「どうなったんだ俺の身体!下ッ・・・下がねぇ、俺のムスッ・・・・・!」

「だまれ下種男」


瞳孔ひらいてませんか?ってくらいの眼力で見下しながら、何処から出したのか持っていた

御馴染みの傘を俺の頭に容赦なく振り下ろす。

さすがは悪魔だ、悪魔の女、略して悪女?魔女と呼べばいいのか。


「そんなに慌てることはないだろう?見てのとおり、貴様は女になったんだ。坊ちゃまの為にな」


慌てもしますよこの状況。

ついさっきまで、朝方あまりの眠気に気を失うように眠るまでは確かに男だったのに。

視線を下に落とせば現実がありありと見えて、未だベル坊が吸い付いている胸が嫌に目立つ。

腰だって細くて立ち上がったら恐らく履いているスウェットがずり落ちてしまうだろう。

なにゆえに?

俺はベル坊の夜泣きを止めたかっただけなのだ、安心して夜を眠り明かしたいだけだったのだ。


「説明してやろう、実はベルゼ坊ちゃまのアレは夜泣きではない」

「マジで」

「大マジだ。恐らくあれは・・・・ホームシックを起こしているのだろう」

「ホームシック!!!!」

「そうだ。坊ちゃまは赤ん坊なのだぞ?故郷、と言うか母上様が恋しくなるのは時間の問題だった」


だから?とは聞き返せなかった、否―・・・・聞き返したくなかった。

後に続く言葉くらい、古市曰く鈍感な俺だって解る。


「貴様が親代わりなのだから、当然“母親”も然り」

「まてまてまて!母親代わりはお前だろーがっ!俺を無理矢理女にしなくても・・・」

「私では無理だからだ」


出ないからな、と言う科白に何がと首を傾げると、女の視線がベル坊に向く。

細い、白魚のようなと表現するのがぴったりな手がこちらに伸ばされ、俺は思わずその行動を目で追った。

その手はベル坊に伸ばされるのかと思いきや―・・・・。


「悪魔の秘薬は悪魔には効かん」

「あぁ?」

「あの薬は単なる性転換の秘薬ではないぞ。ほら、飲むとあっという間に母乳のでる身体に・・・」


きゅ、っとむき出しになった胸の先端を摘まれれば。

ミルク色した母乳がぴゅくりと噴出した。







にまつわる彼女のハナシ

act.2  お前いったい、なにしてんの?







結局遅刻な訳だがこれほどまでに学校に行くことが億劫だと思った事はない。

まず無駄にでかい胸をどうするかと悩んだ。

あの後お袋と姉貴に事情を話したところ、驚かれこそしたもののあっさりこの有り得ない状況を

受け入れて(さすが俺の肉親)くれたのだが、姉貴が下着を貸してくれると言って持ってきたものが

サイズが合わなくて上段蹴りが飛んできた。

生まれた時から知ってたけどなんだこの理不尽。

仕方ないのでこのままで行くと言ったらお袋にまで殴られて。

そんなこんなで悩んだ挙句邦枝がさらしを巻いていた事を思い出し、見習う事にしたのだ。

学生服?そんなの、女用なんて着れるわけがないだろう。

ズボンの裾捲って、ベルトでギュウギュウに絞めて、不恰好だと思わなくもなかったがそれでもマシだ。

廊下から教室まで歩く間、ガンを飛ばしてくる野郎共が鬱陶しくて適当に殴っておく。

いつも以上にジロジロと腹の立つ。ベル坊が俺の背中にしがみ付いてる姿なんて今更だろうに。

教室のドアを開けると3時限目が始まっているはずなのに半数ほどしか席にいない。

数学を受け持つ教師は一心不乱に黒板と向き合っている。

窓際の席で古市が呆れ顔で此方を見ていた。


「遅刻かよ男―・・・・・・・・男鹿?」

「聞くな。聞けば命はないと思え」

「や、だって背とか縮んで・・・・・声とかまるで」

「別に何処も変わってませんけどー!!やだな古市君たら視力いくつぅ!!」

「ギブ!ギブギブッ・・・」


いらぬ事を言おうとした古市の首を片手でギリギリと締め上げれば、顔色を変えて

助けを求めてきたので意識を落とす前に放してやった。

別に女になった事を隠したいわけではないが、この小学校来の友人は女子の事となると

キモイくらいに浮き足立つというかテンションが上がるというかもうキモイ。

そんなに女子が好きなら彼女作れば?

