USA−P in 大阪 2
・ 7月21日 − 中篇


○ 新世界。

 予兆と言うかキッカケはホテルを出て繁昌亭に向かって地下鉄の切符売り場だった。
私は大阪での移動は地下鉄と決めていて、3つ以上行く場所があるのなら迷わず一日乗車券を購入
する。いちいち切符を購入する手間もあるし安上がりになるしで前回の大阪旅行の時にも大変便利で
助かったからで。
 ホテル出発前に大まかに今日は「繁昌亭」「新世界?」「ホテル」「繁昌亭」っと決めてあったので今日
も迷わず私は一日乗車券を購入したのだが、妻が何故か南森町までの切符を購入していて。
「どうしたの? 一日乗車券じゃないの?」
「え? だって今日はこの方が安いんでしょ?」
「はぁ?」
 寝起きで朝食前、って事もあるが妻は寝惚けていると言うより私の方が勘違いをしていると思ってる
ような口ぶりにコチンとくるものがあるが私もウッカリ勘違いしているやもしれぬとガイドブックの地下鉄
路線図を見るも、ホテル出発前の予定通りならば

「日本橋」→「南森町」→「動物園前」→「谷町四丁目」→「南森町」→「谷町四丁目」

 となるので230円、230円、230円、200円、200円、っと合計1090円、一日乗車券の850円と
比べれば240円も高い。確かに昨日は毎週金曜日とノーマイカーデー(20日)のみ発売されるノー
マイカーフリーチケット(600円)を観光客だけどコッソリ購入して大助かりしたけど、今日の一日乗車券
にしたってお得な上に便利なのに… っと説明しても上手く妻に伝わらない。どうにかこうにかやっと妻
が気が付いて
「御免、勘違いしていた!」
 と言う頃には南森町に到着をしていて… ってのがありまして。

 うどん屋での朝食と繁昌亭の朝席が楽しかったからこのコチンとした気分が解消されたと思っていた
んだが、どうもそうではなくまだ残っていたのに私が気が付いたのは新世界に着いてから、だった。

今回は上らなかった通天閣。ま、ビリケンさん以外は、ねぇ…

 前回はこの界隈を歩いておらず当然串カツも食べていない妻に店を選んでもらう事とするも、昼時と
あって混んでいる店は滅茶苦茶混んでいる一方で閑古鳥も鳴き疲れ果てたような不入りっぷりって差
が露骨なのは大阪ならではのような気もしますよな… 昨日の鶴橋にしろ難波や道頓堀界隈にせよ、
入ってるトコとアカントコの差は本当に露骨ですよなぁ… ってな中からのチョイスもアレなんで一応、
この界隈の食べ物屋が並んでいる辺りをぐるりと周ってみて妻が選んだのは多分地元のお爺さん達
だけでカウンターが埋まっているトコで。
 確かに悪くなさげだし串カツ程度で行列して待つのもカッタルいんだけど、どうも私的にこの店、お爺
さん達しかいない事での静かな雰囲気とメニューを見るに食べ物屋ではなく串カツもある立ち飲み屋
のような店でさて? って気がしなくもないがまぁここは妻が選んだ店って事で… っと、一旦そういう
引っ掛かりが出来ると指先のささくれの如く叫ぶような痛みではないが… とハマったせいか、どうにも
妻とテンポがズレてきて、それがまた余計に引っ掛かってきて。
 如何にも余所者がこういう店で腰を落ち着けてダラダラってのも、隣りの爺さん達と交流するつもりも
無い私からするとちょっと違う感じなので小瓶のビール一本と串カツ数本で切り上げてお好み焼きなり
何か別の店にするかね? ここから四天王寺までの移動距離とかを考えるとホテルの時間まであんま
り余裕も無いようだし… と思っていたのだが、妻は腰を据えてマグロの山かけだの串カツ以外を注文
してる様に
「何か違うくね?」
 と思ったりもして。そうすると今朝の事を思い出したりもして…

○ 四天王寺

 そんな昼食っか小瓶一本とは言え昼酒の後での四天王寺までの道のり、お互いに不慣れでお互い
に地図を見誤ったりするのに加えてお天気が良くなってきて結構な日差しが降り注ぎ、また丁度それ
がだらだらと続く上り坂げトコなだけに私のささくれ気分が妻にも伝わり、妻は妻でのささくれがあった
ようでそれが私に伝わって結構ギスギスしてきて。
「イカンよな」と思うし「拙いよな」とも思うんだけどもそういう一旦ハマっちゃうとナカナカにその気分か
ら抜けようとするも巧くいかない。
「これじゃぁNY旅行ん時と変わらんじゃん… 」
 とゲンナリもするが、どうにも自分のズレをミスとして謝るってのもなんか癪に障る。と言ってこのまま
ってのも拙いし… まぁNYん時と比べると疲れているわけでもないし腰や膝が痛んでもいないし何より
ここは日本で言葉も通じるんだし。お互い、昨日は結構歩いたワリに朝が早かったのもあったんだし、
結構自分の言い掛かりの部分もあるだろ? と理性的な思考と感情的な苛立ちが浮かんだり沈んだり
しながら辿り着いた四天王寺、

