・『Art of Action: Martial Arts in Motion Picture (2002)』 - Region 1


 Studio: Sony Pictures
 DVD Release Date: December 31, 2002
 Run Time: 96 minutes

 Aspect Ratio: Full Frame - 1.33

 Available Audio Tracks:
 English - Dolby Digtial 2.0

 Available Subtitle: English, French, Spanish,
 Portuguese, Chinese, Korean, Thai

 DVD Features:
 ・Trailers (6)

 
 
コレ、「Martial Arts」じゃなくて「Kung Fu」じゃん。以上。

  …ってだけではアレなんで、興味のある方だけ以下の駄文にお付き合い下さいませ。
 
 ・ 一応既に『アート・オブ・アクション マーシャル・アーツ・フィルムの変遷』と日本版も出てる
 のは知っていて、マーシャルアーツってより武術映画の歴史を辿るドキュメンタリーって事で
 興味はあったんだけどTV局製作ではないソニー・ピクチャーズ製ドキュメンタリー系のブツ
 とあってはソニー・ピクチャーズ関連がメインになる事は解りきっているので何となく購入する
 気にならないでいたんですが、US版の$9.99ならばまぁそんなに惜しい値段でも無いか…
 っと他の映画DVD購入の際の数合わせにと今更ながら購入してみた、ってブツでして。
  まぁ私のように小学生の頃にジャッキー・チェンブームがあってその前からのブルース・リー
 による香港製カンフー映画が映画館でもTVででも溢れまくってた世代だから興味を持った、
 ってのはあるんですけどね。
  あ、ちなみに私はジャッキーよりリー・リン・チェイの動きに惚れてたんですが映画本編が
 あまりにもツマラナイんでいつも残念だったもんで香港映画そのものから一頃離れておりま
 したなぁ… という回想はさておき、

 ・何故に、どうして全く解らない進行役サミュエル・L・ジャクソンが様々な映像や関係者らの
 インタビューを織り交ぜながら武術映画の歴史を語ってゆくというものでサモ・ハンやドニー・
 イェン等の俳優・女優だけでなく様々な監督やジョン・キャラダインにスティーブン・セガール
 や、いつ頃の収録か解らないんだけどまだ若い頃のジャッキー・チェンのインタビュー映像
 を使用しての本編、紹介される1930年代の活劇映画等、濃いファンの方にもちょっと珍しい
 映像が使われているんじゃぁないかと思うんで、それらを観るって点では楽しいんですが…
  あ、Amazon.co.jpの商品の詳細にシルヴェスター・スタローンの名前がありますが『アラン・
 スミシー・フィルム (1998)』のメイキングから引っ張ってきただけですんで特にスタローンが
 語るという訳ではありませんので。

  本編、たらたらと何か他事をしながら観るには悪くないんですが、あくまでアメリカ人の脚本
 家が書いた脚本に、中国人らの証言で付け加えられたデティールが乗っている状態なんで、
 見ていて「?」って思う部分が少なくないんですよ。
  例えば武術映画の源流を弾圧を受けて地下に潜った少林寺の武術師範らが京劇に技術
 を盛り込む事で密かに武術を伝承させるようにし、その京劇を元にしたのが中国映画で、
 だから独自の美意識と武術が同居する独自のスタイルとなった、ってのはお話としては面白
 く思えるし全く関連性は無い事も無いんだろうけど歴史的に見てそれが正しいかね? と
 なったら『中華武術 (This Is Kung Fu (1983))』等を観てるといささか乱暴に過ぎるように私
 は思えるんですけど。本編ではだからこそ京劇学校では虐待さながらの過酷な勉強になる、
 と『七小福 (1989)』からわざわざそういうシーンを引っ張ってきたりもするんですけど、それも
 含めて引っかかるんですよな。