と言ったことがあるが「作ってもいつもアイツに似てる事に気づいて自己嫌悪に落ちる」と本当に

落ち込みながら返された事がある。“アイツ”が誰かは言わなかったが。

何にせよ気づかれると厄介な事になりそうなので取り敢えず屋上にでも避難することに決めた。


「おい男鹿?来たばっかなのにどこ行くんだよ」

「まぁ・・・・そこら辺?」

「だからどこだよソレ!」









**********








喚く古市を放って、俺は教室を出た後屋上へと続く階段を上っていく。

たまに柄の悪い連中がたむろっているが拳ひとつで退けてくれるので大丈夫だろう。

屋上にでればそろそろ真上に昇ろうとする太陽が照り付けていて。

案の定4、5人上級生がタバコを吹かしながら座っていたので問答無用で殴りつけてやりました。

適当に影を見つけて腰を下ろす。


「ダーブー!」

「あぁ?もうそんな時間かよ」


ベル坊の食事は一日5回。そろそろ本日2回目のミルクを欲しがる時間だと思っていた。

催促するように「ダ!」と呼ぶ幼い声。


「ちくしょー・・・あの女、何が粉ミルクは持っていくなだ!母乳とかマジありえねー」


だがやらない訳にはいかないのだ、腹をすかせたベル坊に癇癪を起こされるとたまったものではない。

仕方ない、とシャツのボタンを外してぐるぐる巻きに締め上げていたさらしを取っていく。

巻きなおすのがまた面倒だな、と思った。

ほら、とシャツを開くと、たゆんと揺れて現れた乳房。

何度見ても見慣れない光景に自然と眉間に眉が寄ったが、ベル坊が余りに嬉しそうにそれへ

しがみ付くので何というか諦めるしかないというか、絆されてしまう。


「コラあんまり強く吸うな。痛ぇだろ」


よもや男の俺が授乳なるものを体験する羽目になるとは。

この世の中何が起こるかわからないものだ・・・魔王の親になった時点で解りきっていた事だが。

そうぼんやりと耽りながら空を見つめていると、屋上のドアがバタンと開いた。


「さっき廊下歩いてるとこ見えたんだが、やっぱり此処だったか」


太陽の光に照らされて、入ってきた男の髪の毛が金色に染め上がっている。

男鹿、と俺の名を呼びながらこちらに向かってくる男は東条という。

最近殴り合いの喧嘩をした仲とでも言うか、それからこっちよく一緒にいる仲というか。

ぶっちゃけ古市より一緒にいる時間多くね?と思えるほど近くにいるようになった仲というか。


「何か用かよ」

「お前なぁ・・・・・・って、男鹿?・・・・なんだそれ」

「何って知らねーのかバカめ。授乳中だ」

「じゅっ・・・・?!」


コクリと頷いてやると大きな身体を屈めて俺のほうにのめり込んできた東条は、驚いて絶句したまま

俺と、んくんくと乳房にしがみ付いて母乳を吸うベル坊を見比べている。

胸元を凝視されると嫌なものだな、本当に女になった気分だ。や、女だけど。


「―・・・・ホンモノなのかこれ」

「あ、おい、さわっ・・・・」


反応が遅れて、触るなと言いきる前に伸ばされた手のひらで片方の胸を鷲掴まれた。

形の良かったそれに指が食い込んでふにゃりと崩れる。

痛い。

そのまま確かめるように揉みしだかれて。

刺激された所為かぴゅ、ぴゅと白いそれが乳首から流れ出ていく。


「い、ァ・・・めろっ!」

「実は女だった・・・訳ねーよな、お前確かに男なはずだ」

「いろいろっ!事情があンだよ、つか離せ・・・・あ、ぅッ・・・!」


ビリ、と身体に刺激が走ったのは東条が母乳の伝うそこを舐めたからだ。


「ちょっと甘ぇか?」

「ふざけんなコラ!あっ、吸うなてめー!!これはベル坊のだ!!」

「ケチんな2つあるんだからいいだろ」

「よくね・・・アッ・・!」


ぱくりと銜えられた乳首に這わされた舌の熱さに思わず高い声がでてしまう。



変態か?変態なのかこいつ。



正直言えばこいつとは気づいたらキスする仲になってたし、その、セックスだってする仲だけど。

本格的に俺の身体を抱え込みながら、ベル坊と同じように胸に顔を埋めた東条を。




そう思わざるをえませんでした。












NEXT










やっと東条さん登場。そしてもうなんかヤバい方向にいってます。
どれだけ乳吸わしてんですか男鹿さん・・・これ、ギャグですからね!ギ ャ グ !