・『Napoleon Dynamite (2004)』 - Region 1


 Studio: Twentieth Century Fox Home Video
 Theatrical Release Date: June 11th, 2004
 DVD Release Date: December 21, 2004
 Run Time: 89 minutes

 Aspect Ratio(s):
 Widescreen anamorphic - 1.85:1
 Pan and scan (4:3)

 Available Audio Tracks:English
 (Dolby Digital 5.1, Dolby Digital 2.0 Surround)

 Available subtitles: English, Spanish

 DVD Features:
  ・Audio Commentary(両面共通)

  SIDE-A(Full Screen Presentation)
  ・"Peluca"(original short film)
  ・The Wedding of the Century: making-of featurette
  ・MTV On-Air Promo Spots

  SIDE-B(Widescreen Presentation)
  ・Deleted scenes with Audio Commentary
  ・Still Photo Gallery

・20世紀フォックスのインディペンデント部門で40万ドルで製作された低予算の映画で6月に
公開された時には微々たる上映館数だったものが口コミで人気が爆発、上映館数を増やしな
がらの秋までロングラン、米国内だけの上映興行収入だけで3400万ドルも稼ぎ出した本作
ですが、予告編やスチルを見て
【オフビートなルーザー・ムービー】
【オフビート&ローテンションな、お馬鹿が主人公のお馬鹿コメディ】
【『アメリカン・グラフティ』から連なるアメリカ伝統のティーン・ムービー】
 かと思っていたのだが、そういう映画は他にもいくらでもあるのあえてこの作品が大ヒットした
のは何故なんだろう? 一体どんな映画だろうと興味津々でオーダーしたブツでしたが…

舞台はアイダホの田舎町。主人公ナポレオン・ダイナマイトは高校生なんだが、微妙ぅにズレ
た冴えない奴。眼鏡をかけていても勉強が出来るワケでもなく、と言ってスポーツが得意だとか
他に誇れるものも自慢するもの(Special Skill)も持ち合わせてはいないし、やや出っ歯なもんで
常に半開きの口からは溜息しか出て来ないんだけど、それでいて焦燥感や劣等感に苛まれる
事は無く日々を過ごしている。両親は不在。祖母の家に一緒に住んでいるニートな兄・キップは
一日中PCに向かって理想の恋人とのチャット(をしていると兄は言ってる)に浸る日々。そんな
彼の学校生活に唯一のメキシコ人・ペドロが転校してきた事で、家での生活でもお婆ちゃんが
砂丘でバイクをブッ飛ばしすぎて事故って入院してしまったので二人の面倒を見る為(と言い張
って)、中年になってもなお82年の絶頂期のフットボール選手だった頃を忘れられず今も現役
復帰しか考えていないヴァン暮らしをしているリコ叔父さんが押しかけて来る事で、それぞれに
変化をしてゆくのだが…


 っと前半部分まであらすじを書いてみたものの、実は物語にはあまり意味が無いんですよね。
むしろ学生時代の、『フレンズ』や『ビバリーヒルズ高校白書』などのTVドラマのように、綺麗で、
お金持ちで、清潔な人物達が毎回遭遇するトラブルやドラマといった『物語』では描かれる事は
無い、ありふれた、冴えない、垢抜けぬ、平凡な人達の退屈な、特に何という事も無い日常風景
それこそがこの映画の売り、と言うか、テーマだと思うんですよね、私は。

 確かにナポレオン君の行動もあってペドロやデブラには発見なり成長はあったのかもしれない
けれど、ナポレオン君自身は実はそれはどうでもいい事にしか過ぎない。誰かの為に行動なり
努力なりをしたとしても、あくまでもそれは彼がそうしよう、そうしたいと思ったからに過ぎず、その
結果がどうなろうがどう思われようがどう評価されようが彼にはあまり興味も意味が無いんです。
しかも現状に対して不満や不平があるワケでもなく、焦燥感や欠落感や劣等感も無い彼にして
みれば、行動による自己変革や自己満足や現状打破という私欲にもならない彼自身の行動に
よる結果での変化や成長ってのは無いんです。その最たるものが本編的にはクライマックスの
生徒会長選挙戦でして…

【以下、ネタバレ開始】


 ペドロの応援スケッチで、そこで一生懸命練習してきたヒップ・ホップ・ダンスをナポレオン君が
披露するんですが、彼のダンスは先にやったサマー女史&チアリーダーのよりも巧いんですよ。
勿論、物凄く巧いワケじゃぁないんですが巧いんです。しかし、彼の表情はいつも通りなんです。
真剣とか切実とか一生懸命とか歓喜とか、そういう表情や感情の無い実にいつも通りの表情の
まま踊り続け、途中で途中でBGMが切れてしまってそそくさと退場する時もいつも通りで、彼が
舞台から去った後、会場がスタンディングオベーションになってるのを見る事も無く(おそらくは)
帰路についている時の表情もいつも通り…
 これが普通の青春映画だったら、こんな事はしないじゃぁないですか。
達成感なり友情の確認なり、挫折感とか高揚感とか、一杯色々なモノを溢れさせてくるものなの
に、映像もずっと引いて抑えたままならナポレオン君もいつも通りの困ってんだか何か悩んでる
んだか実は全く何も考えていないのかよく解らない日常の表情のままなんですよ。そして、見事
ペドロが生徒会長に当選したパーティ会場に… ってシーンも含めて、普通のコメディだと思って
た人にも、青春群像モノだと思ってた人にもこの普通っぷりってのは結構辛いんじゃぁないのか
なぁ… っと思ったんですが、これも監督らがこの作品でやろうとした事の表れなんだろうな、と
私は思ったんですよ。

