ビェエエエエエエエン!




薄っすらと朝焼けの光に空が青白く明るみ始めた午前5時。

男鹿家、2階の一角では、真夏の真昼間の日差しにも負けぬほどの明るさ―・・・もはや閃光といって

いいかも知れない・・・に染まった。

何度目?昨日の晩ベッドに入ってからこれ何度目?

ブスブスと自身を焼く焦げ臭さにももう嗅ぎ慣れた。や、嗅ぎ慣れたくなどないが。


「フミー・・・・」


俺の腹の上で、緑色の髪の毛が左右に揺れ動く。

ぐずりながらイヤイヤをするように額を擦り付けてくる様は可愛いとは思うが如何せん死ぬだろ、これ。

間違いなく電撃くらい過ぎて死ぬよね。


「・・・ベル坊ー、勘弁してく・・・ああぁ!泣くな、泣くんじゃねぇぇ!!」

「うー、みゅぅぅ・・・」


泣き足りないのか目尻に涙が溜まり始めたのを察し、慌てて震える小さな身体を腕に抱いて起き上がる。

こうなった魔王の子供はただひたすら宥めるしかない。もう一度寝入ってしまうまで。

グルグル、グルグル、抱っこしたまま部屋の中を歩き回る俺の顔はきっと疲れやつれているだろう。

何が気に入らないのかこの所ベル坊の寝つきが頗る悪い。

否、寝つきが悪いというのは少し違う。どうも寝入ってから幾時間も過ぎぬうちに起きてしまうらしい。

確認した訳ではないがその為眠さで機嫌が悪くなっているのだろう。

だから毎夜毎夜こうして夜泣きという赤ちゃんには付き物、デッドオアアライブも真っ青な目覚まし時計

ならぬ目覚まし電撃が落とされるのだ。


「頼むからもう寝かせてくれ」

「坊ちゃまに向かってそのような破廉恥なセリフを吐くなこのドブ男」


突然投げかけられた冷えた声色に、反射的にドアの方を振り向けばいつかはやってくるだろうと

思っていた女がようやっと姿を現した。電撃何度目だと思ってんの?確実に寝てたろ、爆睡だろ。

と、いうかこれで起きない俺の家族もさすがというべきか。

何が破廉恥なのかは知らないがこのヒルダという女は俺を腹立たせるのが滅法上手い。


「勝手に部屋に入ってくんじゃねーよ、シメるぞコラ」

「ほう?そんな口を聞いていいのか?せっかく坊ちゃまが泣かずに眠れるいい薬が」

「ごめんなさい悪かったですだからそれ寄越せ!!」


そんな薬があるならもっと早くに出しやがれ、と心の中でだけ叫んでおく。恐らくこれは虐めだ、虐め。

正直なところ、この時は本当に藁にもすがる思いだったのだ。女がいかにも怪しさ満載な色をした

液体が入ったビンを、これ見よがしに俺の目の前で振っていたがどうでもよかった。

― ただ安眠できれば。

あの穏やかな眠りのひと時が返ってくるのであれば、悪魔の囁きだろうが魔王だろうが。

罠だろうが後悔しようが―・・・どうでもよかったのだ、 こ の 時 は 。









にまつわる彼女のハナシ

act.1  オトコですから出ちゃだめなんです。











辰巳ー、と階段の下から名前を呼ぶお袋の声がぼんやりと聞こえる。

意識が浮上してくると閉じた瞼に透けて入ってくる太陽の日差しが眩しく思え、ガバリとタオルケットを

頭からかぶり直した。嗚呼、ゆっくり眠れるって素晴らしい。

あの後、明け方に食らった電撃を最後にベル坊はさっきまでのぐずりっぷりは何だったのだと思うほど

すやすやと眠り始めたのだ。今もぐっすりと俺の腹、否、胸の辺りにうつ伏せて眠っている。

女からもらった薬は夜泣きを止める薬だと思っていたが、何故か俺が飲むものだと言って手渡された。

色々と腑に落ちない所もあったが―・・・ベル坊の夜泣きを止める為なのに何故俺が?とか

俺が飲んで夜泣きに何の効果があるのか?とか―・・・色々あったが、女の有無を言わさぬ「飲め」

の一言が、飲まなければ確実に殺られるような雰囲気を纏ってて、寝不足が祟って眠たくて。限界で。

どピンクに染まった怪しい薬を一気に飲み干しました。

効果は依然として解らない、だがこうしてベル坊が大人しいのはきっとあの薬のお陰なのだろう。

また階段のしたから、今度は怒鳴り声で名を呼ぶのが聞こえてきて、俺は億劫ながらも

のろのろとした動きでタオルケットを足元まで蹴り下ろした。


「ほらベル坊、ちょっと離れろ。着替えるから」

「うー・・・」

「飯か?ミルクなら下で用意してるぞ、だからどけって」


胸の上でもぞもぞとベル坊が動くものだからくすぐったくて仕方ない。

シャツが捲れあがっているのか素肌に小さな手が触れる感触に笑いがこみ上げてきて、

叱る代わりに子供特有の柔らかな髪の毛を撫でてやる。


「ン、ちゅっ」


再度お袋の怒鳴り声が聞こえてこぬうちに起きなければと、ベル坊の身体を持ち上げようとした、その瞬間。

ツキン、とした痛みと共になんとも言いがたい感覚が身体を走り抜けた。

胸元に感じるそれは以前にも感じたことがある痛みで、またベル坊が、こんな場面恥ずかしくて誰にも

見せられやしないが、俺の乳首に吸い付いているのだろう事が安易に知れた。

寝ぼけていたのか知らないが、初めて吸い付かれた時はそれはもう容赦なくお仕置きしてやったのだ、

きっちり泣かれて電撃食らったけれど。


「こーらーぁぁ!そっからミルクは出ません!飲みたきゃあの女にでも吸いついてっ・・・・??!」


― あ れ ? 

何かおかしい、俺の身体。

起き上がったはずなのに捲れたシャツが胸の上で引っかかって止まってる。

あれ?何か胸腫れてない?見間違いじゃないよね、だって形の良い胸がぽよんと突き出てて、

見るからに柔らかそうなそれを、ベル坊が紅葉の様な手のひらで挟んで顔を埋めているのだから。

ちゅ、ちゅと吸われる度にこみ上げる変な感覚が嫌でも夢ではないことを教えていた。


「落ち着け、なんだこの状況・・・目が覚めたら俺の胸が女みてーに・・・女・・・おん・・・」


ひとつの考えが脳裏をよぎり、あまりの恐ろしさにゾッと背筋に悪寒が走る。

だが無視も出来ぬ状況で。

怖かったが、確認しなければ今の状況を飲み込むことも噛み砕くこともできそうにはなくて―・・・・。

そっと下腹部に手を伸ばすとスウェットとボクサーパンツを一緒に持ち上げた。







「うっ・・・・・・・ぎゃああああああああっ」











俺の甲高い叫び声にお袋の怒鳴り声と姉貴が混じり、驚いたベル坊の泣き声がそれに重なり。





「良かったな、成功したのか」

「なにがですかあああぁぁぁぁぁ!!!!!」





今日も男鹿家は元気です――・・・・。











NEXT→










なんだか走りすぎてる感出しすぎです。のっけから趣味に走りすぎです。多分今後Rつきますけど大丈夫ですか。
ベル男鹿っぽい始まりですけど虎辰です、よろしく。