『吸血鬼ハンターD』 − 2001/12/16


 川尻監督最新作品、という事で期待しつつも
「でも… ひょっとした『魔界都市 新宿』みたいな駄作だったらどうしよう?」
 という不安があったのも事実だったがオープニングでそんなのは軽く吹き
飛んでしまった。圧倒的な描写は緻密でありながらもスピードに満ち、かと
言って一気一気に突き進むのでもなく緩急の間の絶妙なバランス、そして光
と闇だけではないコントラストの美しさ… に、ただただ集中するばかり。

 原作はDシリーズ3作目の『魔界行』だが、あえて原作通りにしていない部分
も含めて実に愉しめた一作でありましたな。
 まぁね… 不満、ってんじゃないんですが、Dの声が屋良氏ではなく塩沢兼人
であってほしかったが…

 こればっかりはどうしようも無いしねぃ。


 そう、クリエイターが自分の作品に愛着を持ったり創造を楽しむことは決して
悪い事では無いと思うがどこかで熱情の一方での冷静さを忘れ、酔ってしまう
ようになっては駄目だと思うのだ。
 CGの多用という点で『メトロポリス』と比較してもえれば解るが『D』には間違い
無く制作者の愉しみと愛情と冷静さが同居している。ただのお耽美にもならず、
かといってオタクにもならず。決して短いとは言えない原作を90分程度でキッチリ
過不足無く魅せて見せる。川尻監督を雑誌などで「映像職人」と書いたりしてるが、
まさに「職人」。

 いい作品ですよ、コレ。

 メッセージやテーゼ、といったものは特にございませんが、全ての映画がメッセージ
なりを持ってなければ駄目なわけではないのだし。職人の技量の素晴らしさを堪能
するにはうってつけの一本、だと思いますよ。


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