Maxima を使った流体力学基礎演習

ここでは流体力学の種々の基礎的例題について、演習ノートとしてまとめた。ここで、基礎方程式、ベルヌーイの定理(Bernoulliの定理)、2次元完全流体、3次元完全流体、揚力、粘性流体、表面波をまとめた。ここでは詳細な解説は一切行っていない。内容は簡単な説明と入力、出力のみをまとめたものである。解説については、世の中にすばらしい解説書が多くあるので、それを参考にしていただきたい。

近年、数値流体力学の進歩が目覚ましく、多分野で大きな成果をあげている。数値流体力学では基礎方程式を使用しているため、多くの分野・形状に活用できる。また、パソコンでも限度はあるものの任意形状まわりの流場を求めることができる。しかし、いわば数値実験であり、その特性を包括的に知ることはできない。解析的な流体力学を学ぶ意義は、流体力学の基本の理解であり、例題は限られた形状であるものの流体の特性が包括的に得られる。

 

 

Maxima を使った流体力学基礎演習ノート」 (第5回改訂)713ページ、約31MB

 

 

 

目次

1章 はじめに

2章 基礎方程式

流体の特性、質量保存の方程式、運動方程式、流体要素表面に作用する力、流体要素表面に作用する応力と流体速度勾配との関係、Navier-Stokes の式Euler の運動方程式、Bernoulli の定理、速度ポッテンシャル、物体に作用する力

3章 静止流体

流体の力学的平衡:マノメータ、ゲートに作用する力水タンクの底の球、箱形浮体の安定性動座標系:直線加速中のタンクの水面、回転する水の水面、回転するU 字管の水位

気体の特性:大気の圧力と高度の関係(温度一定)、大気の圧力と高度の関係(対流圏)

4章 Bernoulliの定理

タンクの穴からの噴出:Torricelli の定理、くびれ係数、円管より鉛直落下する水、円管より斜め上方へ放出した水、側壁の穴からの噴出(液面積影響)、側壁の穴からの噴出水の到達距離、柱状タンクの下端からの流出(液位と時間)、半球タンクの下端からの流出(液位と時間)、水時計、下部開口部でつながった二つのタンクの液面変化、容器につめた気体が小さな穴から噴出

管路:ベンチュリ管(Venturi tube)、断面積が不連続に急拡大・縮小する管路の損失、円管摩擦損失、貯水池を結ぶ分岐管路、管路網の計算、管路網の計算(収束計算)

管内非定常流れ:一様な太さの管内非定常流れ、断面積がゆるやかに変化する管内非定常流れ、タンク側壁につけた水平で一様な太さの管内非定常流れ、管路内の水撃現象、一様な太さのU 字管の液体振、断面積がゆるやかに変化するU 字管の液体振動

回転動座標系:回転する円管(遠心ポンプの原理)

開水路:三角せき、もぐりせき、ベルヌイの定理(開水路)、一様・定常流、流れのエネルギー、流れの運動量、ゆるやかに水位が変化する流れ、跳水現象、開水路の過渡現象(ダムの崩壊モデル)、円形開水路の経済的な形状、台形開水路の経済的な形状

漏洩:容器のピンホールからの分子流、粘性流による漏洩

5章 2次元完全流体

複素解析:2 次元速度ポッテンシャルと流れ関数、複素演算、複素関数の微分、Cauchy-Rieman の微分方程式の複素表示、Cauchy の積分定理、Cauchy の積分公式、留数定理、一様な流れ、わき出し、二重わき出し、渦糸、写像:角を曲がる流れ、写像:平板・楕円変換(Joukowski 変換)、写像:折れ曲がり直線(Schwarz-Christoffel の公式)、対数速度による多角形内外へ写像、円定理、Blasius の定理、Lagally の定理

数値解析:2 次元差分法(流れ関数)

