ」 「暴れんなっつたろ」 「やめろバカっ・・・・入れたらぶっ殺す!おい、やっ・・・・」 僅かに力を入れて押し込むと、それはすんなりと身体の中へと潜っていく。 小さく細いそれは圧迫こそないが、身体の中にあるというだけで妙な違和感を男鹿に与えた。 「痛くないだろ?それとも慣らしてから入れて欲しかったのか?」 「覚えてろよテメー・・・・」 「なんだ抜いて欲しいのか、折角入れてやったのになぁ」 クン、と引き出すための糸を引っ張って、少しだけ抜き出す振りをすれば、敏感になっている内側が 擦れる感覚に身体がヒクリと揺れる。 ア、と掠れた小さな声。 可愛らしい男鹿の反応とチラリと見える真っ赤に染まったそれが相まって、東条を煽ってやまない。 「・・・・・・お前のこれが終わったらよぉ、いっぱいセックスしような」 「どっからそんな思考に?!絶対お断りだ!!」 「で、子供作ろうな。これが来たってことは、子供が産めるってことだ」 「オレはっ・・・・男だって言ってんだろー!!」 いやだから女だろ、との東条の冷静な受け答え。 今日無事に帰れたら、今度こそヒルダに早く元に戻れる薬を持ってきて貰おうと心に誓う男鹿であった。 END |
番外編その2。マニアックもいいとこです、でもやっぱり一回は書いておかなきゃ生理ネタ!
どうやって東条さんを変態にしないよう(笑)にするかが大変でした。もう男性向けのノリです。本当はこのまま本番までやってしまおうかと思ったんですが
ウチの小説を楽しんでくださってる方にヒカれちゃいそうなのでやめました(笑)
ちょっとだけ際どい部分は反転させてありますので、ムリだと思った方は読まないでくださいね?!