・『フレディvs.ジェイソン』 − 2004/04/21
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80年代のスプラッタ映画の2大シリーズ『13日の金曜日』のジェイソンと『エルム街の悪夢』
のフレッド・クルーガーのスターの競演、実は当時から予定はあったものの権利関係もさる事
ながら、そもそも夢の世界の住人フレディと現実世界の亡者ジェイソンとをどう競わせ、戦わせ
るのか? って難問ゆえに何度も頓挫した企画だったが、それぞれのシリーズだけではなく、
スプラッタ映画自体の人気凋落もあって長〜い間お蔵入りしていたが… 世の中って解らん
もんで、『スクリーム』等の似非スラッシャー映画のヒットによって起きた80年代スプラッターの
リバイバルの中の企画モノの1つだった『ジェイソンX』が「未来の宇宙でジェイソン君大暴れ〜」
って馬鹿映画だったのにヒットしてしまったんで実現してしまうんだよね… ってのは相変わらず
長い前書きだ赦せ。
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とにかくこの映画、この2シリーズが好きだった人が脚本を書き、監督をしたのがよく解る映画
で冒頭、それぞれの殺戮者の生い立ち等を過去シリーズの再現で5分くらいで説明して纏めて
みせるのは手腕だけじゃぁないんだよね。特にジェイソンのなんか
「あれ? これ3作目だった筈だよなぁ… でもこんな綺麗な画面なワケないけど… 」
と思ったくらいに「らしい」画面作りをしていてマニヤにはそれでもぅニヤニヤもんなのは決して
ネーチャンの乳のせいじゃないぞ(謎)。
そして両者が交差していって進む物語は人間は全部狂言廻し的で、
「さぁ、思う存分戦うがよい!」
と鹿賀主宰ばりの展開に持ち込むのにそれほど無理を感じさせない物語をテンポよくどんどん
進めていくのは「お見事!」と思う。
コレ、2大主役の殺戮競争だったら収拾つかなかっただろうから、それこそ東映怪獣映画の
ノリにしちゃってるけど、力のジェイソン、技のフレディってコントラストがついているから正解だと
思う… と、(ショッカー)映画とのして、企画物としての出来を語ると褒めるしか無いが…
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しかし、
かつてアホみたいにスラッシャー、ゴア、スプラッタ映画を観ていた私にとっては実に微妙でね…
ジェイソンって「見た目は大人、中身は子供!」の逆コナン君的亡者だからまだいいんだけど、
フレディは中年男ゆえの陰湿さとか執念深さとウィットに富んだエンターテイナーの筈だったんだ
けど怪獣決戦映画になってる時点で両者の持ち味が均一化されてて特出すべき差異、ってのに
なってなかったのが残念に思う点・その1。
技をスピードに置き換えざるを得なかったにしても、もう少し… 両者対決前での殺し比べでの
『味(テイスト)』が欲しかったんだがそれを邪魔したのは結局はさして重要でなかった登場人物
の扱い、っ〜かエピソードのせい、なんだよね… ってのが残念に思う点・その2。
ハッキリ言えばどっちのシリーズも人間は獲物なんよね。
エピソードは獲物をよりよく見せ(後でブッ殺され)る為の前戯と言うかトリミングっかペッティング
以上には要らないし、まして直接対峙するのは2大スターなんだから精々狂言廻しに留めといて
進行役はOPナレーションがフレディだったんだから彼に任せても悪くなかったんじゃぁないの?
実際、『エルム街の悪夢』のTVシリーズの基本形ってそうだったんだし… って2点がねぇ…
ってのは私の趣味だよ、あくまでもね。
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ともあれ退屈はしませんでしたし、一応はどちらのシリーズも3くらい? まで観てたらより楽し
める、ってくらいにしてあるんで未見の人にも安心なお気楽スクリーム系映画ですよ〜
でも、コレで気に入ってそれぞれのシリーズを観よう! って人がもしいたら御注意をば。
だってね…
この『フレディvs.ジェイソン』1作で、それぞれのシリーズ全部が作れるくらいに低予算映画だし、
今観ると結構カッタルイ映画だし。
ダークさは強いんですが80年代スプラッター映画って裏返しの道徳教育映画(未成年の飲酒
や喫煙は駄目。セックスもよくない、とか。だからブチ殺される)ですし、特殊効果はもぅ時代に
よる技術の進歩以前に、そもそも予算のケタが違うからねぇ…
とは言え、どっちも捨て難い『味』だとは思いますけどね。