二次元完全流体の簡単な例:特異点に作用する力(Blasius の定理の例)、一様流中のわき出し、一様流中のわき出しと吸い込み、一様流中の円柱まわりの流れ、一様流中の楕円柱まわりの流れ・作用力・運動エネルギー(Joukowski 変換)、運動する楕円柱まわりの流体運動エネルギー(楕円座標変換)、平板をすぎる流れ(Joukowski 変換)、円柱の外に置いたわき出し、円柱の外に置いた二重わき出し、一様流中に置かれた二つの円柱に作用する相互力、写像:コ型の流路、写像:平行流路、自由流線:平面壁のスリットから出る噴流、自由流線:Borda の吹き出し口、自由流線:死水をともなう流れに垂直な平板、自由流線:平板に垂直にぶつかるジェット、二つの渦糸の運動、直交する壁に置いた渦の動き、円柱の外に置いた渦糸の運動、一様流中に置いた円柱の背後の渦対、渦列、Karman 渦列

6章 3次元完全流体

軸対称の流れ:速度ポッテンシャルの極座標表示、速度ポッテンシャルの円柱座標表示、流れ関数の極座標・円柱座標表示、軸対称流れの一般解(極座標表示)、軸対称流れの一般解(円柱座標表示)、一様な流れ、わき出し、一様なわき出し分布、二重わき出し、Kervin の球定理(速度ポッテンシャル)、Weiss の球定理(速度ポッテンシャル)、Bulter の球定理(流れ関数)、外部に特異点がある物体に作用する力、複素変換による流れ関数と流速の関係式

軸対称の流れの簡単な例:一様流中の半無限物体(わき出しによる)、一定速度で動く球、一定速度で動く球(複素変換)、一様流中の球(球定理による)、一様流中の球(二重わき出しによる)、球の外部にわき出しがある流れ、球の外部に二重わき出しがある流れ、一定速度で向かいあう2つの球の相互干渉、一定速度で平行して動く2つの球の相互干渉、回転楕円体(複素変換)、楕円体の付加質量、液中での大きい気泡の運動

7章 揚力

2次元翼:Kutta-Joukowski の定理、二次元翼に作用する揚力(写像関数を用いた)、二次元平板翼、キャンバー・翼厚を有する二次元翼(Joukowski 変換)、薄翼理論、平板翼・円弧翼・フラップの揚力特性(薄翼理論を用いた)、一様でない流れの中の翼、翼列

3次元翼:わき出しと渦度による速度分布、揚力線理論、翼が地面に及ぼす力

プロペラ:運動量理論、翼素理論

細長体:長体の横力、細長い三角翼

8章 粘性流体力学

Navier-Stokes の式:Navier-Stokes の式、渦度方程式

定常な一方向の流れ:二枚の平板間の流れ、円管内流れ、傾斜した板の上の流体層、二重円管間の流れ、楕円管内の流れ、矩形管内の流れ、回転する2円筒の中の流れ

流れ関数を使った厳密解:細い管の先から流出するジェット、二次元よどみ点、三次元よどみ点、二次元拡大縮小平面流路、回転円盤による流れ

レイノルズ数の小さい流れ:潤滑の理論、三次元軸対称の Stokes流れ、遅い一様流の中にある球のまわりの流れ、遅い一様流中の球形の液滴

レイノルズ数の大きい流れ:平板上の境界層、オリフィスからの二次元ジェット、二次元物体後方の流れ、二次元くさび形の外部流れ、斜航円柱まわりの粘性流、境界層の運動量方程式・近似解法、近似解法を用いた解析例(よどみ点、平板、円柱、楕円、翼形状)

振動境界層:振動平板による流れ、平行平板内での振動平板による流れ、自由表面を有する振動平板による流れ、平行平板内での変動圧力勾配による流れ、円管内での変動圧力勾配による流れ、振動する円柱に作用する減衰力、振動する円柱に生じる定常流

非定常な一方向の流れ:速度不連続な流れと静止流体中突然動き出した平板、静止流体中突然動き出した平板と静止平板の間の流体流れ、円管内の出発流、二平板内の出発流、円筒内静止流体で突然回転した円筒の流れ、渦糸の減衰、自由表面に力が作用したときの流れ、突然動き出した円柱まわりの粘性流れ

渦度のある三次元軸対象流れ:渦度表記の Eulerの運動方程式、旋回流を有する定常軸対称流、管内の旋回流の断面積変化による影響、外側の流速変化が渦の旋回流に及ぼす影響