結構な人手でございました。

 この西門、何かのお祭りのような屋台と人出を見た時、なんか気持ちが落ち着いてきて。雰囲気の
雑多さと言うか猥雑さが澱んでいた自分を解すような、緩ませるような。とは言え、そない一気に気分
が変わるもんでもなく
「別に夫が無理して付き合う必要は無いよ。嫌なら… 」
 と私に言う妻のトーンも、
「あ、そんな心配しないで。私とて古い建築物やブツ(仏像の事。byみうらじゅん)見るの好きだし」
 と妻に答える私のトーンもトゲトゲっかザリザリとした感触はするけれども、神社仏閣に来たワリにゃ
荘厳とか厳粛って気分でもなく、のほほんとした気分にこの西門からさせてくれて。。

 元々はこの四天王寺、天台だかのお寺だったんだけどある時から聖徳太子様を御本尊だかにして
仏教を広めた太子様の下ならば仏教徒皆カモン・エブリバデー!ってなったと記憶しているのだが早速
西門前に並んでいる雲水達の袈裟やら装束が皆違ったり弘法大師様云々って書かれた屋台がある
かと思えば仏教に何の関係も無い古着市やら道具市があって、そこに参拝するお客さんやら隣接する
学校(四天王寺学園?)の生徒さんらが学校が終わってかワラワラと出てきて、って賑わいを見ている
と更に緩んだ気持ちになるが、そのまま回廊へと進んでみるに飛鳥時代ってよりは平安風の回廊ん中
の整然とした砂利の庭部分の中央に金堂と五重塔が建っている風景にもぅ馬鹿負けした気分に。
 金堂の壁画がお釈迦様の生涯になっていて、回廊の途中にあるのは龍神の井戸が、講堂に入ると
正面に掛け軸が並んでおりセンターを勤める聖徳太子のお姿のサイドメンバーは弘法、親鸞、最澄、
一遍、日蓮さん達が揃った仏教オールスターズ公演を囲む壁の壁画は三蔵法師物語。しかも御神籤
が売っていたので買ってみて見ると

 このみくじにあう人は
 病気が一日一日と」
 よくなって行くように
 悩みはだんだんと解け
 喜びは来る
 常に処と人を選び
  誠心を以ってすれば
 神仏の御加護
       自ら垂れ給う


 とあった上に

 ○旅行 よし

 って一言、断言されたらもぅねぇ… なんかギスギスカリカリしてんのが嫌になっちゃいましたよ。

 回廊から外に出れば不動明王、阿弥陀に薬師に五智って如来様方を奉ったお堂があって、そん中で
も大黒天なんか一人で大黒・毘沙門・弁財天の顔を持つ三面大黒天だそうだし、四国八十八箇所の
お砂を集めたお砂場で… と境内っか敷地内にみっしりと色々な建物がある。何処かのお堂からは
聴いた事の無いお念仏の声が聴こえてくる。屋台を冷やかす人達の年齢も実に様々で。
 そういう様を見ていると
「仏教のテーマパークや〜」
 と彦摩呂ちっくに言ってみて、夫婦で笑っていた。

 旅行者の私にはこれだけの施設を敷地内に詰め込む合理性はあっても機能性や利便性の為では
ない大らかさと、人々にとってそれぞれの信心の場所になっているけれど高野山のような堅苦しさや
物々しい感じでもなく、比叡山のように取り澄まして驕った感じがする場所でもなく、色々な宗派が1つ
の場所にあってもそれはそれでアリ、「他所は余所、此処は戸々」って鷹揚さが実に大阪らしいなぁ…
と思ったりもして。
 奈良や京都のような場所とは違う、様々な人が様々な事情や都合や商売で行き交う街だからこその
1つの形、場所なんじゃぁないのかなぁ… まぁ最近ではやや固定化されてる部分もあるんだろうけど
人が群がる東京と比べると、大阪ってのは人が集まる街なんじゃぁないのかな? っと思いながら境内
を後にする事にした。

