黒部五郎岳
1. Prologue
盆休みに黒部五郎岳に行こうと思う。この時期、山に人は多いし、天
気は不安定になりかけているし、花も秋の花に移り始めているしで、条
件としてはあまり良くないのだが、まとまった休み(といっても”夏休
み”を別の時期にとる私にとっては5日間程度なんだけど)があるので
週末登山に比べれば長期間山に居られる、というのは大きい。
今年は休めるかどうかが大変危うかったのだが、なんとか休みが確定
したのでまず行き先を考える。一泊程度ではなかなか行きにくいところ
と思って最初に思いついたのが黒部五郎岳だった。地図を見ると、3、
4泊程度で黒部五郎岳から高天ヶ原温泉あたりまで回って来れそうだ。
このところ穂高連峰には登る機会が多くて、そこから眺めることは多か
ったのだが、まだ行ったことの無い山稜であり、どんなところか非常に
楽しみ。ということで、8月12日の夜に自宅を出発、新穂高温泉で仮
眠して、13日の早朝から登り始め、3泊4日の日程で16日下山の日
程に決定。その間の日程は、歩きながら考えることにしよう。
さて、こうなると問題は天気だ。8月第二週頃は、長期予報を見ると
「8/13、14頃はまずまず。15からは良い。週明け頃からやや下り坂」だ
ったので、これならまずまずかなと思っていた。11日に見た内容も似た
ような状況だった。「これなら」と確信して11日の夜から準備に入った。
小屋泊りなので、持って行くものは昼飯+αの食料と防寒装備、写真器
材がメインで、準備はすぐ終わる。
しかし、12日になると状況が変わった。帰宅して天気予報を見ると、
翌日はどうも天気が思わしくない。前線が南下してくるようで、天気分
布の予想を見ると北アルプス南部方面はなんとなく昼間雨だ。夕方「山
の天気」を見た妻によると、北アルプス北部・南部はともに「曇か霧で
所によって一時雨」といっていたそうだ。まあ、この表現は山の天気で
は良くあることなのだが、これでは登っても雨に降られるだけのような
気がする。私は雨の中登って行くほどの根性も無いから、とりあえず一
日自宅に停滞して様子を見ることにする。
さらに困ったことに、14日になると前線が更に南下して北アルプス南
部はさらに雨地域に入ってくるらしい。もし14日もだめだと日程は15日
〜16日の一泊二日だ。その時は黒部五郎岳は無理だろう。ということで、
代わりのルートも考える。扇沢−針ノ木岳−船窪小屋か、七倉−烏帽子
岳あたりにしようと思う。まあ、14日から登ることができれば黒部五郎
岳には行けそうだから、それに超したことはないのだが、天気ばかりは
どうすることもできない。
しかし、天は何を思ったのだろうか。自宅に停滞中の13日に天気予報
を見ると14日から天気が回復してきそうな気配だ。山の天気でも、北ア
ルプス南部は相変わらず「曇か霧」なのだが、北アルプス北部は「曇か
霧、日中は晴れ間も出る」という、なんだか期待できそうなことを言っ
ている。これならまず一日雨ということはないだろう。最悪稜線まで出
て、翌日に期待ということもできる。これは”行き”だ、と思い、準備
再開。14日から16日の2泊3日に日程短縮して、黒部五郎岳を目指すこと
にした。