USA−P in 大阪 2
 ・ エピローグ。


 昨夜は結局ホテル近くの焼き鳥屋にしたがこれが個人的には正解だった。天神橋筋商店街が思って
いたよりもずっと暗かったのもあるが、談春の落語での多幸感でウッカリ飲み過ぎても大丈夫なように
と本当は隣りの寿司屋にするつもりだったのだが外から全く店内が見えないピンサロみたいな寿司屋
は夜ライトがつけられるとそれはもぅまんまピンサロ。前はそういう店だったのをそのまま使ってんじゃ
ねぇのかコレ? 一人で談春の落語がああではなかったらだったら面白がって入っているかもしれん
けど、今日はもぅサックリと食べて飲んで… ってしたい時向きの店じゃぁない、ってんで特に何が売り
でもない焼き鳥屋にしたんだが、出てくる品のどれも酒飲み向けの味付けで酒が進む進む。気が付く
と2時間近く妻と今日の独演会や大阪旅行について話し、食べ、飲んでいて。

 会社の休みは火曜日までとってある。今日も繁昌亭やワッハ上方やそれ以外でも様々な芸人さん達
が様々な興行を行っている。ホテルの手配はしていないが、インターネットカフェにでも飛び込むなり
すれば済む話だし、さて今日帰るか? それとも今日もぅ一日遊ぶか? ってのは今朝の気分で決め
ようという事になって迎えた朝。とりあえずホテルの朝食を食べに降りて行ってみたのだが、そこで出さ
れた朝飯は野良犬もソッポを向くような臭いで、それでも無理矢理トレイを渡され勝手に給仕が盛った
山盛りご飯と味噌汁があるんで出された物は残せない私としては適当に食べられそうなオカズを皿に
とって食べてみるがこの大阪旅行で色々食べてきた中で、ではなく、今までの人生での様々な旅先の
ホテルで食べた朝食の中でも断トツに不味いもので朝から気分が落ち込む。ドブのような臭いのする
味噌汁はギブアップしてしまったし、ご飯もオカズを流し込む為のものでしかなく。
「これなら外での朝飯の方が良かったねぇ… 」
「昨日のホテルは朝食無しでこのホテルと一緒の値段だったんだもんなぁ… こんな朝食だと解ってた
んなら、繁昌亭近くに朝食無しで押さえてたよなぁ… 」
 と苦笑い。

 朝食の不味さを除けば寝る為の施設としては悪くはなかったものの、しかしあまりに不味かったのも
あって、何となくそそくさとホテルを出て、とりあえず私が妻との大阪旅行って事で行きたかった法善寺
横丁へと向かう事にする。
 やっぱりなんばウォークで迷いつつも辿り着いたのは法善寺、でいいのか?

朝は静かな雰囲気でございました。

 なんか法善寺の阿弥陀様よりも向かいの水掛け不動様の方がえらい人気なんですが…

人気者の不動様。苔でみっしりとしたお姿でございました。

 数年前に旧中座の火事でこの辺りの店もかなりの被害を受けたそうですが、それ以前から店舗の
老朽化もあって去年グルメビルの如き法善寺 MEOUTO BLDとなり、お目当ての法善寺夫婦善哉
開くのにちょっと時間があるので周辺を散歩する事にしたのだが…

法善寺参道。

 法善寺参道、横丁の雰囲気は気に入ったものの花月跡や一寸法師大明神等があるという浮世小路

小路どころか隙間ですな。

 があまりにもチンケ、しょーもない処でただ昔の芸人さんの写真やら何やらがケースの中にあり提灯
や暖簾はかかってはいるものの所詮数メートルの路地裏道といった按配な上に一寸法師大明神なぞ
国際秘宝館やらであるインチキ系の、住吉とも特に関わりの無いものでもぅなんかゲンナリ。この小路
を出たら道頓堀通りで日曜日の今日はいい天気なのもあって色々な年代の人達で賑わっている様な
だけに余計にこのチンケさが虚しく、それ程の期待はしていなかったんだけどズレてしまったというか、
気分的になんか冷めていく感じがして。

 それでもまぁここまで来たんだからと戻って入ってみる夫婦善哉、綺麗な店内にキチンと着物を着た
店員さんと店としては悪くないが一人前800円って事からか店内の客は私ら夫婦だけで。
「お写真を撮られるんやったら言うてくださいね」
 と言われるも、まぁねぇ… 善哉を食いに来て二人で記念写真ってのもねぇ… っと待つ事暫しで出て
きた夫婦善哉。

美味しゅうございました。

 とろとろに甘い善哉。柔らかい丸餅に大粒の小豆、っと美味しいしこれが善哉って解り易いもので。
端休めの昆布も悪くはないが、お椀にしろお茶にしろ器があまりにも普通っかダイソー的でなんだか
あんまり感じが出ない。メニューはこの善哉のみ、ってのだからもちっと何か甘味処としての雰囲気なり
があってもいいもんだが、綺麗過ぎる店内では特にこれという情緒も無く… 店内にあったパンフには
この夫婦善哉の起源はこうある。