○ 天王寺 〜 谷町四丁目。

 妻に素直な気持ちで謝れた。妻も謝ってくれた。
 日差しが再び陰り、駅までの道のりは下り坂でさてホテルに… っとその前に、
「どうせ天王寺駅まで戻るのなら、道頓堀さんに教えてもらったたこ焼き屋に行きたい!」
「せっかくの機会だから行きましょう!」
 っとテレテレと歩いて辿り着いた『あべの たこやき やまちゃん』本店、店頭だけで座るトコの無い
店舗でそれなら!っとすぐ傍にある2号店に行ってみると、こちらは奥にテーブル席のある店で流石に
歩き疲れが出てきた私らも一安心。まだ今夜の事もあるのでビールは我慢して(笑)、たこ焼きにネギ
大盛りと明石焼きを注文して待つ事に。
 本店も次から次へと人が買って行ったがこちらも3時前って半端な時間のワリにお客さんで賑ってる
が、熱い店内で熱い焼き物をしている店員の兄さん達の明るい接客や対応にこちらも気分がいい。
 まず出てきたたこ焼き、やはりタコも大事なのだが粉と出汁の感じが重要のようで、甘めのソースと
ネギの相性が良くて。続いて出てきた明石焼き、小さなまな板のような木皿に並べられたそれを
「これ、出汁ですけど熱っいんで気をつけてくださいね〜」
 って店員さんの言葉どおりチンチンに熱い徳利から注いだ出し汁に箸で持つだけで崩れそうなふわ
ふわの明石焼きを浸して食べると美味いのなんの。地元のタコ焼き屋で売ってる明石焼きってのが
単に柔らかいタコ焼きでしかなく馬鹿にしていたんですけど、アレは偽物ですな。出し汁が無くて何で
明石焼きなのかと。いやこれだと出し汁につけないまま食べた後で出し汁につけて、ってのもアリだし
このお出汁の上品な事… これが醤油臭かったら折角の卵でふわふわの風味が台無しですもんね…
っと夫婦揃って満足し店を出る。
「昨日の会津屋といい、次郎さんには本当、いい店を教えてもらったなぁ…」
「帰ったらお礼のメールしなきゃね」
 とニコニコした気分で荷物を預けた動物園前までブラブラと歩く。駅でうっかりエスカレーターを上って
フェスティバルゲートに行ってしまって焦ったが、いくら撤去決定で殆どのテナントもアトラクションも閉鎖
になっているとは言ってもまだ営業しているテナントはある筈なのにロクにライトもつけられておらず、
お客のいない廃墟のような状態で慌てて引き返すが… すぐ近くにあるスパワールドでしたか? 24
時間営業の温泉センターみたいな施設の賑わいと比べると、ここでもまたアカンものには容赦の無い
大阪という街のシビアさを感じましたな… これが田舎、私の棲む大垣なら人々は行く場所が無いから
アカン店舗でも文句垂れながらでもそれなりにお客が集まってしまうんですよな…

 地下鉄の出口から出た谷町四丁目、オフィス街なのか閑散とした雰囲気で。昨夜泊まったホテルの
真ん前にズラリと無料風俗案内所や風俗店、食べ物屋に飲み屋が並んでいたのと比べると街灯すら
あまり無い静かな場所で、ホテルの近くに辛うじて焼き鳥屋と寿司屋があるくらいで。乗り換え無しで
繁昌亭に行けて一番近くのホテルで一番安いトコ、って事でここにしたのだがグループ内でもここが
安いのはこの環境のせいなんだろうなぁ… まぁ寝るだけだからいいけれど、今晩の独演会の後で
一杯ってするのはピンサロのような外装の寿司屋か、特に何かウリがあるでもなさげな焼き鳥屋より
は天神近辺で探すべきかなぁ… と悩みつつもシャワーを浴びたらホッとしてしまってアラームに起こ
される始末。やっぱ疲れてたのね… っと昨夜買っておいたレッドブルを妻と半分づつ飲み、暗くなり
つつある外へと出た。さぁ、今回の大阪旅行のメイン、繁昌亭で立川談春の独演会だ。

○ 天神橋筋商店街。

 この独演会後の午後9時から『たまよねリターンズ』という笑福亭たま氏らによる夜席があるのでその
準備も考えればいくら場内での飲食禁止で清掃、準備の時間があまりかからないと言っても午後8時
頃、遅くても最大で8時半と思うとちょっと小腹ふさぎをしておいた方がいいがさて、しっかり食うには
ちょっとたこ焼き&明石焼きが残っているしねぇ… っと再び到着した天神商店街入り口で、朝席の
帰りから行列が途切れなかったコロッケ屋がもぅ夕方だというのに全く同じように途切れぬお客の行列
なのと揚げ物のいい香りに誘われて私がおごってビーフカツ、妻がコロッケを購入。これだけでは
ちょっと寂しいが… っと振り返るに向かいではいつお客が来てもすぐ出せれるようにと鉄板の上に
ズラリと一銭焼きが待機しているのに誰一人として買っていかないのと妻が一銭焼きを食べた事が
無いって事なので2つ購入して天満宮の石段に腰掛けて一気に食うが私のビーフカツ、堅いなんて
もんじゃなくて今時こんな肉にあたるのも珍しい、もぅ何十年ぶり!?ってくらいのブツで味は悪くない
んだけど
「ふへぇ〜 コロッケうま〜♪」
 って妻が羨ましいがおごって先に並んでる人達が誰も買わなかったビーフカツをわざわざ買った自分
に対する戒めとしてガシガシと食う(涙)。一銭焼きはまぁ一枚100円ってブツなのを思えば上等なん
じゃぁないんでしょうか? っとお腹も適度に膨れたので指定席券なんであんまり関係無いんだけど
気分として目の前の繁昌亭の開場を待つ行列に並ぶ事とする。

(あ、ちなみにこのコロッケ屋、中村屋さんと言いましてこの道50年のお店だそうな。
この旅行記を書く為に色々と調べ物をしていると既に大阪の名物コロッケ屋のようですが、コロッケ
1個60円って値段もさる事ながら目の前で揚げられた熱々の物は美味いと妻も申しておりました。
 ただビーフカツは止めとくのが吉。メンチカツならオッケーでしょうかね?)



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