「地下鉄・丸の内駅で拾った通話」 2001年7月16日 月曜日 ・ 採集  

「 蒸し暑い… 」
  気温がそれほどでもないからだろうか、空調が
 あまり効いているとも思えない淀んだ空気に満ちた
 地下鉄の駅のホームにて、ふと汗を拭うハンカチを
 落としそうになるような
「ひゃひゃひゃひゃ♪」
 
と下品な笑い声が響く。
 「 あんだぁ? 」
  と見れば、携帯を持ったデブがたてた声で。
   小汚いTシャツやジーンズがみっしりと濡れてるのは
   きっと雨よりも汗のせいだろう。ぺったりした髪型は
   間違ってもポマードやジェルとは思えない。
 「 あたら若い身で… 」
 まだ20代の半ばくらいだとは思うのだが、このテ
  の連中ってトシわかんねぇんだよな… などと思って
  はみる。が、デブは何やら愉しそうに通話中。
「 だぁ〜かぁ〜ら、ボクは今、地下だって言ってん
 じゃん♪ 繋がんないんだからさぁ、そっちから
 かけてくるのが
ジョ〜シキっしょぉ? …
 な〜んでぇ? ボクは地下にいるんだよぉ、
ちぃ〜かぁ! これからボクは地下鉄に乗る
 んだよぉぉぉぉ〜ん♪ ってアレ? モシモシ?
もっしもぉ〜しっ!、よしよし。でさぁ、
 キミがさぁ、ボクに用事があるんでっしょぉ〜?
 だのに
な〜んでボクからかけないとイケナイ
 んですかぁ〜 ? … しっりっまっせぇ〜ん♪
 そんなのボク、カンケーないもんねぇ〜♪」

 
午前10時のビジネス街の閑散とした構内に満ちる
  蒸し暑さを増すようなカン高い声は、アナウンスを
  凌ぐほどの音量で響いている。
 
 私は思った。
「きっと脳ミソも霜降りなんだろうなぁ… 」


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