Taung Karat

行った日 2002年11月29日
天候 雨+霧
参加者 私+かみさん+子供(男4歳)
行程 登り口 10:35 → 靴を脱ぐ 10:45 → 第一ハシゴ 10:55 → 第二ハシゴ 10:57 → 頂上 11:05
頂上 11:15 → 第二ハシゴ 11:18 → 第一ハシゴ 11:20 → 靴をはく 11:25 → 登り口 11:35

Mt. Popa(ポパ山)は、ミャンマー中西部にある 標高1518mの山である。 ガイドブックやミャンマー関連のサイトなどで Mt. Popa について見ると、 Popa(ポパ)の語源はサンスクリット語の「花の溢れた」というところにあるらしい。 ミャンマーへの旅が決まったとき、私はどうしてもこの山に登りたくなった。 しかし、子供が産まれて以来ずっと「山登り禁止令」が継続中の私である。 かみさんに「登山口から往復 3時間」ということを話したら、「その間私たちは何をしていればいいの?」 と、あえなく却下されてしまった。

このまま引き下がるわけにもいかないので、ターゲットを Mt. Popa の中腹にある岩 Taung Karat に変更した。 標高737mの "岩" なのだが、写真で見るかぎりなだらかな Mt. Popa の山腹に何の脈絡もなく突然突っ立っている妙な岩である。 そして、その頂上には寺院がある。こちらは登り口から30分もあれば登れるらしい。こちらはすんなりとOKが出た。

とにかく何よりも先に Taung Karat を目指さなければ、と、Yangon 到着の翌日早朝の飛行機で、 Taung Karat から50km程離れた Nyaung Oo まで行く日程を組んだ。 しかし「ミャンマーは乾季」と聞いていたのに、Yangon を出た飛行機は「天候不良の為」Nyaung Oo に着陸できず、 Mandaley に着いてしまった。私たちはそこで 6時間余り待たされることになった。 何となく前途に不安を感じはじめた。

漸く Nyaung Oo に着くと、晴れ間がのぞきはじめた。 しかし、ホテルに着く頃にはまた雨が降りはじめていた。 空港からホテルまで乗ったタクシーの運転手と交渉して、翌日 Taung Karat まで往復して貰うことにした。 昼食と若干の観光付きで US$25だった。Mt. Popa本体は観光ルートとして一般的ではないようで、 「Mt. Popa」と言うと Taung Karat を指すようであった。 運転手曰く「山のてっぺんとここでは天気が違うこともあるから大丈夫だ」。それを信じたい。

翌朝はまだ雨が降っていた。タクシーは私が指定した時間の 1時間近くも前にホテルにやってきた。 登り口まで 2時間くらいということだが、 途中の民家みたいなところに寄ってヤシのような木の実から出る汁から飴や蒸留酒を作っているのを見たり、 結婚披露宴をやっているところに立ち寄ったりしていたので、30分くらい余計にかかった。 Taung Karat は霧雨に煙っている。

登り口は複数あるみたいだが、私達が着いたところには他のタクシーやバスも何台か見たので、 多分そこがメインなのだろう。門を入ってコンクリートの階段を上る。 門のところでバナナを売っている。しかし、まだ青くて人間が食べるには渋そうだ。 ここにいるという野生の猿の餌かもしれない。

階段にはずっと屋根がついている。少し登ると階段の片側に土産物屋がずらっと並んでいた。 どの店も売っているものは似たようなもので、木製品や竹製品、装飾品等が並んでいる。 しかし、売る気があるのかないのか、通る人に声かけるでもなく静かに待っている店が多い。 のぞき込んだり商品を手に取って見ていると寄ってくるが、 寄ってくるだけで「買え、買え」といった雰囲気はない。

土産物屋街のところは傾斜がゆるやかである。 その末端あたりから少し水平に歩くと、登り降りする人でややごった返しているところに出た。 ここはミャンマー土着の宗教「ナッ」信仰の聖地なので、裸足で登らなければならない。 どうやらそこから靴を脱がなければならないようだ。

サンダルを脱いで「さて、登るか」と思うか思わないかのうちに、 突然二人の女性が子供の両脇を抱えて階段を登り始めた。 「何者?」 と思って追いかけると、「Baby Carrying Service」と言う。 確かにさっきよりは傾斜がかなり急になったようだ。それに、階段の一段一段の段差がかなり大きく、 うちの子供の足の長さではどんなに頑張っても登れないように見える。 それを考えると確かにありがたいサービスではある。しかし、その女性達、登るスピードがかなり速い。 私はともかく、かみさんは追走に精一杯である。 子供は両脇から抱えあげられるような感じで足が完全に浮いている。

階段には所々に猿がいる。 しかし、その猿達、人を見慣れているのか、それとも穏やかな性格なのか、 ただ鈍感なだけなのか、人にちょっかいを出す風でもなく、マイペースでその辺に存在している。 時々こっちを見るが、「我関せず」といった雰囲気だ。日光の猿とはえらい違いである。 日本の猿もここで修行させたらいいかもしれない。

階段の所々にベンチが作ってある。 Baby Carrying Service は、適当なところまで登って休憩、を繰り返している。 雨にもかかわらず登っていく人は多い。老若男女、皆裸足で雨に濡れた階段を登る。 途中から傾斜はさらに急になって、鉄梯子に近い階段も 2箇所あった。 二つ目の鉄梯子を過ぎたら、傾斜がやや緩くなったような感じがした。 しかし「ここが頂上」と Baby Carrying Service が言うまでには、そこから更に7、8分を要した。

頂上から周りを見ても、真っ白で何も見えなかった。晴れていれば非常にいい眺めらしい。 相変わらず霧雨が降っている。非常に悔しい。山の上でも下でも天気は同じではないか。 聞くところによると、この雨はここ4、5日降り続いているらしい。いったいどこが "乾季" なんだ。 私はここにまつられているという37の「ナッ」がどれなのか知りたいのだが、 Carrying Service は少し休むと先を急ぐ。 とりあえずミャンマーの八曜日のうち、自分の曜日のところにお賽銭をあげ、お参りするにとどまった。

Baby Carrying Service の二人は、下りも韋駄天だった。 達磨のような「ピフェ・ダインタオ」が所々にあるらしいのだが、 まず足元注意で、それらを探す余裕はあまり持てなかった。 近いうちに必ずミャンマーを再訪し、今度こそ晴天の Mt. Popa を訪れる、 そして、今度は Taung Karat ではなく Mt. Popa 本体に登る、これを心に決めて階段を降りた。 下りは20分で登り口に着いた。暖かいラペッイエ(ミャンマー風ミルクティ)がおいしかった。


[≪ 山旅 INDEX]