地球の自転の影響:地球の自転を考慮した海表面近くの流れ、地球の自転を考慮した地面近くの大気の流れ

粘性流数値解析:渦度方程式を用いた二次元粘性流数値解析

9章 表面波

自由表面条件:三次元自由表面条件、一様流のある自由表面条件

二次元微小振幅進行波:微小振幅波の速度ポテンシャル、位相速度、粒子運動、圧力変動、波のエネルギー、群速度、エネルギー速度、表面張力

二次元波の簡単な例:表面撹乱による二次元波の伝搬、前進速度のある船の波と抵抗、前進速度のある没水二次元円柱による波、周期的に変動するわき出し強さによる二次元波、周期的に変動する二重わき出し強さによる二次元波、二次元水中翼の水面影響

三次元微小振幅波:xyz 座標、一様流、円柱座標

三次元波の簡単な例:表面撹乱による軸対称波の伝搬、船が起こす波紋、前進速度のあるわき出しによる三次元波と造波抵抗、周期的に変動するわき出し強さによる三次元波

定常波:二次元定常波、V 字断面水路の定常波、直方体タンク内の定常波、鉛直円筒タンク内の定常波、水平円筒タンクの液固有円周波数、球形タンクの液固有円周波数

着水衝撃:二次元着水衝撃(Karman の理論)、二次元着水衝撃(Wagner の理論)、二次元着水衝撃の数値シミュレーション

 

付録A 数学公式

付録B 座標変換

付録C Maximaによるベクトルとテンソル演算

付録D よく使うMaxima関数

 

 

Maxima 関連ホームページ

Maximaの公式ホームページ:http://maxima.sourceforge.net/

Maxima 普及委員会: http://www.cymric.jp/maxima/top.html

横田博史:Maxima簡易マニュアル: http://www.bekkoame.ne.jp/~ponpoko/Math/books/ManualBook.pdf

Profesional Maxima: http://www.muskmelon.jp/maxima/pro-maxima-20080303.pdf 

中川義行:Maxima入門ノート 1.2.1:http://www.eonet.ne.jp/~kyo-ju/maxima.pdf

Wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/Maxima

足立健朗:行列計算における数式処理ソフトmaximaの利用について

http://www.yo.rim.or.jp/~kenrou/maxima/maxlin.pdf#search='maxima'

Maxima による数式処理: http://cosmo.phys.hirosaki-u.ac.jp/wiki.cgi/maxima

Maxima (制御関連):http://www.rbt.his.u-fukui.ac.jp/~naniwa/pub/maxima.html

Maxima を使った微分方程式・物理演習(微分方程式演習、質点の力学演習・剛体運動演習)

                  http://www9.plala.or.jp/prac-maxima/

エッセイ:「システムを活用した知恵の伝承」:http://www.posy.co.jp/kanwa-k6-C912.htm

 

改訂歴

l        2012年 6月:本ホームページを立ち上げる。

l        2013年2月:第一回改訂 翼→揚力として、プロペラ、細長体などを充実させた。

l        2013年12月:第二回改訂 第8章 粘性流体力学を追加する。

l         2014年11月:第三回改訂「第9 章 表面波」、「第四章 Bernoulli の定理」の4.3 管内非定常流れで「管内の水撃現象」、4.6 開水路で「開水路の過渡現象(ダムの崩壊モデル)」を追加した。

l         2018年1月:第四回改訂 「2.10 質量保存の方程式 (ベクトル)」、「2.11 Euler の運動方程式 (ベクト ル)」、「2.12 物体に作用する力」、「4.7 漏洩 」、「6.2.11 楕円体 」、「B.3 直交曲線座標系への座標 変換 」、「C.3.7 ∇を使った演算 」を追加した。

l         2018年10月:第五回改訂 「7.1.8 薄翼理論(積分方程式)」、「7.1.11 二次元翼の非定常運動(Theodorsenの方法)」、「7.2.3 揚力面理論の定式化」、「7.2.4 揚力線理論(プラントルの積分方程式) 」を追加した。