【以上、ネタバレ終了】

 勿論、後年になって彼が当時の行動の結果による影響などを受けての変化はあるのかもしれ
ない… エンドロール後のエピソードでペドロとは本編時点よりもずっとお互いに仲良くなってる
ように見えるように… が、それはあくまで観た人の想像の余地のハナシで、本編は盛り上げて
もいいトコロも引っ張るべきトコロも流すトコロも同等に扱って淡々と進行して終わるんですよ。
ペドロ以外にもキップ兄さんやリコ叔父さんの発見、変化、成長もあるんだけど、それはナポレ
オン君の行動や言葉によるものでもない、っと群像モノによくあるパターンも無いし…
 だけど、そういうのも全部ひっくるめて
「でも、それはそれでいいんじゃないの?」
 って製作者達のメッセージっかテーゼなんじゃないかなぁ… っと私は思うんですよ。消極的な
生の肯定ってのかな? 誰しもが何物かになれるわけではないけれど何者かではあって、それ
は自分にとっても誰かにとっても特別な、意味のある、価値のある事ではないのかもしれないけ
れど、そうかもしれないし、そうではないかもしれないじゃない? って。
 んで、
「でも、それはそれでいいんじゃないの?」
 っと。
そういう視点で観れば、この映画の宣伝文句である
「HE'S OUT TO PROVE HE'S GOT NOTHING TO PROVE.」
 ってのの意味も私的には納得いったんですよ。ただの無能者の敗戦映画じゃないんだもの。

 だから映画ってのはドラマだメッセージだテーマだテーゼだ比喩隠喩だメタファーだ説教だ、と
いう人には実に退屈でツマラナイ映画だと思うんです(実際、海外の映画サイトでの評価も賛否
両論っか、かなり極端な賛否に分かれている)が、これはもぅしょうがないかと思います。

 まぁ私的には
【結果には難アリが多いけれども、誠実であるナポレオン・ダイナマイト君】
 って主人公がいる時点で嫌いじゃぁないんですが(笑)。

 舞台がどこであれ青春モノの定番である酒も煙草も死もセックスもドラッグも無く、悪態の言葉
でさえも「Fuck!」ではなく「Gosh!」で、罵倒すらも「Stupid」ではなく「Idiot」ってF-wordも一切無しの
映画であっても、ファミリー映画のような不自然さとは感じず、むしろそれすらもリアルに感じられ
るくらいにノンビリとした【世界】の中では、結果や成功が大袈裟なものである必要は無いと思い
ますし、何よりも猫背気味のナポレオン君が何とも憎めないんですよね… 観賞後、カート・ヴォ
ネガットJrの『ローズウオーターさん、あなたに神のお恵みを』をチラッと思い出しましたが、ナポ
レオン君はローズウオーター氏のほどの善人ではないけれど、少なくとも自分の意志と(意志や
要望とは異なっていても)決めた事には誠実な彼は、多少ウザッタイ部分(笑)ってのもあります
が、憎めないんですよ、私は。

・また画面が冴えない色彩で野暮ったいセットや美術なんだけど綺麗で、スコアも決して派手で
も説明的でも情感豊かでも無いんだけど合ってるからますますこの映画、私は好きなんです…



 が、これだけ理屈っぽく説明しなきゃならないような映画じゃないんですよな、これ(自爆)。
とは言え、単に「癒し系」だの「オフビート&ルーザー映画」って説明で済ますのは勿体無い、実
に面白い視点と試みをした映画だと思ったんですよ、私には…

・と、長々と感想だか何だか解らないモノを書きましたが、観た人なら納得してくれるモノじゃぁ
ないかな? って気はします。ただ繰り返しになりますが、見たまんまで投げっ放しも平気でやる
のでメジャーのビッグ・バジェットのような解りやすさや派手さは無いんで、駄目な人は本当に駄
目だとは思います。でも、好きになる人には温く好感を持つタイプの作品ではないかな、っと。

・画質、音質は良好… と言っても派手な作品ではないんで充分な品質かと思います。
ただ、折角両面ディスクで本編も90分程度なのに特典がちょっと寂しいなぁ… 音声解説も監督
とプロデューサーと主演の3人っ〜似たような声の男どもがぼそっ… ぼそっ… っと語るのも、
この作品では「らしい」ものではありますが… ま、もちっと欲しかったな、っと。


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