USA−P in 
 ・ 2004/03/16〜17


 目覚めたのはまたも朝5時。
ハルシオン飲んでも飲まなくてもこの時間の目覚めって何なんだろう? と悩みつつ煙草に火
をつけTVをつける。天気予報では今日は曇り時々雪、ってらしいが… と、カーテンを開けて
みるとこの数日の天候と違って鈍く曇った空。さらにチャンネルをかえるともぅ御馴染みの『Girls
gone Wild』のCMがやっているが流石に見飽きたのでニュースに戻す。いつの間にか吸い終えて
たので煙草をもぅ一服。昨日の就寝前にあらかた旅行鞄の準備は終えていたので後はもぅする事
は殆ど残っていない。最後に出来るだけ小銭を使っておこう、紙幣しか両替してくれねぇし… と、
妻を起こさぬように着替えて部屋を出て、フロアの自販機でジンジャーエールを買おうとしたら
¢1硬貨を受け付けてくれず悲しい気分で小銭を持って部屋に戻り、また煙草に火をつける。

 最後の日の朝、ホテルの窓からの景色

 結局、$500近く持って来たのに一番の出費は昨日の昼飯で、次がWM20パーカー、って
有様だからまだ$300近く残っているんだが、こと買い物ではブランド品とかに興味が無いし
食い物は土地代、敷地代のかかりそうな店以外だったら$20もあれば美味しいモノが食べ
られるんじゃぁ、そうそう使う事なんて無い上にホテルの傍に¢99ショップがあったらねぇ?
 まぁ¢99ショップは想定外だったが、こうなるだろうなぁ… とは思っていた。
いたんだけど、【お金はあるけど使わない】のと【お金が無くて使えない】ってのでは同じ散財
金額であっても気分は全然違うものだし、セコセコしたくなかったからこの1年半以上の間、節約
と我慢と不義理を重ねてお金を貯めてきたんだが、こうやって財布を見ていてもドル紙幣のつくり
の安っぽさもあってか妙な… レート換算して約3万ちょっと持ってるって気分でもなくて
「やっぱ自分はロウワーなんだろうなぁ… 」
 と『すし膳』の事を思い出したりとボンヤリする。

 でも、そんな私にとってもNYにいる事はとても気楽だった。
緊張も警戒心もあったけど決してそれ自体は不愉快ではなく、日々の生活を思えばずっと気楽で
解放され、素直で自然な気分でいられたから、こうして今日離れる事がなんとなくまだ実感が湧い
てこない。楽しかったのなら別れの寂しさをより感じていたのだろうが、気楽だったから切実な感情
にまではならないでいる。その分、この旅を終えてから暫くしてフラッシュバックのようにこの旅の
日々を思い出して身悶えする事になりそうだが… と、考え事をしていると妻が起きたので、ちょっと
ダベってから最後の朝食の買出しにと出かける事にした。

 ホテルの近所のバーガー屋やベーグル屋はまだ閉まっていたが、傍にある赤、緑、白のイタリアン
カラーのネオンサインのサンドイッチ屋はもぅ開店しているようなので入ってみる事にする。昼間の
ランチタイムなら奥のコーナーにてグラム売りの惣菜が並べられているようだが流石に早朝でお客
もまばらな状態ではまだ空だったが、そのかわりにサンドイッチがケースにドッサリと積まれている
中から妻はツナサラダとチキンカツ、私はチキンカツに牛の舌のような大きさのチーズの乗ったサンド
を注文する。
「ちょっと待ってろや。今、暖めるからな」
 と電子レンジに入れる店員も含めてイタリアンカラーの外装なのに店員が皆アジア系なのは何故
なんだろう? と思う間に出来上がり、会計を済ませるが二人合わせて$10ちょっとって価格と
サンドイッチの重さ、そしてレジの女の子の
「Thank You.Have a Nice Day!」
 の一言に笑顔になって店を出てホテルに戻り、一緒に買った牛乳を飲みつつの朝食。
美味いんだが、朝はあんまり食欲が無い私はそのボリュームに圧倒され、食っても食っても食っても
まだあるサンドに手こずるものの、妻は2個を平らげて満腹そうな姿に笑えてくる。

 身支度を終え、ホテルのロビーに行くと結構な人の数。
これからSD観戦にと次の地へ行く人にしろ日本に帰る人にしろ、一緒のチェックアウトらしい。
「ねぇ夫、あそこ、エレベーター前にホテルの人がいつもいるところだけどさぁ」
「?」
「あの人の席の上の所、あのプレートに、『係員にホテルキーか身分証明書を見せる事』って書いて
あったんだねぇ」
「あ… ホントだ」
「私らはいっぺんも呼び止められなかったけどね… 」
「向こうから見て能天気な観光客に見えたんじゃぁないの?(笑) そうか、案内係ってだけじゃぁ
なかったんだな… 」
 色々こうして見落としている事ってあるんだろうなぁ… それだけ浮かれていたんだろうなぁ… と、
思っているとバスが到着したようで乗り込む事に。

 コリアン・タウンがスラムのような危険な場所だったのを見て行かずによかったとホッとしたり、本当
にどこまで行っても『Walking Tall』のポスターが貼ってある事に感心したり、ベン・スティーラーの
新作『スタスキー&ハッチ』のデカイ広告に嬉しくなったりしながら、JFK空港に向かうバスの窓の
向こうの景色を、次にいつ来れるか解らないから兎に角見ておこうと思うが、さして渋滞に巻き込ま
れる事もなくスムーズに着いてしまって惜しい気分になる。
「お二人は御夫婦なのね、うふふふふ、旅行は楽しかったかしら?うふふふふ」
 と愛想のいいお婆ちゃまの旅券窓口と違って検査のトコロは厳重で
「はい、コート脱いでね。ポケットに何も入ってないね? あるんなら出す。ベルトも外す。あと、
靴も脱いでここに置け」
 って矢継ぎ早に小娘に言われて呆れつつ、ゲートを越えてアタフタと身につけながら思わず
「アウシュビッツかここは」
 と言ったら他のお客さんも苦笑いをしていたが、日本での検査なんて本当に目じゃぁない。機内
積み込みの荷物に鍵をかけないように、と言われていたがそれも納得の厳しさだったが、だったら
入国の際のルーズさっ〜か甘さって何なんだろう? と思わなくもない。
 出発までの30分、お土産買いの為に免税店を駆けずり回ってやっと必要分を買い揃え終えて
ふとロビーの窓の外を見れば、JFK空港は雪に包まれていた。
「あぁ、このままもっと雪が降って、もぅ一泊ってなんねぇかなぁ… 」
 と思うものの予定通りに飛行機への搭乗がスタートしたのにちょっとガッカリしつつ私も乗り込んだ。
これから14時間のフライトってだけでなく、着いてから家まで3時間以上かかる… というだけでなく
「またいつか来れる」  
 って根拠は無いけどそう思えるから惜別の情は湧かなかったが、それでもやはり淋しい気持ちは
したけれど、それはいつの日かの『次』にとっておこう… いつの日にかのNYへの旅へ… と思い
ながらシートのベルトを締めた。


END


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