「男鹿、ちゅーしていいか」 「嫌ですてかちゅーとか言うなキモイから」 「男鹿、えっちしたい」 「嫌です1人でヤればそれか古市貸してやるよ」 「いやいやオレだって嫌ですけど男鹿さんんん!?」 「オレも男鹿以外はゴメンだ」 聖石矢魔学園に来て同じ1クラスにまとめられた元石矢魔高校の問題児達――・・・ 否、オレは普通なんだけどね? ただ巻き添えくらっただけの超普通の男子高校生だからね。 未だに信じられない、というか認めたくないという方が正しい表現か。 本当は今頃可愛い女の子と仲良くなったりなんかして高校生活を満喫しているはず だったのに。どれもこれもすべて男鹿のせいだって解ってるんだけど、 解ってるだけにオレはため息ひとつつくだけで赦してしまう。 だって、男鹿だからね。 そうやってずっと、ずーっと昔から一緒にいたんだ。 そしてこれからも、変らないんだって思ってた。男鹿の隣にはオレがいて、男鹿の 隣にはオレがいるんだって。 なのに。 「帰りにコロッケ奢ってやるから」 「・・・・3つ?」 「何個でも。オレん家来るなら食わせてやんよ」 「行く」 「お前の貞操はコロッケ3個で買収出来る訳?!」 この2人が、男鹿と東条さんが一緒にいるようになったのはあの大喧嘩以来だ。 似た者同士の2人が惹かれ合ったのか気づけば一緒に、というか東条さんが 男鹿から離れない、のだと思う。 同じクラスになってからはそんな2人のイチャ付き具合をほぼ毎日見せつけられる。 今の会話でそれなりの関係まで進んでいる事は安易に解る、が、男鹿に 『東条さんと付き合っているのか』と聞いた事があるが本人にそのつもりはないらしい。 向こうがどう思っているかは解らないが。 オレだってこいつら2人の関係がどうであれ、なんの興味もないけれど。 いっそのこと相思相愛で付き合ってます、って断言してくれたなら。 オレはこんな醜い思いを抱く事もなかったのかもしれない。 男鹿を一番解ってるのはオレで、男鹿の隣にいるのはオレで、これからだってオレで。 キスなんてしなくたってセックスなんてしなくたって。 他人が割り込んでくるのが不快で堪らない。2人の空間が歪んでいくのが気持ち悪い。 視線が他を向く、意識を他へ持っていかれる、1歩、2歩、離れる距離。 オレだけを頼ってて。 オレだけに話しかけて。 オレだけを傍にいさせて。 我儘赦してやれるのはオレだけだから。 無茶を聞いてやれるのはオレだけだから。 お前を理解してやれるのは、オレだけだから。 だんだんと男鹿と東条のやり取りが遠くの方で聞こえるようになっていく。 周りのざわめきもいつの間にか聞こえなくなっていって、オレはこんなに煩い空間で こんなに大勢の中でたった1人きりになっていく。 目を瞑ったらきっと本当に真っ暗だけど、見たくないものを見ずに済むなら。 ―― 気づいて。 『辰巳ちゃん』 心の中で名前を、懐かしい呼び名で呼んでみる。 ―― 答えて。 「貴之」 突然下の名で呼ばれたオレは、同時にあまりにも近くに感じた存在にはっと目を見開く。 ふわりと男鹿の、見かけの割に柔らかい髪の毛が目の前で揺らいだのが視界に 入ったと思った瞬間口唇を掠めた温もり。 驚いて言葉がでないのはオレも、今の流れを見ていた東条も同じだ。 数秒重なって離れていった男鹿の口唇は少し荒れていたが柔らかくて、その口唇を ニヤリと歪ませてオレを下から覗きこむ。 目線をそこから外せない。 「泣くなよ」 「・・・・は」 「オレ、ここにいるだろーが」 「・・・・・」 「バカ古市、だから泣くな」 「てゆーかお前がバカだからね。ここ教室だからね」 何、ギャラリーいる中でちゅーなんてしちゃってんの。 「だってお前、して欲しいってツラしてたから」 さいですか。 アホらしい。色々考えてた自分がもう嫌になるくらいアホらしい。 見透かされてて何やっても考えても全部がバレバレだ。結局欲しいものをくれるのは いつだって男鹿なのだ。 キスされた口唇が熱をもったように熱い。緩む顔を止められない。 目の前で東条さんがオレにもしろだのギャーギャー喚いて煩いけれど。 あんなにキリキリ痛んだ胸の奥の痛みが取れたオレはもう気にもならない。 たとえこの2人が未来で好き合って、恋人同士になったって。 オレは大丈夫。 どうぞ恋人なんてポジションくれてやりましょう。 特別な関係なんてなくてもこれからもオレは男鹿の隣にいて、男鹿の我儘を聞いている。 そうだろ? 「辰巳ちゃん今日オレん家コロッケなんだけど?母さん張りきってたけどなー」 「・・・おいおい古市クン何を」 「だからオレんとこ、おいで?」 「行く!!」 「まてええええぇぇぇぇ!!」 11: 泣かないで END |
キスのお題その17。
久しぶりに古男です。古男はなんか恋人同士にならない。恋人同士じゃないけど互いに好き合ってる。
友情ラインはとっくの昔に突破してます。でも互いに好きなんて言いません。
言うなれば、東条×男鹿→←古市みたいな?
深い処で解り合ってるのはきっとこの2人。東条さんはそんな2人の仲を見せつけられて嫉妬しまくってそう。
で、手酷く男鹿さんを抱いちゃうんだ。
そんな男鹿さんは別にそんな事どうだっていいんです。
だって東条は嫌いじゃないし古市は大切だから。