公開式典を終えてヒカルと佐為は、回廊を歩いていた。
いきなりヒカルが柱の影に飛び込んだ。…瞬間的に佐為の髪をひっつかんで。
「あいたっ!」 佐為が悲鳴をあげた。
「なにす…もがっ」その口を慌ててふさぐ。
「しぃーーーっ!静かに、佐為。…緒方さんだ」
見れば、回廊の出口あたりで緒方が、誰かと談笑している。
そっと佐為の口から手をどけてやると、不思議そうに聞いてくる。
「…どうして隠れるんです?今のヒカルなら緒方さんにだって、そうそう引けは取りませんよ?」
「オレ、あの人、苦手なんだよ」 ヒカルは思いっきり顔をしかめて言った。
「あいつが佐為にした事を考えると、今でも許せないって思うのもあるけど」
「それは…仕方ないことなんですよ…」 佐為は目を伏せた。
「わかってるよ。お前がそう言うならオレはもう何も言わないさ」
「だったら、なんで?」
ごにょごにょと二人で話していると、いきなり背後から声をかけられた。
「そんな所で、何をしている?」
「!!」 話に夢中で緒方が近づいてきたのに気付かなかった。
「べ、別に!こんにちわ、緒方さん」 イヤな相手は愛想笑いでごまかせとばかりにヒカルは笑う。ただし、かなりひきつった笑いだ。
「じゃ、さいならっ!」
ヒカルは慌てて佐為の腕を掴み、走り出そうとした。それを見事なタイミングで呼び止める。
「佐為」
「は、はいっ?」
律儀に立ち止まる佐為。
「今夜いっしょに、食事でもどうだ?」
「………」
「いかねえよっ!」 無言の佐為に替わって、ヒカルが怒鳴るように答えた。
「お前も、はっきり断れ!」
佐為にも八つ当たり気味に怒鳴る。愛想笑いはすでにみじんこほども浮かんでいない。
「おいおい、三条。オレは佐為に聞いてるんだぜ?」 緒方は面白そうにヒカルを見て言った。
「”ARCH・ANGEL”はもう”存在しないファティマ”なんだから、いいかげん緒方さんも諦めなよ!」
「諦めたさ。ファティマはな。…だが藤原佐為はここにいるじゃないか」
「さ、佐為は男だぜ?緒方さん!」 ヒカルが焦って答える。
「わかってるさ。そんなことは先刻承知の上だ」
ヒカルはなんと返していいかわからず、口をぱくぱくさせた。
そこへ今まで無言で聞いていた佐為が、
「いいかげんにして下さい。ヒカルはまだ子供なんですから、かわかわないで下さい」
そう嫌そうに言った。
「失礼します」
ヒカルを促し、行こうとする。
「まあ、待てって。…佐為、塔矢剣聖が帰ってきたぞ」
「剣聖が!?」 佐為は立ち止まって振り向いた。
「ああ。アキラから連絡があった」
「詳しい話は今夜、な。情報のお礼として食事に付き合ってもらってもバチはあたらんだろ?」
「……(汗)」
「今夜、迎えにいく」 緒方は勝ち誇ったように、そう言いおいて去っていった。
「行く気か?佐為!?」 ヒカルが鋭く聞く。
「…話は聞きたいです」
「…じゃあ、オレもいっしょに行く!別にお前一人で来いとは言わなかったもんな。緒方さんがなんと言おうが知るもんか!」
佐為の顔がぱっと明るくなった。
「ヒカル…いいんですか?緒方さんのこと苦手だって言ってたのに」
「気にすんなって」
(あんなアブねえ男とお前を、二人きりになんか出来るかってんだ) これはヒカルの心の声だ。
佐為はヒカルをまるっきり子供だと思っているが、ヒカルはもう13歳。世の中にはそういうシュミの男もいる、くらい分かっている年齢なのだ。
(お前はオレが守る!)
ヒカルは心の中で拳を握り締めた。
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後書き(FSSマニアの方へ)※興味ない方はすっとばしてください(^^;)
ヤクト・ミラージュはFSSの年表では3009年公開とされていますが、コミックスではどうも3007年のレッド・ミラージュ及びナイト・オブ・ゴールドと同日の公開のように見えたので、とりあえず3007年公開としてしまいました。またヤクトの名前ですが公開されたオレンジライトの名は”ツインタワー”という事になっています。でも私はグリーンレフトの名前を知らない…それが私的にちょっと都合が悪かったのでいつか聞いた(多分初期設定)ライト=”ドラゴン”、レフト=”デモン”としました。
MH”カン”の活躍時期は3000年代ですが、これも勝手に変えています。
ジョーカー人と地球人の年齢、この問題はすっぱり無視しています。年代と人物の年齢がヘンでも気にしていません。それくらいに見えるということで。ちなみにジョーカー人は成人するのに約90年かかります。
3000年に入るとファティマスーツはほとんがプラスチックスタイルに切り替わっているとされてますが、星団法に準拠すれば他のスタイルもアリだろうと考え”ARCH・ANGEL”のファテイマスーツはプラスチックではないとしています。あれは女性はいいが男性は着てはイケナイ服だと思うぞ。
長々書きましたが最後に、これはFSS風のヒカ碁なのでどうぞ暖かいおめめでお読みください。