『ガーベラ(ピンク) 花言葉【崇高美】』

『彼女』は今日もやってくる。
ふわり、涼やかな水色スカートをひらめかせて。
ゆらり、緩やかな胡桃色の巻き髪を靡かせて。
くるり、『彼女』が曲がり角を駆けてくる。


初めて『彼女』を見たのは高校のとき。
駅の改札から出てくるその姿は、ひとりだけ光を放っているようで。
まるであなたはヒトではないようで。
私はあなたに、恋をしました。
もう『彼女』から目を離すことはできなくて。
篠突く雨も、咲き零れる傘も、行き交う名無しの人の群れさえも。
何もふたりを遮るものはなくて。
私はあなたに、心を奉げました。


【髪、爪、腰のライン。】
【あなたに欠けているものなんて、何一つない。】
【私の総てを満たして酔わす。】
【最高の葡萄酒(ワイン)にも似た人。】
【指、肩、脹脛。】
【あなたに欠けているのなら、埋めればいい。】
【私の総てを費やし創る。】
【唯一無二の女神のような人。】
【心臓、眼球、薬指。】
【あなたに伸ばせるような手なんてない。】
【たとえ腕が千切れるほど伸ばしても。】
【届く事などないのだから。】
【血肉、魂、命さえ。】
【あなたに捧げても決して惜しくなんかない。】
【どうせ他に使い道はない。】
【こんな体でよければいくらでも。】



───ドウゾ。



【こんな心でいいならいくらでも。】
【どうせ他に渡す気なんてない。】
【彼女に捧げられるならそれこそ本望。】
【アレも、コレも、ソレさえも。】
【届く事などないとしても。】
【腕が千切れてでも掴み取ってみせる。】
【彼女以外に伸ばすような手なんてない。】
【アレも、コレも、ソレも。】
【俺にとってのガーベラは彼女。】
【俺の総てを費やして護る。】
【彼女がもしも俺を必要としてくれるのならば。】
【アレも、コレも、ソレも。】
【最上の料理のような魅力。】
【俺の総てを満たして狂わす。】
【彼女に欠けているものなんて、あるわけがない。】
【アレも、コレも、ソレも。】


俺はあなたに、心を捧げました。
何も想いを妨げることは出来ません。
周囲の目も、世に溢れる醜聞も、降りかかる火の粉のような災難さえも。
もう『あなた』から目を逸らす気はなくて。
俺はあなたを、愛しています。
もはや『あなた』は俺の女神でしかなくて。
その吐息や仕草のひとつひとつが、俺に光を与えていて。
俺の世界が終わるまで『あなた』を見続けることにした。


くるり、『あなた』が曲がり角を曲がる時。
ゆらり、胡桃色の巻き髪を想いながら。
ふわり、水色スカートに映えるピンクのガーベラを。
俺は、花束にして送る。

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