ギシリギシリと木の軋む音がリズミカルに、時に狂って耳を犯す。 パイプやと歪んでまうな、と出馬はクツリと笑いながら汗でズレ落ちてくる眼鏡を床に散らばった衣服の上に 無造作に放り投げた。若干視界がぼやけるがそれは些細なことで、行為を続けるになんの支障もない。 いつ誰が帰ってくるかも解らない家の一室で行われる、精の匂いに満ちたこの行為は背徳的だ。 目先の快楽のみを追う本能、征服したいと駆り立たされる衝動。 己の下に組み敷く相手はまさにそれを煽るに足りる者だ。足し算の如く、はたまた掛け算のように。 ふっと息を吐いて出馬は前髪を掻き上げ、前を見やった。 彼のすぐ向かいには瞬きも忘れて、何処か夢心地で己の真下を見つめ続ける三木がいる。 「噛みつかれんように気ぃつけなや、牙もっとるさかいなぁこん子猫は」 出馬に腰をホールドされて容赦なく後ろから突き上げられる度響く粘膜同士が擦れ合う水音。 それに合わせて聞こえるもう一つの卑猥な水音は、“子猫”と呼ばれた彼の者が身を屈めて三木の下肢に しゃぶりつくそこから聞こえた。 手負いの獣の如く肩で息をしながら四つん這いになる想い人の痴態、後ろから穿たれる衝撃に 耐えながらも、その想い人に器用にも猛った下肢を口腔内に咥え込まれていては。 もう堪らなかった。 舌で舐めて、抜いて、吸い上げる娼婦のような様に、三木の欲望もすでに限界に達しようとしていた。 「そろそろええんとちゃう?この子のナカ、凄いことになってんでー。君と僕のでグッチャグチャやぁ」 見計らったように出馬が動きを止める。 「・・・出馬さん」 「おいで久也、一緒に壊してまお」 「出馬さん、本当に・・・」 「ほら早う寝そべってこの子の下に潜り込みー。あとはこのヤラシぃ穴に突っ込むだけや」 な?楽しみやろ、男鹿くん。 背部から覆いかぶさるようにして、男鹿の耳元に口唇を寄せて囁く。 それすら快楽を生むのだろう、逃げを打つ腰。逃すまいとそれを引き寄せ、仕置きのように大きくグラインド。 部屋に響く肉を穿つ破裂音。摩擦音。ベッドの悲鳴。 「逃げなやぁ」 「は、ァッ・・・・ぐぅ・・・・ゥッ・・!」 勢いよく奥深くに埋没した熱い猛りが入り口まで引き抜かれ、その後すぐ圧倒的な速さと強さで肉道を かき分けて深部を叩く感覚に男鹿は堪らず呻いた。ひくりと背をのけ反らせて爆ぜる。 「ッツ・・・あアァ!!」 そのまま肉の締まる心地よい圧迫を味わいながら出馬は、項へ肩甲骨へ背筋へと口付けていった。 「―・・・おいで、久也。一緒に男鹿くん、壊してまお」 Hatefull days 「なんや久也、今にも死にそうな顔しとんで?」 その日の放課後、職員室に向かっていた出馬は少し俯き加減で歩いてくる三木と廊下ですれ違った。 これは冗談でも大げさでもなんでもない、出馬が見たままの彼を表わした言葉だった。 胡乱気に視線の定まらない目を向けられて、続けて「人でも殺してきたんか」、と関西人特有の包み 隠さないジョークを言わずに引っ込めた事に彼は心中胸をなで下ろす。 何があったかまで読みとる事は出来なかったが、今の三木の状態からしてその科白は洒落に ならないような気がしたからだ。それほどまでに彼からは負の気が感じられる。 まるで初めて会った時のようだ、と、出馬は黙りこんで言葉を発さない三木を暫く見つめていた。 「―・・・・・欲しいものがあったんです」 殆どの生徒が帰路についた校舎内は静かで、グラウンドから部活に勤しむ掛け声が聞こえる程度。 出馬は一瞬、それが自分に掛けられた言葉だと理解する事が出来なかった。 それほどまでに三木の言葉は小さく、口の中でぼそぼそと呟くようなものだったのだ。 