「理由」  街角で出会った人・その1 2000年8月2日 水曜日   

  
名古屋駅から職場のある伏見まで、ちょうど地下鉄
 一駅分。「健康のために…」ってのもあるけれど、
 朝の満員電車と、
たった一区間で200円という運賃
 に嫌気がさして、テレテレ会社まで歩いてく。
  忙しい朝という事もあって同じ時間、同じ道を
 歩いていると次第に「お約束」のようなモノも出来てくるワケで…
 
  その「お姉さん」の存在は、ワリと早くから気が
 ついていた。どうやら職場も近いらしく、かなりの
 距離を同じ方向、同じ道で歩く事となる。
  それだけの人間ならば別に他にもいくらでもいる
 のだが、私にとってはこの「お姉さん」の存在が気に
 なる「理由」がある。
 (イロイロなイミで)一度見たら 忘れられない容姿・
 イデタチをしてるとか、初恋の人に似ている、とか、
 ではない。では「何が?」というと、
 
「私に勝負を挑んでくる」
  なのよ。

  それがいつ始まったのかは私は知らない。
 ただ、気がついた時には「お姉さん」は俄然早足になり、
 わざわざ時折 振り返っては必ず私の歩くコースを塞ぎ、
 邪魔するように歩いていくんだけどね、でもねぇ…
  私の身長は
181センチ
 「お姉さん」の身長は約
160センチ
  ってんじゃ、私が普通に歩いてるだけで十分に
 早足の「お姉さん」などハナから勝負にならない。

  んで。

 抜かされると「お姉さん」はイキリたって追い抜き
 かえすが、しばらくするとまた私が(結果的に)抜き
 返す… という繰り返しが延々と毎日毎日続く。
 「そんなに私に抜かれるのがイヤなら、
  いっそず〜っと走ってりゃいいじゃねぇか」
  と思うのだが、どうやら「お姉さん」はそこまでは
 したくはないらしい。足元も踵の高いパンプスだし。
 「私をストーカーか何かと勘違いしてやしないか?」
  とも思ったのだが、だったらわざわざ抜き返した上で
 確認までする必要は無い筈だし。
 ( ま、何かしら目標があった方が励みにはなるか… )

  ひょっとすると、どこぞの企業の競歩部のヒトかも
 しんないし、ひょっとすると先祖から血で血を洗う因縁
 があるかもしれないし、
「憧れの彼氏に想いが伝わる白魔術♪」
 なのかもしれない。いくつかの「理由」は思いつくが、
「ちぃ!」
「なに、コイツ!」
「っざけんな!」
「ちくしょう!」

 とまで言われなければならない「理由」は未だ不明、である。


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