USA−P in 沖縄
 ・ エピローグ 11月28日 (火)



 朝10時半にチェックアウト、までは自由時間。朝食バイキングは6時半からって事でジャストに行き
最後の沖縄をノンビリと散歩して終了する事にした。ホテル最上階から見下ろす風景はゴチャつき、
無理無理に建てられたコンクリート群はさながら熱海のようでもあり、どこか南国のようでもあり… 
って南国だったよなぁここは(笑)。

朝の国際通り・その1 朝の国際通り・その2。 

 出発前に観たTVの天気予報では今日は降水確率10%以下の快晴、の筈だがどんよりと重く曇った
空と冷ややかな湿度ある空気はいつ小雨が降り出してもおかしかなくて。牧志駅、そして沖縄県庁へ
と続く道にしてはあまりにも静かで生気の無く。7時過ぎと言えばそろそろ学生さんやら出勤の人が
いても不思議ではないのだが、地元の御老人がのんびり散歩なされているくらいで、やはりここは人が
生活する場所と言うよりは職場なんだろうかねぇ… っと思ったりもして。

 実は旅行前、今回のツアーには入ってない首里城をこの時間で見学しようか? と妻と話していた
ものだったが
「どうする? タクシー飛ばせば中は見れないだろうけど行けない場所じゃないけど?」
 と妻に振ってみたものの
「いいや。わざわざタクシー使ってまで観たいとは思わない」
 って事で散歩になったのだが、そう言った妻の気分は私も解らないわけではなくて。

 つらつらと昨日は行かなかった路地の奥へと進んでゆく。ホテルの隣りは学校でこの辺りの学生さん
がそろそろ… と思うが人の気配も特に無くて。



 潰れた映画館にかけられたままの看板もすっかり色褪せていて。通る道すがらにある廃屋や電柱の
カラースプレーの落書きが「一泊¥2500! ホテル●●」だの「コンパニオンさん大募集」等とあるが
一体どれくらいの広告効果があるのかよく解らんが多分、沖縄では効果があるのだろう。



 というポスターにあった



 わざわざ赤い文字にしてある東京とは一体どれだけの遠さなのだろうか。



 桜坂と名付けられていても桜の無い狭い坂道にみっしりとある建物の横にある、朽ちるままに修繕が
される事も無く半ばゴミ置き場になっていた神社を抜けて辿り着く公園で一息がてら一服する事にする
と、この旅でもずっと嫌われていた筈の猫が何故か寄ってきて甘えてくる。

この子には毛だらけにされました(笑) ずっと体を摺り寄せてくるものの、抱きかかえられるのは嫌がってた子。

 妻もまた猫まみれになってるのを見て、なんとなく自分の中で沖縄への旅が終わった気がした。



 今度また沖縄に来たいか? と自分に問うに積極的な拒否はしないが消極的な肯定をする気にも
なれない。海は綺麗だし空も青いし緑は色濃くて… ってのは充分に解ったが、それ以上の何かが
あったか? と言えば個人的には殆ど無いのは結局沖縄特有の文化だ何だと言われていても私が
生まれた後で定着したものや建築&整備されたものが少なくない上に、詰めというか締めがヌルくて
緩い人達にはどうにも馴染めないと思う自分がいて。

 例えばホテルは一見綺麗で設備も整っているように見えて実は掃除がキッチリやってなかったり、
アメニチィの並べの揃え方がイマイチだったり。ビジネスホテルでもこういうのはマニュアルとしてあれ
ば済んでいる筈のものがそうはなっていない。最初に部屋に入った時にゴミが残ってたり、今朝使った
歯磨き粉のチューブが帰ってきても残っていたりと細部の手落ちがそこかしこにあるのは何故なのか。

 平然と観光地ボッタクリ価格をやるのはいい。その差が凄かったのも当然だと思うが、それが簡単に
比較出来るようになってるような店の並び方ってどうなのよ? とか、辺戸岬で小腹ふさぎにと買った
ソーゼージが冷たかったのは現地仕様かもしれないから除くにしても、今帰仁城跡で妻が沖縄のお好
み焼き・ヒラヤーチを購入しようとした時に店員が焼いている途中で何も言わずに中座して暫く帰って
来なかった後でノンビリと何事も無く戻ってきたり、美ら水族館でサングラスを買った時も店員らが実に
のたくさしてたり、っとか、大半の店にしろその店員にしろ商売をやるという気持ちや気迫が薄くダラダラ
とやられているのはどうにもリズムが合わない。

 ハコモノは所詮デティールの差異があるともハコモノにしか過ぎないし、そこに乗っかっているだけの
商売も展開にも特に魅力を感じれないのはバブル期の頃に乱立しその大半が潰れてしまったテーマ
パーク同様、企画者の顔や思惑は見えてもそれ以上のモノはないしなっていないハリボテのハコモノ
だらけを観て喜べるような素直な人間でもないし歳でもなし。

 世界観としては好きじゃぁないがしかし商売として徹底して隙の無い【世界】を構築しているTDL等を
貶める気にはなれないし、世界観は好きでも隙だらけだったUSJを褒める気にはならない、ってのと
同じで、沖縄を観光地として評価出来る部分もあるのは確かだが、リゾート地として再度訪れようという
気にさせる程のものが私には無かった。一度観て、それで充分。本当に、そう思う。

 首里城など見ていない場所も他にも色々あるが、この性分に合わない人々の緩さを、私には苦手・
大敵とも言える紫外線の多さ・気温と湿度の高さを押して、自分の身銭と時間を作ってまで観たいと
切望するだけの土地か? と言えば、私には消極的な肯定の気分にはどうしてもなれない。今回の
ように懸賞に当たってのタダだとしても、それならば今までに自分達が行きたい観たいと思って出かけ
た地の方がよほど魅力に思えて。

 贅沢を言っていると思う。傲慢だとも思う。が、もぅこの一度で、充分だと思う。

 嫌な思いをしたわけではない。いい人達もいたし、一生懸命だった人達もいた。素直に美しい、凄い
と思える場所も、人もあった。でも、それは全て点であって、沖縄という面でのものじゃぁない。今、こう
して膝の上でゴロゴロと甘える猫と同じように、それらはたまたま出会えた… こちらから出かけての
上での偶然であってそれ以上でも以下でもないように。

 ツアーとして観た沖縄は隙の多い、緩い土地だった。だからこそ好きな人もいるだろう。南国のような
このルーズさでありながらも日本であるという点に安心出来る人もいるだろう。が、私にはそれならば
いっそ異国の南国の方がいい。なまじ同じ日本だと思うとこの細かい隙の多さと緩さが滓のように自分
の中での苛立ちとなってきてしまう。諦めきる事もできないかわりに心からノンビリとも出来ない土地へ
休暇に訪れる気にはなれない… 勿論それは積極的な拒否ではないが、あえてしたくはない事ならば
私はあえてしたいとはどうしても思えない。

 ツアーではなく一人で来たのならばまた違った出会いも風景もあったのかもしれないが…

 しかし、それならば自分が行ってみたい・見てみたいが行っていない場所や一度ならずとも何度でも
訪れたいと願った場所への再訪の方が私にはずっと魅力的に思えて…



 … と思っていた私にこの猫達は沖縄の旅の別れの挨拶のように思えて。
「確かにいい思いもしたよな… うん。」
 膝の上の猫がブシュッとクシャミをして、妻も私も笑ってしまった。




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