恐らく他人に向けて語りかけているものではないのだろう。まるで自白。 けれど誰かに聞いてもらいたくて改めて口を開いた三木の言葉に、出馬は耳を傾ける。 「でも無理矢理手に入れたいとかそんなおこがましい思いはなかったんだ。最初は・・・・ 憧れて、見て欲しくて、隣にいたくて、叶うならそれだけで・・・・・なのに僕は」 どこか繋がりのない言葉。 「僕は愚かだ」 そこまで言うと三木は両手で顔を塞いで、小さな嗚咽を漏らし始めた。 次いで頬を伝う滴は隠しようもない。 「・・・・男鹿くんとなんかあったん?仲直りしたんとちゃうの」 まだ記憶に新しい、あの文化祭のバレーボール勝負で長年の蟠りや誤解は解けたのではないかと。 極力三木を刺激しないよう気をつけながら、出馬は推測ではあったが男鹿の話を振った。 「男鹿と何かあった」なんて三木は喋っていない。だからそうかも知れないし、もしかすると男鹿の 関係ないまったく別の話をしているのかも知れない。 だが出馬には確信があった。三木が“無理矢理手に入れてでも欲しいもの”なんてたった一つだ。 直接聞いた訳ではなく、これは憶測だが彼と出会ってから知ったそれは今でも変っていないはず。 彼の科白から考えるに否定した願望をそのまま実行してしまって思い悩んでいる、と言った処か。 否、思い悩んでいるどころではないようだ。放っておくと自殺でもし兼ねない。 「男鹿くん傷つけてもたとか?何があったか知らんけどあの子はそないに弱ないと思うでー?」 「・・・・あいつは傷なんてついてませんよ、寧ろ僕のほうが深い」 「せやったら何があったん?聞くで、僕でよかったら話てみ」 「僕は男鹿を犯しました」 今度は自分に向けて言われた言葉なのだと出馬には解った。けれど嫌にはっきりと聞こえた科白の 意味を理解するのに彼は時間を要した。 誰が何をしたって?誰をどうしたって?一体今、何を言われた? 真面目で奥手な三木の言葉だとは到底思えない言葉が出馬の頭の中でリフレインする。 ―― ボクハオガヲオカシマシタ。 「衝動ではありません、でも手酷く抱いたと思います。なのに・・・・あいつは」 何をされてもただ笑うんですよ、と顔を歪めて頭を振る。 手を縛りあげて何度も男鹿を犯した後、三木には恐怖だけが残った。やっと戻れると思った昔の関係。 これから友人としてのポジションを作り上げていけば良いと思っていたのに。 気絶するようにして眠った彼は、起きてなんと己に言葉をかけるのか。怒りの言葉か罵りか。 なのに。 精液に塗れてぐちゃぐちゃのシーツの上、意識を取り戻した男鹿の目には何も映っていなかった。 うろたえる三木には一目もくれず、ベッドサイドに畳んで置いてあった洗濯したての学生服を着て 何事もなかったかのように部屋を出ていったのだ。 情後を色濃く残すベッドの上だけが男鹿を好きなように扱った現実を思い出させる。 ただそれだけ。あとは何も残らない。 「僕が何をしても男鹿の中に僕はいないんだ・・・・僕は、みじめだ」 「久也」 「でも僕を救えるのはアイツしかっ、男鹿しかいなッ・・・・!」 「ちょお待ち」 「・・・・・・・え?」 大方沈みかけた太陽の西日が校舎を照らすその光の加減で、出馬の表情がよく解らない。 反射の所為か眼鏡の奥に隠れた眼が何を言わんとしているのか読みとれず、三木は思わず身構えた。 出馬の考える事はいつも理解できない事が多いのだ。 決して間違った事をいう人ではない、自分たちに不利になるような事をする人でもない。 けれど。 「・・・なーんや、ほな話は簡単やん。要は嫌でも男鹿くんが意識してまうよーにしたらええねんろ? や、ちょおちゃうな・・・僕らしか見られへんよぅにしてまうほーが都合ええなぁ」 「い、出馬さ・・・ん?