・『アメリ』 - 2002/11/09
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雑誌などに載っていたスクリーンショットの色彩の鮮やかさがずっと気になってはいたものの、
同じく雑誌の紹介記事を読んだりTVCM等を観ると
「ん〜… こじゃれた「おフランス映画」かなぁ… 」
と、あまりいい印象を持てなかった『アメリ』だったが、
「妻もたまには女の子映画が観たいんじゃぁ!」
って唐突にレンタルしてきたので付き合って観る事にしたのだが…
いやぁ驚きましたね、ホント。
面白いじゃん、コレ!
と、思わず声を大にしてしまうくらいに、妻と共に観ていて笑わさせてもらいましたね、コレ。
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映像はもぅ「お綺麗〜」なんだけど、単に色彩だけではなく、カットの刻み方の緩急のつけ方や
アングルの大胆さを巧く生かす、うるさすぎないCGワークといい、昨今のハリウッドのCG頼み
に飽きた目にも新鮮なのは色調の整え方のお陰なんだろう。
ストーリーにしてもフランス流、エスプリの効いた… 甘いだけでなくビターで黒くもある、まるで
チョコレートのようなテイストがあって、
「どぉ〜せビジュアルオンリーの恋愛女の子映画っしょ」
とかナメてると大損であります。
特にフランス語の音感とでも申しましょうか… これが英語だとチョイとタルくなりそうだし日本語
だともぅあからさまに嘘くさい。韓国語や広東語でもギリシャ語やイタリア語、ましてやドイツ語で
は駄目なんすよね、コレ…
それがまた音楽、そして効果音とマッチングしてるんだわ、ホントに!
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まぁしかし…
出来れば20代の半ばまでに観るべき映画かもしれません。
どうしても私ら夫婦のように30代も半ばになると、アメリらではなくドゥ・ムーランの他の従業員
の方に感情移入しやすくなってるもんねぇ… とは思ったけども、観終わって悪い気分にはなり
ませなんだし、お話としてももぅアレでいいんじゃぁないかと。
すっごく説明不足ですが、なにせ『アメリ』、お話としては小さいし、メッセージやテーゼとかは
特に無いしで、そこらが松っちゃんが『シネマ坊主』にて
「ちょっと幸せな気分になれた、と。で、もぅそれでええやないですか」
と評したトコロなんでしょうけども、それでも何だろぅ… 個人的に「一度観れば済む映画」、って
んじゃぁ無いんですよ。単に「内容」「映像」ってんではなく、トータルのパッケージとしての『アメリ』
って言えばいいんだろうか?
いやぁ、困った。
DVD、欲しくなるじゃぁないですか。
「いつ観るんだろう?」
と思うと、例えば『シザーハンズ』や『グリンチ』のようにクリスマス、とか季節感が特に無いから
難しい。
「でも、眼の栄養になるよね」
とは妻だが私もそう思う。
買えない訳でないのだが、そろそろ… DVDプレイヤーを購入してからまだ1年経ってないのに
収納の心配があるもんでねぇ… と、思案中。
▼ 追記(2004-07-15)
デビット・フィンチャーが『エイリアン3』の事を、ジェームズ・キャメロンが『アビス』に
ついて聞かれたくないように、きっと『エイリアン4』について聞かれたくないんだろうなぁ、
ジャン=ピエール・ジュネって… って冗談は兎も角として。
彼のフィルモグラフィの中でこの作品は後々までも言われるような映画だと思うんですよ。
『デリカテッセン』は好きじゃぁなかったんですが、実はこの映画でやってる事ってそんなに違い
は無いんですよ。むしろ、より監督の性癖が出ているんだけど、主人公を女の子にした事によって、
かえって整理がついたり無茶出来た事もあるんじゃぁないのかな? と思うんですね。
そこら辺は井筒監督が
「こんなん監督のオナニー映画。大嫌い」
と言うのも解らないではないんですけどね… 『アメリ』って物凄く男性視点の映画ですし…
でも、監督の妄想や嗜好や性癖によって加工されまくった閉じた小さな世界の中で、ちっとも大きく
ない小さな御話を、あれだけの密度と計算によって構築して出来た物が綺麗だったらいいんじゃぁ
ない? って私は思うんですけどね。ただの変態嗜好趣味だけの映画だったら… いや、本当
に変態的映画だとは思うんですが… あんなに観客がつくとも思えないんですよ。
見世物としての楽しさがあるし、その楽しさの範囲と規模の中で逸脱しないで徹底してみせた
んだからそれでいいんじゃぁないのかなぁ。リュック・ベッソンみたいに破綻しまくった男尊女卑で
ペド野郎のなんかより、ずっと好きですよ、私は。
(小さいお話で男と女の事をやらせたらフランス映画って一番かも。政治ならイギリスだけど)