「 夕暮れの出会い  」 2000年11月19日 日曜日 ・ 採集   

  夕方。薄暗くなって風も、強く、冷たい。
 「さて、ブック・マーケットにでも行くか」
  と、家を出ると、向かいの家の庭で遊んでいた子供が
 私を指さして叫ぶ。
 「おかぁさぁ〜ん!
  あのヒトだよ! 女のかっこうしてんのぉ〜!」
 
はい !?
  私は自分の服装を見直す。
 スニーカー。黒の靴下。膝の破れたジーパン。

 チェックのシャツに
のバンダナ替わりの江戸手拭。
 
オリーブグリーンのハーフコート。かけているのは
 
ブラウンのグラス…
 
どこが女装やねんコラぁ!(怒)」
  と、一喝して、ブックマーケットまで歩く。

  輸入版のリッキー・マーティンと『タイタニック』
 のサントラを合わせても千円でお釣りがきて、
 「いやぁ〜いい買い物、拾い物やったねぇ〜」
  と、外に出れば、既にどっぷり暗くて。
 「やはり『カイジ』8冊の立ち読みしたらイカンな」
  などと、さして深くない反省をしつつ。
 「しっかし、なんやったんやろうなぁ、あのガキ」
  どこをどうしたら、私が女装になるんだ?
 こんな直球ストレートをつかまえて何を言うとんのじゃ…
 などと考えていると、冷蔵庫の牛乳が切れているのを
 思い出す。今夜はホワイトシチューを作るから、牛乳
 とチーズは欠かせないんよね〜、とコンビニに歩いて
 いくと…

  
いた。

  一目で、わかった。
 
オレンジどミニに、白のセーターを来てはいるが、
 普通のサンダルっぽい足元なのに背は私と同じくらい
 (182センチ程度)もあるわ、脚の形が堅いわ、
 なにより三つ編みにしたおさげが浮いている。
  もしかしたら… ひょっとすると… 女性か? と
 思ったのも遠目だったから。車のライトに照らされた
 その顔は、ニューハーフというよりも。
 (なるほど、ガタイは良く似てるわな…)
  いや、関心してる場合じゃないんだけど。
 (牛乳は雪印かな?)
  そうでもなくって。

 「こんばんわ」
  と、混乱してるうちに声をかけている自分。

  ちらりと見て、黙って通り過ぎてゆく「彼女」。

  体が震えたのは夜の風の強さや冷たさでなく、
  多分「彼女」の…


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