corkboard tpt『蜘蛛女のキス』

tpt『蜘蛛女のキス』@つくばカピオホール

出演者:山本亨、北村有起哉

2002/10/26 (SAT) なんだか切なくなった秋の夜長

事前にもっていた知識といえば「ホモの話」(by サークルの先輩、差別意図はないものと思われる)ただそれだけで地元の劇場に気軽に観に行った芝居(←贅沢な言い方だな)なんですが、観終わって自転車での帰り道、なんだかひたすら情緒不安定でした。そりゃもう、戸惑うくらいに。後半、モリーナに完全に感情移入して観てたもんで、気持ちがすごく揺さぶられてしまったらしい。……陳腐な表現だけど。

幕が開いてモリーナが黒豹女の映画(『キャット・ピープル』1942、アメリカ)の話をヴァレンティンにするところから物語が始まる。最初は世界に入り込むのにすごく時間がかかって、「学術書を読んでるみたい」と感じた。二人の会話だけで進む、彼らの感情の変化を追った物語は、少しでもセリフを拾い落とすと途端に置いていかれそうで、何度も何度も咀嚼しながら観たい感じの作品なのかなあ、と。ちなみに言い訳しておくと、「学術書を云々」といっても「つまらない」と感じたわけではなくて。一応卒論と闘う大学4年生なんで、学術書もきちんと面白いことはもう百も承知で(あ、蛇足)

私が物語に吸い込まれていったのは休憩直前、実はモリーナが政治犯であるヴァレンティンから何らかの情報を聞き出す任務を与えられている事が発覚した時。二人の置かれている状況が理解できたあとは、もうひたすらホモセクシャルのモリーナがヴァレンティンに惹かれてゆく描写に「女の子として」感情移入しっぱなし。モリーナが男だということをつい忘れてしまうくらい。二人の会話は癖のない水のように自然で、感情描写はリアルというよりいい意味で生々しくて、本当にすごかった。すごいとしか表現できないボキャブラリーの貧困ぶりが恨めしい。後半は話が進めば進むほどヴァレンティンとモリーナの間の心理的距離がどんどん縮まっていって、物語終盤には感極まってもう少しで泣きそうになったその時。

ベッドインするのは別にいい。でもそこまで頑張って喘がなくてもいいじゃないか。

いや、ダメと言ってるわけではなくて、そこまできちんと演じるからこそのリアルなんだろうけど、あの、ちょっと引きました。すいません。

それは置いとくとして、なんか一言で表すと「上質ってこういうものに対して使うのかもね」と。原作の小説とか読んでみたいなあとか『キャット・ピープル』は近くのレンタルビデオ屋にあるかなあとか、好奇心の幅の広がった秋の夜長でした。2時間半の上演時間も気にならない。

しかしチケットの売れ行きが(つくばでは)とにかくよくなかったらしいこの芝居。本来のチケット代は4000円でしたが、密かにつくばで芝居をやってる学生たちに1500円で叩き売りされてました。すんません、私も1500円で買ったクチです。それでも席はB列16番なんだからちょっと泣けるくらいの不入りです。始まる前に客席を見渡してみましたが、「1500円にダンピングしてもチケット売りたかったわけだ」とよく分かるという。私はそれを非常に残念に思うわけです。

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