『ベッカムに恋して』 − 2004/02/29


「この映画を観てみたい」
 と言った時、妻の返事は
散々だった。
「こんなタイトルの映画なんか… 」
「サッカーよく知らないし」
「夫、よくこんなの観ようと思うよね… 」
 とボロクソに言われたものの、それでも気になっていたのはこの映画がイギリス映画
であり、イギリス社会におけるインド人社会についてのカルチャーギャップコメディだと
いう事を知っていたんでそんなに毛嫌いする必要は無いんじゃぁないのかぁ?… と、
思っていたが、勘なんて外れるもんだし、でも『アメリ』のようなコトもあるし… と、迷い
つつのレンタルだったが結果から行けば妻も
「面白かった!」
 と言うくらいにバランスもとれていた上に、興味深くて楽しい映画だった。


 単にサッカー映画っかスポーツ、スポ根映画でも無ければ(何せフットボールのルール
を知らなくても全然オッケーで、言ってしまえば『フィールド・オブ・ドリームス』における野球
の試合シーンと同じ意味、位置づけだと思う)、人種や宗教の違いを嘆く文化映画でも無い
し(コーチがアイリッシュである事の意味があまり無かったように、それぞれの登場人物の
抱える問題は一見社会的に見えて実に個人的なものが大半だし)、ガールズ系(アメリカ
だとチアーズ系)でも無く、観終えてなんとも不思議な… それでいて明るい気分になれる
映画だと思ったんよね…


 とにかく音楽の使い方や画面の綺麗さ… 特にクライマックスのインド式結婚式のカラフル
さは見事!… やテンポの良さもある。俳優陣も初めて観る人ばかりだが、主人公ジェスを
はじめとして、ステロな役付けであっても嫌味にならないのは、この映画が単純に社会、文化、
制度に対する不満を訴え、叫ぶものではないからだ。

 そう、原題の
『BEND IT LIKE, BECKHAM』(「ベッカムのように曲げる」)ってのが現わして
いるように、FKにゴールの前に立ちはだかる『壁』をイギリスとインドの文化(しかし彼女は
何派なんだろう?)や女という「性」に例え、それを真っ直ぐではなく登場人物らそれぞれの
「努力」
 と
「成長」
 と
「受容」
 そして
「笑い」
 で越えていくからだと思う。
個人的には成長、変化、受容していくのはあくまで個人、ってトコがイギリス的なような気がして
余計に面白かったんですわ…


 やや、構成などに甘い部分があるのと、基本的にはこの映画は女性向けの映画だと思う
(コレと比べるといかに『アメリ』が男性的映画かよく解る)んで、こういう評価にしていますが
邦題で敬遠してるのは結構勿体無い映画、だと思いますよ〜


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