「どうなるんでしょうね?」 − 2003・07・13


『シネマ坊主』にて松本氏が最近のアクション映画の格闘シーンがクンフー
による振り付け主流になってしまっている現状を
「全然リアルじゃない」
 と、評してたが、私はそこまで真面目でも映画に対して真摯でもないから
「まぁしょうがないかなぁ… 」
 と思ってはいる。


 映画はリアルよりもリアリティの方が大切だと思うんよね、当たり前ですが。
問題なのは香港組に頼って、どの映画の格闘も似たり寄ったりの振り付け
になっているのと、似たような「画」の撮り方しか出来ていない現状じゃぁない
かなぁ… と思うんですよ。

 手での捌き、体の交し、通し、脚運び、と、「型」でいかなきゃぁならんのだが、
こと格闘という状態の表現でのクンフーは有効なモノの1つかもしれないが、
あくまでも「1つ」であって究極でもなければ絶対でも無い。

 例えば『マトリクス』でキアヌがクンフーでも構わないんだけどトリニティやスミス
やツインズまでもがクンフーである必然は無いんじゃない? それこそ格闘術は
一杯あって、無手に限ってもボクシングでも柔術でもレスリングでも空手でも、
それこそ何だってアリの筈なんだけど、極めがどれもこれもクンフーってのは正直
退屈ですがな。あんだけバカスカ武器も武術もDL出来る世界なのに。

 本場の香港映画の武侠映画の場合なら主人公と適役との使う拳法を違わさせ
たり、極めを「手技」と「脚技」に分けてみたりと一応「違い」を出そうとしているのに
対して最近観た映画ではそこらのキャラの色付けってのは希薄に見えてしまった
のも事実なんよね。
 ま、『マトリクス』を例にして出すなら

 ネオが手技と捌きの少林系。
 トリニティは脚技(連脚系なんかいいかと)。
 モーフィアスはどしっりとした体術の南派。
 スミスはマーシャルアーツ。

 ってしてみるだけでもだいぶ画面の印象は違う筈なんじゃぁないかなぁ…
 と、思うのだが、こういう感覚はアジアと欧米とでは若干違うのかもしれない、
と思ったのがデビッド・フィンチャーの『ファイトクラブ』のDVD映像特典の1つ。


 メイキングにて、格闘シーンのネタ出しと思しき場面でブラッド・ピットがごくごく
当たり前にアマレス式の胴タックルからのバック取りにテイクダウン、ポジション
取りやらをしてみせたかと思えばフットワークからのジャブなども充分ボクシング
的に見える映像で私はかなり驚いたんだけど、実際の映画ではそういうテクニック
は全部廃した原始的っか野蛮な殴り合いにしている。

 勿論、コレは映画における「リアリティ」の為なんだけど、ボクシングやアマレスの
ムーブというのは欧米人にとっては手垢がつき過ぎてファンタジーにはならんから
ナノかなぁ… と、思わざるを得なかったんですよ。

 でもなぁ… だけどなぁ… 


 今時、
「●●(←武術名)が強い!」
 というお馬鹿さんはもぅそんなにいないように
「○○(←人名)が強い!」
 って言う人もそういないと思う。まぁ、
「新日本最強ーッ!」
「Noahだけはガチ」
 とか言ってる馬鹿はこの際無視します。
ガチの世界が当たり前のように観れる御時世になった幸福と不幸の1つで、いくら
PRIDEやUFCの王者とても
「技術」
「スタミナ」
「ハート」
「才能」
 が当然としても、でも結局ある程度のレベルの高さになっちゃうともぅ
「体重」
「ルール」
「コンディション」
 による結果であって、王者イコール世界最強ではなく、この3つの条件が違えば
また違う結果が出るし常勝はあり得ない、という現実を皆が知ってる御時世ゆえ…

 だから、思うんですよ。

 今のハリウッドの格闘ってまだ「前近代から現代へと移行しつつあるプロレス」
みたいなんで物足りない… って。展開やムーブなどのお約束っぷりが見え過ぎて
「あ〜、これ、前、どっかで観た」
 とか
「誰某もやってたっけ」
 とか
「ここでこう動くんでしょ? で、こうカット割りになって… 」
 ってのはもぅ飽きてきてるんですよ、私。



 私としてはそろそろ
「ワイヤーに頼らないアスリートのパフォーマンス」
 ってのか
「その作品内における「ガチ」さの順位」
 ってのが欲しいなぁ… と思うんですね。
振り付けやトレーニングが大変なのは解っても、それだけで映画が出来るワケでも
無いんだし、もっと役者の基本としての「演技」や「演出」「効果」こそを大事にして
もらいたいなぁ… っと。


 解りにくいかもしれませんが、例えばジャッキーの素晴らしさは格闘そのものでなく、
その格闘をどう生かすか? ってトコだと思うんですよ。やってる事は勿論、凄いんだ
けど、でも常に日常を置いてのアイディア出しとかクライマックスに向けてのボリューム
の置き方とかペース配分とか、ね。
 そこからもぅ一歩踏み込んでのスピード感やアクロバティックさだけでないリアリティ
ってのを出しこれんもんなのかなぁ… それが出来て初めて香港組がハリウッドって
トコに居場所を作った事になるし、それから出来るものを観たいなぁ…

 と、思うのですがさて、どうなるんでしょうね?


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