だって僕は最初から君の事が好きだったんだ。 レイニークラウン 『―・・・ぃ、コラいい加減に―・・・』 『止めねー・・・・煽るてめぇが悪ィ』 『どこでも発情すんな、このエロがっ―・・・・ぅ、ッツ』 顰めた声と、カタンと響いた物音。使われていない教室からそれは聞こえてきた。 何故、何の用があってそんな処へ歩いて行ったのか、もう自分でも覚えていない。 昼休憩もすでに終わって5時限目の真っ最中に、僕は“偶然”この場所に訪れた。 今のは間違いなく男鹿の声―・・・もう一人は誰だ?低く掠れて解らないが、男鹿が誰かとこの教室にいる。 こんな時間にこんな場所で誰かと2人きり。 諌めるような呆れたような科白は最後まで言えずに遮断されたのは何故か。 脳の片隅では「止めておけ」と理性が己に呼び掛けるのに、身体は全くの別人に支配されたかのように 教室へと向かって歩く。 そっと扉に耳を当てて中を伺うとタイミングを測ったかのように、押し殺した曇った悲鳴が小さく聞こえた。 ドクリ。 否、そんなまさか。 手の震えを抑え込んで、物音を立てないようにドアを数センチ開く。 『・・・・ッツ・・・・ァ・・・・ぅ、くっ』 見えたのは金色の髪をした男の後ろ姿。その男の影から辛うじて男鹿の頭が少しだけ見えた。 埃にまみれた薄汚い机の上に腹ばいにさせられているのか、男鹿の身体が背後から穿たれる度 机がギシリギシリと今にも壊れそうな音を立てていた。 瞬間、ざわ、と音を立てて自分の中から湧き上がる。 ――――・・・・吐、く! なのに反して急降下していく熱、嫌になるほど冷静。 湧き出たのは吐きそうなまでの怒り。そう、男鹿に対してどこまでも理不尽な怒りが己を支配して。 あの二人の行為は合意の上なのだ――、なんてそんな事、僕にはどうでもいい。 君は誰かのモノになるような人間じゃないだろう? 否、そうじゃない。 僕こそがそこにいるべきじゃ、ないのか。 「――・・・・で、お前は人様の濡れ場覗き見した揚句、自分勝手な怒りに任せて オレをこんな目に合わせてくれたワケだ、この勘違い野郎」 「酷い言い草だな、男鹿」 「つか服返せ、パンツ返せ寒ぃんだよ変態」 「全部洗濯中。どうもあの男の匂いがして気に入らなかったんだ」 こんな状況でも服の方が気になるだなんて、さすがとしか言えない。クスリと笑いが込みあがる。 彼は今、両手を括りつけられている。僕の、ベッドの、両端に。 余裕かまして何でもないような口調。その強がりを暴いてやりたい、弱さを曝け出させてやりたい。 正直男鹿を捉えるのは簡単な事だった。 彼は基本、自分の内側に入れた人間には極端に警戒心が甘くなる。 僕もその一人なのだと確信して事に及んだのだが、改めて実感するとこの上なく嬉しい。 試したくなる、どこまで許されているのか。 あの悪夢のような時間のあと、帰路に着いた男鹿を待ち伏せて、僕の渾身の技を当てて気を失わせたのは ほんの数十分前の事。本気モードの彼とは違い、あたかも絵に描いたようなワンシーンのように、綺麗に 技は男鹿の鳩尾に入った。背におぶられていた赤ん坊が喚いていたが、こちらの言葉を理解出来るのか 嫌に“聞き訳の良い”赤ん坊だ。男鹿の身の安否は僕が握っている事を仄めかせば、大人しく 彼の背中にしがみ付いて震えていた。 僕の部屋に連れてきたのはそこが一番場所的に近かったからだ。 男鹿と赤ん坊、同時に担いでそう遠くまで行ける訳がなかったし、都合よく今日は親も帰りが遅い。 彼の瞳に僕だけを映すための時間なら、この狭い空間でも十分、作れる。 たとえそれが憎悪でも。 「ベル坊はどうした」 「ベル坊・・・?ああ、あの赤ん坊なら隣の部屋にいるから安心していいよ」 確か何メートルか知らないけど、少しくらいなら離れる事が出来るんだったっけ。笑ってそう告げてやると、 鋭い視線をこちらに向けながらチッと舌を打つ。 昔は怖く思えた男鹿の眼差しも、今では可愛らしくさえ思える。 「それよりも・・・男鹿。君は、あの男が好きなのか?」 「―・・あぁ?」 「此処に受け入れてたあの金髪の男」 「ンなことお前に―・・・ッツ!!?」 「関係ない、って?」 関係ないなんて。 そんなこと僕が許さない。 弓なりに撓る背中、反射的に起き上がろうとした身は括りつけられた両手の所為ですぐにベッドへと沈む。 