「通勤電車で拾った会話・その4 」 2001年1月18日 木曜日 ・ 採集   

  細かな雨が降っているものの、道路にも屋根にも
 雪の痕跡は無しで。この3日ほどの雪のせいで溜まった
 用事を済ますべく、早めに仕事を切り上げ、いつもよりも
 2本ほど早い列車に乗る。当然、座る事は出来ないが、
 それでも色々と寄るトコロもあるしね…
 クリーニング屋でしょ? 煙草屋でしょ? スーパー
 でしょ? 酒屋でしょ? ガソリンスタンドでしょ?
   …などと思い返していると聞こえてきた。

 「でさぁ、この前、同窓会だってってたじゃん。で、
 どうだったのよぉ?」
 「あぁ、アレ? ダメ。っていうかさ、雰囲気って
 いうかタイドワルイっていうかサ、アタシとさぁ、
 キミコで「イイェェ〜イ!」ってカンジでノリノリで
 いったんだけど、なぁ〜んかシラけててさ、一応
 2次会でカラオケとかにも行ったんだけどさぁ、
 言っても「いいよ、ボキは」なぁんてやっててさ」
 「へぇ〜」
 「でサ、コシバが途中で「カミさんが待ってるから
 帰る」って帰ったんだけどサ、そしたら他の何人かの
 男連中も帰ったんだけどサ、そしたら、あぁ〜ッ!
 そいつらビリヤードやりに行ってやんの。ねぇ、マジ
 ムカつかない? っていうかこれってイジメじゃん、差別じゃん、
 なんでそんなに嫌われるのかわかんねぇっての」
 「ちょっと、それは無いよねぇ〜」
 「でしょでしょでしょ! せっかくさぁ〜、ちょっと
 美形っていうか「お、ちょいイケ?」ってのもいてサ
 アタシらもそれなりにキメて気ィつかってやってる
 ってのにさァ、いくらなんでもしょりゃねぇじゃん」
 「だよね〜」
 「ったくコシバのばァかのせいで、すっげぇムダ時間に
 なっちめぇの」
 「あ〜あ」


  私はつぅ、と視線を窓に向ける。
 夜の闇が、鏡替わりに私の背後を映してくれ、私は
 その会話の主を窺った。

 「 … 」

  コシバ君とやらに共感してから視線を本に戻した。


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