 今を遡ること、百十年以上前。法善寺境内に、ちょっと変わった善哉屋が開店します。
文楽の太夫、竹本琴太夫こと「木文字(きもんじ)重兵衛」という人がはじめた「お福」という名のお店で
す。何が変わっていたかというと、一人前なのに二杯のお椀に分けて善哉が出てきたからです。
「へぇー、こら変わっとる。なんで二つや」。
 聞かれると、実際にお店を切り盛りしていた重兵衛の妻「こと」と娘「かめ」はニッコリ笑って、
「おおきに。めおとでんね」と答えたといいます。
 実際は、二つのお椀に分けた方がたくさん入っているように見えると考えたからなのですが、これが
大当たり。その後の「夫婦善哉」へと繋がっていったのです。


 とあるように、洒落たものであった筈。
一見、一杯分を二つのお碗で出す事で量を多く見せるというのは利発なようで洗物は二倍になるんだ
から利ってよりは理の遊び、洒落だった筈で、それが甘味処よりも高い値段を取っておいて、確かに
善哉そのものの品質は悪くはないけれど、さて? っとなるとね。なんか、もうちょっと遊び心があって
もいいと思うのだが、織田作之助の原作のページや舞台の写真はあるだけってのもなぁ… と、ここも
そそくさと食べ終えて出る事にして。

「どうする? 今日?」
「帰ろうか… 」
「そうだねぇ」
 甘い物を食べた後だから今度は塩っ気って事で隣りの点天でやはり私ら二人以外客のいない中で
餃子を食べてやはりそそくさと法善寺 MEOUTO BLDを出て、そういう気分になっていた。
「でも妻、もぅ行ってみたいトコとか無いの?」
「そりゃまぁいくつか興味のあるトコが無いわけじゃないけど、でもまぁ… 今回はもぅこれでいいかな?
って感じ? 行ってない所へは行ったし、たこ焼きとか美味しい物も食べたし、繁昌亭とかNGKとかも
楽しかったし」
「まぁ次の機会ん時でもいいよね… まぁ何時また来るかは解らんけどさ」
「東京に行くよかは手軽っか身近で安上がりだしねぃ」
 ちょっと繁昌亭の昼席や、明日の天神祭りなど後ろ髪を引かれる気分は無くもない。でも、なんかもぅ
今回の大阪旅行は終わったって気分になっていて。もっといたい、って思わないわけではないが昨日
までの気分やらがズレでしまったって感じがしている中で、この街を歩いていくのが楽しいものになる
とは思い難いし、折角のいい思い出、楽しい経験がまだ余韻として躯の内にあるうちにこの地を離れた
方が良いような… 今回来た時が去ろうとしている、そんな気分になっていて。



 次に来る時が何時なのか、どんな目的で来るのかは解らない。それが一人旅になるのか、それとも
今回のように妻と共になのかそれとも友人らとのものになるのかも解らない。が、また来る事は変わら
ないだろう。
「また大阪に来るぞ!」
 って拳を固めるような意志のあるものではない。特に理由や根拠があるわけではないが、何れ機会
が… その時が来たのならばフラリとこの街に来ている自分を想像するのはとても簡単で。確かに今回
もまた、余所者である、ってのに加えて図体がデカイわ沖縄旅行ん時に購入したオールドタイプで今時
たむらけんじぐらいしかしてないようなサングラスをかけてたせいか、結構地元の人にジロジロどころか
あからさまに顔を覗き込まれる事も少なくなかったけれど、それが好奇心のものであって名古屋のよう
にその後で嘲笑、罵倒をするでもなく、あぁこういう人もいるんだとほっとかれる感覚ってのに慣れれば
さほど大阪に苦手意識を持つ事も無く… まぁうざったいっちゃぁうざったいんですが、今回の旅行では
腹を立てる程の事とも思えなかったし。そりゃぁもちっとディープなトコに潜り込んだらまた別でしょうけど
そん時はそん時、それはそれで楽しかろうと不愉快だろうとそれはそれ、って出来る自分になっている
といいなぁ… っか、次がいつにせよまた色々な場所に行きたいよねぇ…

 っと、帰りの電車に乗る前に最後の大阪の味とばかりに新大阪で蓬莱の豚まんを食しながらボンヤリ
と思っていた。食べ応えがありながらも味はアッサリしているそれは今回の旅行で知った大阪の味、
文化の1つのようで大阪最後の食べ物をこれにして良かったし、それを食べ終えた時、気分はもぅ大垣
へと向けられていた。



大阪旅行記 2・完


大阪 2(0707) TOP >

Jourey TOP>

Index >