『8mile』  − 2004/04/10


 何と言うか… 若者の閉塞感とか鬱屈感はよく解るんだけど、この映画で
出された「アメリカって社会の閉塞性」って日本人に理解出来るとは思えない。

 本当に貧乏な人は貧乏で、救いようのないドン底が常にある… 住む家の
アテがあろうが無かろうが強制立ち退きをくらう事実が日常に、すぐ隣に、
ひょっとして自分の家も… って感覚ってがある層を舞台にしてるんだけど、
これは日本で想像出来る? 私は出来ないですよ。
 だってホームレスじゃないけど長屋より下のトレイラーハウス暮らしってのを
どう日本での状況から想像しろと言うのか。何のかんのと言って
「趣味か事故でしか餓死があり得ない」
 って豊かな日本からどう想像すればいいのか?


 鬱屈や閉塞感や暴力衝動と自己解放とか、かつてはバンドが、バンドこそが
この層を吸収していたと思う。でも、バンドをやる為の楽器を買う金すら無いから
するラップ、ってのだから攻撃的にもなるし、ラップ・バトルが基本的に他人か自分
の否定にしかならない、ってのも観ていて納得してしまうくらいに荒廃した今に限り
なく近いデトロイトを舞台にした映画… そういやぁアメリカで日本人が一番殺される
のもデトロイトだったっけなぁ… 個人的には単なるハッピーエンドではなく、苦さを
残した終わり方と、エミネムのあの暴力的な眼の良さは好評価でありますな。

 … まぁ、字幕がイマイチでしたが。
 っか、ハショり過ぎ。ライムの韻もリズムも無いし。


映像的にも音楽的にも無駄が殆ど無いし、よく出来た映画だと思う。でも、
クライマックスでの居直りの自己否定が肯定になって支持される、って構造は
若者だから許される事だろうなぁ… 勿論、それを聴かせるだけの才能が絶対
条件、大前提だからこの「映画」の中では成立しているとは思う。

 でも、ノれんのよ私…

居直りの自己否定が肯定となって、自己解放が… ってのを素直に支持するには
それまでに示された状況の深刻さと閉塞感を超える程か? と言うと、どうもそこ
までは… って思ったんですよ。でも、この映画の場合、エミネムの自伝も兼ねてる
事を含めてこれが着陸地点としては一番マシだとは思うんですけどね…



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