Studio: Warner Home Video 　Theatrical Release Date: 　June 24th, 2005 (limited) 　DVD Release Date: November 29, 2005 　Run Time: 80 minutes 　Aspect Ratio: Widescreen - 1.85:1 　Available Subtitles:English, French, Spanish 　Available Audio Tracks: 　English, Spanish (Dolby Digital 5.1) 　Special Features: 　・ OF MEN AND PENGUINS (54 min) 　・ National Geographics's Crittercam : 　　EMPEROR PENGUINS (24 min) 　・ Classic Looney Tunes Cartoon 　 "8 BALL BUNNY" (7 min) 　・ Theatrical Trailer (2 min)

　　以前、『La Marche de l'Empereur - Edition Collector 2 DVD (2005)』を観て、撮影の大変
　さは解るものの結局監督の自己顕示欲丸出しっぷりに嫌気がさしたものですが、なんとそん
　な作品が２００６年アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞、ってのを知った時には
　「アメ公ってバカなんじゃねぇ？　擬人化した【お話】と【ドキュメンタリー】とは別物なのに…」
　　と思ったものですが、どうもそうではないようで米版はフランス版とは別物らしい…　っという
　情報をネットのあちこちで拾い、それを掲示板のネタで書いてみたところキングコングニー氏
　が購入され鑑賞報告をなさっていただいたのを読んだらグッと興味が沸いてオーダーしてた
　一品、でございます。んで、届いたブツを観てみたんですけど…　

　いやぁ別物ですわ、コレ。

　　まず画質が違う。
　パッと観、フランス版と違ってやや発色に落ちる印象を受けたＵＳ版でしたがよく観ればコン
　ピューターによる彩色と色彩強調をしてたフランス版からより自然の素材に戻した、って感じ
　と言えばいいでしょうか。その分、空気感とかがより出ていますし、処理によってザラついた
　印象のあった画面もフィルムの質感の活きたスッキリした印象になってます。

　　次に画面が違う。
　冒頭からフランス版には無い風景のショット等のカットが追加挿入されていますが、それが
　最初だけではありませんで、細かい編集がなされていて再見してる感じがあまりしません。
　　また細かい事ですがＯＰでのスタッフ名の表示の仕方は一緒なのですがエフェクト効果を
　小さく、表示自体も早めにしているので画面の邪魔になりません。これって結構重要かも。
　　ＥＤロールもフランス版と違い、右側にメイキングっか撮影の様子などを流す事によって
　この皇帝ペンギンの生態を追った人々の苦労が偲ばれる…　って仕様になってます。

　　さらに音楽が違う。
　フランス版のＢＧＭを残した場面もありますが、全般的にボリュームを下げて奥に引っ込めた
　ものとなっています。そして、かなりの場面でAlex WurmanによるＵＳ版オリジナルのオーケ
　ストラのスコアに差し替えられていますが、これが決して五月蝿いものではなく、いい意味で
　耳に残らない、それでいてオケゆえに柔らかく感情に沿ってくれてなお自己主張し過ぎない
　いいスコアになってまして、これが非常に心地良いですよ。

　　フランス版が好きな人には悪いんですけど、私にはどうもあのシンセのＢＧＭとわざと拙い
　歌い方をしたボーカルは画面の迫力に負けているように思えてダメだったんで、こういう変更
　は素直に嬉しかったですよ。

　　そしてナレーションが違う。
　オリジナルの擬人化した親子モノローグは全面廃止、かわりにナショナルジオグラフィックス
　協力＆監修による生物学的なナレーション、解説になっています。さながら神様のような
　モーガン･フリーマンの語り口は『Blue Planet (1999)』でのデビッド･アッテンボローのような
　頻度、テンションと違って非常に穏やかで感情的にならずに、淡々と語りかけつつもユーモア
　と詩情も時折混ぜて…　ってしてくれるんですよ。これがまたスコアとマッチングしていて実に
　落ち着いて観られるんで私的にはこの変更が一番好印象を持ったですよ。

　　これならば、アカデミー賞のドキュメンタリー部門を受賞してもおかしかないです。ペンギン
　の擬人化やお話の映画にしてしまった事等に不満をもった人が望んでいたバージョンは正に
　コレでしょうて。

　　残念ながら日本版ＤＶＤはフランス版をベースにしてますがこのバージョンを出してはくれん
　でしょうかのぅ…　ホント、ただの音声の変更だけではないんですし…　別物として、このオス
　カー受賞作品をリリースしてくれないものでしょうかねぇ…