僕“ら”って・・・一体何を言って・・・」 「あー、いや、実は僕も男鹿くんに興味持ってもーてなぁ。アレが欲しなってもたんや」 ごめんな、と眼鏡の淵を中指で持ち上げながら不敵に笑う出馬に、三木は絶句するしかなかった。 「しかし意外やわぁ〜、久也が男鹿くん犯しました言うた時は度肝抜かれたで?僕も呼んで欲しかったわぁ」 酷く楽しそうに話す出馬が、ふいに職員室に向かおうとしていた身の踵を返して廊下を歩き始めた。 そして三木が何処へ行くのかと問いかけるまでもなく、口元に笑みを浮かべたまま告げる。 「男鹿くん・・・・もう家帰ってもうたかな?」 ************** 「ッ・・・く、ぅ゛ああァッ!!あ・・・がッ・・・ア、ああぁッ・・・!」 身をヒクつかせながら悲鳴を上げる男鹿の身体は相当の痛みを伴っているのだろう。 そもそも受け入れる場所でもない処に無理矢理捻じ込もうとしているのだ、2人分の楔を。 頭を振って激痛を逃そうとするが襲うそれから逃れるすべはない。 肉の裂く音は悲鳴にかき消されたが、男鹿の太ももを伝ってシーツに色を付けるその赤が全てを 物語っている。出馬の熱が根元まで潜り込むその狭く柔らかな場所が、三木によって更に抉じ開けられ 傷を負いながら拡張されていく惨状を。 「ッ・・・全部入ってもた?」 「はッ・・・あと、少し・・・です・・・」 どれだけ慎重に身を進めようと傷つくのは同じだ。 三木は己に力任せにしがみ付いてくる男鹿の米神に口付けながら一気に腰を突き入れた。 身を襲う痛みに堪らず、男鹿は目の前に見えた肩口に噛み付く。その痛みさえ三木にとって愉悦となる。 騎乗位の状態から身を屈ませている為抱きあう形で痛みを、一方は締め付けられる痛みと快楽を味わう 2人に出馬は1人だけ除けものにされたような疎外感を感じ、思わず苦笑を浮かべた。 が、ならば己の存在を思い出させるまでだ、とズルリと膨張しきった砲身を引くと容赦の欠片も無く 最奥まで叩き込んだ。 長い悲鳴が上がる。 そのまま動き出した出馬の下肢に擦り上げられる、今まで味わったことのない感覚とぎゅうぎゅう締め付け てくる男鹿の胎のその狭さに翻弄させられながら、三木も促されるように律動し始めていく。 あとは何もかもがぐちゃぐちゃで前後不覚になるまで腰を振って身を揺さぶって吐きだしてまた穿って。 白も赤も何色かも解らなくなるまで交わって。 何も解らなくなるこの時の中で、唯一彼らが理解し得たもの。 それは男鹿はただの一度も、その瞳からは何も零さなかった、という事実だけ。 『あぁなんて憎たらしい。オレは勝手に望んでもいないモノを押しつけられるのは死ぬほど嫌いなんだ』 お前らはなんて滑稽で、なんて無様で憎たらしい。 END |
無駄にレイニ―クラウンの続きとか。その後の三木と男鹿になんか出馬さんココらへんで出しとかないと出さないだろなー
とか思って3Pにしちゃった勢いって怖い。
男鹿、なんにも喋ってません。喘いでただけです。
だって男鹿にはなんにも彼らに対して言う事なんてないもの。男鹿は彼らになんて興味がないもの。
Hatefull day は「憎むべき日々」って意味なんですけど男鹿の気持ちまんまですね。
馬鹿な奴らがこぞって馬鹿な行為に励んでて、そのど真ん中にオレがいます。って感じです(笑)
あ、今回の描写は少しキツかったと思います、3Pとかゴメンね。
読んだあとのあとがきに何ですが、ホント調子乗りすぎました。サイトに裏作ってないんでスンマセン。
ベル坊は?とかもう同人の世界じゃなんでもアリでいいじゃない。