部屋に着いたなり全裸にさせた男鹿の鳩尾には僕が放った技の痕。 無駄のないしなやかな筋肉がついた身体に、それは目を惹くほど赤く残っていて。 行為の始まりを意味する口づけより先に。痛ましいそこに舌を這わす。 残した痕にどうしようもない征服欲を掻き立てられながらも、その痕よりさらに赤く熟れた汚らわしい其処に 乾いた人差し指と中指を揃え、少し乱暴に潜り込ませた。 思った通り、先の行為で放ったらしき男の劣情がまだ残っていて、くちゃりと中をかき混ぜれば 逆流したそれがトロ、と肉道を伝って外へと溢れだす。 随分と奥の方で精を放たれたのか、付け根まで無遠慮に突き入れた指に絡まるそれが腹ただしい。 執拗なマーキングにも似たそれにあの大柄な男の執着が知れる。 早く掻きだして綺麗にしなくては。僕の君にするために。ずっと追い求めた君を手に入れるために。 言葉さえ紡がない行為、部屋に聞こえる息づかい、早まる鼓動。これほどまで興奮した経験なんてない。 ズボンを押し上げる下半身の痛みに気がつかない程、男鹿の快楽に歪むその姿に夢中になっていた。 視線を合わせれば、こちらを睨みつける眼差しにぶつかる。 一向に変らないその強さにゾクリと湧き上がる愉悦。 声を出さまいと噛んだ唇にじわりと鮮やかな赤が滲んで。グイと内側で指を広げれば、肉道の締め付ける 圧が増す。はくはくと呼吸をする入り口は彼の頑なな態度に反してとても挑発的だった。 「・・・男鹿、お、がっ・・・僕を、見ろ・・・君は僕こそ受け入れるべきだ。あんな男じゃない、僕こそが」 君の隣にあるべきだ、と。 続けようとした科白は音を発さず闇に消える。 口角をゆるりと上げて笑う男鹿の“それ”に、僕の一切の言動が止まった気がした。 ―― クツリ。 「―・・・男鹿?」 「・・・・・なんだよ、ヤれよ。ヤりてぇんだろ?オレと。ここにツッコみてーんだろーが、指じゃなくてよ。 生憎両手塞がってっから、穴広げて誘ってやるこたぁできねーけどな?」 ―― クツリ、クツリと嘲笑う。 「男鹿、僕は」 「テメェが何喚いてんのか全く興味ねーけど・・・・テメェなんて高が知れてるって事」 思い知るがいい。 どうすれば。どうしたら。どうしても。 遠く手を伸ばしても君の腕を掴めない、まだ僕は隣は愚かすぐ後ろに立つことさえ許されてはいないのか。 絶望に身を任せた行為など無意味なものだ。何度男鹿の胎の中に精を注ぎ込んでもイッた気がしなかった。 熱い内側を抉って擦り上げて、僅かに聞こえてくる悲鳴を耳にしても満たされる思いなど味わえなかった。 しんと静まった部屋に、となりの部屋から愚図る赤ん坊の声が微かに届いていがどうでもいい。 暫くもすると男鹿も目を覚ますだろう。 ふ、と横に目線をやって、彼の乱れた髪の毛に手櫛を入れる。今初めて柔らかい手触りなのだと知った。 こんな意味を成さない行為などより、もっと知るべき事は他にたくさんあったはず。 何も伝えず、何も知らずに君の隣に立つのは僕だ、なんて。 なんて浅はか。 手加減を一切しなかった行為の果てに死んだように眠る彼の、薄く開いた口唇に 起こして仕舞わぬようそっと己の口唇を押し当てる。 ただ好きだった思いは今、音を立ててグチャグチャになって君に伝える前に形を変えてしまった。 本当に、ただ君に認めてもらいたくて好きになってもらいたかっただけなのに。 いつ変ってしまったのだろう?あの男との情交を見てしまってからか、あるいはもうとっくに―・・・・。 今更後悔なんて。 そんなもの出来るはずもなかったが――・・・・この頬に流れる止まらない感情は、きっと忘れられない。 嗚呼。 目を覚ました君は一体、僕にどんな眼差しを向けるのだろう――・・・・。 END |
難産でした、三木×男鹿。つーか三木→→→超えられない壁→男鹿。
三木のイメージってこんなカンジです、中学からずっと男鹿が好きで、その積年の想いが歪みまくって病んでしまったカンジ。
どうにか傍にいたいと思うんだけど報われないから余計に煮えちゃう。
そんな三木と綺麗さっぱり三木を無視する男鹿の果てにあるものはこんな展開かなと。
これからも当サイトにおいて三木が報われることはありません(笑)酷い管理人だ・・・・(笑)