　　ただまぁ…

　　本来の私は
　「映画はあくまでオリジナルに忠実に、最低限且つ高品質のローカライゼーションのみ！」
　　って思ってまして。
　そういう私からすると、ここまで編集をなされたモノを支持するのはどうなんだろう？　って
　思わなくもないんですよ。それこそ、私には噴飯モノだった監督の自分語り＆自己顕示欲
　満載のモノこそがオリジナルなんですから、本来ならばアチラを支持すべきなんでしょうが…
　　しかし、
　同素材の『Blue Planet (1999)』と『Deep Blue - Entdecke das Geheimnis der Ozeane (2003)
　が別物になったように『La Marche de l'Empereur - Edition Collector 2 DVD (2005)』と本作
　は独立した、別物だと思うんですよ。【動物を使ったお話】と【ドキュメンタリー】という違いが
　ある以上、後はもぅ個人の好みで…　ってなるんじゃぁないのかなぁ…　っとな。




　・という私の感想はさておき、ＤＶＤソフトとしましては…

　「OF MEN AND PENGUINS」は製作ドキュメンタリー、メイキングなんですがフランス版の
　「Documentaire Luc Jacquet "Antartic Printemps Express"」が監督の撮影苦労自慢大会
　だったのと比べ、素材は一緒でもニヤけた監督の語りのシーンは全部カット（笑）、細かい
　トコロでは撮影の合間にペンギンの隣りで煙草をふかすシーン等の撮影隊による環境破壊
　の様子等もカット、っと大幅な再編集を経て必要最低限のナレーションによる撮影側の人間
　と撮影されるペンギン達とが同等の扱いになったユーモラスなメイキングになっていて私は
　好印象を持ちましたよ。っかフランス版は本当にカスで、
　「あぁ結局このクソオヤジは自然にもペンギンにも何の思い入れも愛情も無いんだな…　」
　　っと暗澹たる気分になりましたが、同じ素材でも編集でこうも違ったものになるかと改めて
　感心しましたもの。

　　そしてナショナル　ジオグラフィックス提供の皇帝ペンギンの生態研究のドキュメンタリー
　番組である「National Geographics's Crittercam : EMPEROR PENGUINS」はペンギンらへ、
　南極という自然へ、の愛情に満ちたものになっていて楽しかったですよ。やや子供向け用に
　チャカチャカした演出部分はありますが、本編で足りない部分はこれでカバー出来るんじゃ
　ないんでしょうか。

　　アメリカではワーナーのインディペンデント部門が上映って事もあってか（フランスはブエナ・
　ビスタ　フランスが上映、ＤＶＤリリース）か、ルーニー・トゥーンズの短編アニメーション群から
　「Classic Looney Tunes Cartoon "8 BALL BUNNY"」を収録。ひょんなことから子供ペンギン
　と出会ったバックス･バニーが何とかその子を故郷の南極まで連れていってやろうとするが…
　といったもので、フルフレーム＆あまり良いコンディションではない画質・音質ながらもオマケ
　としては充分なモノではないでしょうか。ちなみにＵＳ版のワーナーのＤＶＤではこのように
　Classic Looney Tunes Cartoonを収録してるソフトはいくつもあるそうですが、厳しい現実っか
　自然の本編のオマケとしては心和むものではないかと…　まぁ黒人の表現とか時代的過ぎて
　アレに思う人もいるかもしれませんけども（笑）。

　　そして最後にアメリカ版劇場予告編も収録、っというこのＤＶＤ、先に本編についても書き
　ましたが、『皇帝ペンギン（La Marche de l'Empereur）』を観て、残念だった不満だった人には
　このＵＳ版ＤＶＤこそが望まれた作品ではないかと。
　　逆に『皇帝ペンギン（La Marche de l'Empereur）』という「擬人化による親と子」って映画が
　好きだった人には、生物ドキュメンタリー映画である本作『March of the Penguins』は合わな
　いだろうと思いますが…

　　日本でも比較が出来るように、このＤＶＤの日本版がリリースされればいいですよね…
　尤も、ここまでの編集をした事によるスタッフ等への著作権料は凄い事になるでしょうから
　実現は難しいんでしょうが…　個人通販なさってる方ならば、特に動物ドキュメンタリー好きの
　方ならば買っておいて損はない、と思いますよ。