  また香港映画の革命児としてツイ・ハークやジェット・リー等、これが製作された当時に存命
 の人達で本編で取り上げられているにも関わらずインタビューが無い人が多かったり、あく
 までも中国武術に限ってのにしたかったのか副題に「Marshall Arts」とあっても千葉真一も
 志穂美悦子も出てなかったり、何度か途中で出る多分『白髪魔女傳 (1993)』の衣装はワダ・
 エミだし、監督のアン・リーが台湾人であるのに台湾の事は一切触れられていない、とか、
 妙に政治を所々で挟むワリに中国への言及は一切無かったり(文革時代とかさぁ…)、とか、
 歴史物系っかドキュメンタリーとしてはかなり物足りないんですが、それよりも一番個人的に
 は引っかかったと言うか嫌ぁな気分になったのがアメリカ中華思想的な
 「まぁアメリカがあったからこそ中国映画が出来て、じゃんじゃんパクらせたから洗練されて、
 人材も資金も教育もしてやったから発展して、香港の人材だけでなくマーケットまで込みで
 香港返還後にもハリウッドが導いてやってやったから世界に知られるようになった」
  って言ってるとしか見れなかったのは… まぁ私の見方が穿ち過ぎなんでしょうけども…

  確かにそういう一面はあるし全く無関係って事は無いんだけど、しかしそんな事を言ったら
 そもそも映画が作られたのはアメリカでしたっけ? アメリカ映画にしたって色々な国の映画
 からの影響を受けて発展し、それがまた世界にフィードバックされて戻って… ってのじゃぁ
 ないんでしょうか。
  そしてそれは映画だけでなく「Kung Fu(功夫)」だか「Martial Arts(武術(wu shu))」も何事
 によらず、そうやって様々な要素を取り入れて発展していったんじゃぁないんでしょうかね…
  勿論、時勢の変還による流行・廃りで失われるものもあるし残るものもあって、それらを単
 純に現在の情況によって優劣や正否を問うものでもないように…

  … って私は思うんで、どうもこの作品のような偏向からすると「Art of Action」という題名も
 「Martial Arts in Motion Picture」って副題もふさわしくいとはとても思えず、せめて副題くらい
 は「Kung Fu of Motion Picture」にした方が本編にはふさわしいんじゃぁないんですかねぇ?

 ・まぁそれ以前に
データ的に意図的なのか単なるミスなのかは解らないんですが誤りが多くて 中国に返還されて活気と自由を失ってしまった香港映画界からアメリカが人材を救ってやり
 チャンスと金とマーケットを与えたからこそ出来たと本編で何度も何度もクドく取り上げる
 『グリーン・デスティニー (臥虎蔵龍(2000))』が実際には中国、香港、台湾、米国との合作で
 すがな、とか、香港返還後にも生きる武術映画ってカット集ん中に『方世玉 (1992)』等のよう
 に返還前の作品が混じっていたりと例に挙げる事例に別に上げ足取りのつもりは無くとも
 ツッコミがいくつも浮かんじゃうくらい乱暴なんですよ、このまとめ方って。そりゃぁ整理して
 体系化するのも1つのまとめ方だとは思うんですが、それが「中国人の顔を立ててやりつつ
 もその実はアメリカを軸に据える」ってのだと矢張りズレてしまうんじゃぁないんでしょうか。
  … で、そのズレを無理からまとめようとするから更にズレたり多少はこのテのジャンルを
 齧ってる私からすると「?」になってしまうんじゃぁないんでしょうかね… っと、物足りないの
 に加えての部分もあって結構退屈な視聴でありましたわ。

  ショウ・ブラザースが黒澤から学んだ、とか初めて知った事や兎に角色々な作品の映像が
 観られるってのはいいかとは思うんですが、トータルとしては「帯に短し襷に長し」ですかね。

 ・… って事はさておき、このDVDソフトについて。

  画質はまぁ普通。
 本編で使われる様々な作品の映像素材がてんでバラバラなのはまぁいいんですが、インタ
 ビュー素材やサミュエル・L・ジャクソンの語り等、素材単位でややピントが甘い感じのモノも
 混在しますが「まぁ普通」でいいんじゃぁないかと。音質も同様に特に酷いものでもなし、まし
 てTVスタイルのドキュメンタリー系にそない豪奢な仕様も必要無いんでまぁ普通、でいいん
 じゃないかと。

 ・特典は『The One』等、本編に縁のある出演者らの作品の予告編が収録されているだけで
 Outtakes等は一切無し、もしいれば… ですけど、興味がある方はレンタル視聴でいいん
 じゃぁないんでしょうか。個人的には$9.99でもちょっと微妙なブツだと思いましたわ…



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