世界に通用する研究者になるために
だいぶ時間がかかっていますが,少しずつホームページをリニューアルしています.以前からこのホームページでも書いてきた元所属研究室での問題もどうやらようやく収束に向かっていますし(居座るっていうのはすごい厚顔無恥ですけど・・・),気分を新たにしていきたいと思っているところです.最近の自分のホームページを見返してみると,科研費の不正使用という問題の性質上,上司の件ばかり触れているのですが,本当は学生の方がはるかに頭を悩ませてくれました.良い意味での競争原理が働かず,与えられることばかりを望み,極端に打たれ弱い世代の学生を,どうこの世界で成長させていくのか.自分なりに悩みながら約5年間を過ごしてきて,研究者として卒業していった学生達と接した経験や,それ以外のまわりの学生を見てきた経験から,ぼんやりと型が見えてきたように思います.幸い,今の自分には学生がついておらず,下の目を気にする必要もないので,僕が考える「研究者を目指す4年生に最低限必要なこと」を以下にあげておきます.4月から研究室配属になる学生はもちろん,これから研究者を目指す人にも必読,だと思います.
新しく研究室に配属された際,まず気をつけて欲しいのは「同級生(同期)とつるまない」ということです.今の学生を見ていると「仲良きことは素晴らしきことかな」ではなく,単なる脱落者の傷の舐め合いにしか見えません.研究室では横の関係ではなく,むしろ上下の関係を構築するべく,早くからウマの合う先輩を見つけることが得策です.研究の世界に限らないと思いますが,上質の仕事をするために必要なのは「和」以上に「自分を確立している人がベストを尽くすこと」です.この「自分を確立する」という過程に取り組む上では,自分の長所と短所を正しく理解する必要がありますが,そんなの研究室に入りたての同レベルの人達(同期)に分かるわけがありません.研究室で,やることもないのに同期が終わるのを待っていたり,同期のテーマや進行具合が気になって相手に聞いてしまったりする人は赤にだいぶ近い黄信号です.まともな研究者になりたければ,「終わってしまったんですけど何かやることありますか?」「今年は他の4年生にどういうテーマが与えられたのですか?」,といずれも先輩に聞いて下さい.
同期と結託しないことも関係しますが,次に大事なのが面と向かってコミュニケーションを取ることです.僕の持論ですが,現代っ子をここまでおかしくした大きな原因は携帯電話とSNSです.弊害の原因はいろいろありますが,少なくとも相手の様子をみることなく自分の意見を気軽に押しつけてしまえるメールは,友達相手ならいざしらず年上,年下との交流が必要な仕事場内のコミュニケーション手段としては最悪です.メール伝達を好むほとほと馬鹿な上司もいるけれど,たいていそういう人は信頼感の得られない無能な上司です.今の学生には,気に入らないことをスタッフや先輩にいわず,同期で愚痴ってお終いとする傾向がありますが,それも仕事のできない人の典型的な選択肢です.気に入らないことがあれば上にしっかりと言えばいいんですよ.通る可能性はものすごく低いんですけれど,自分の意見や行動に責任を持つということの大切さは身に付くと思います.
昔のホームページによく書いていましたが,最後にあげるのが「研究室内恋愛」.百害あって一理無しです.こればっかりはやっても良いんですよ,結局僕達には規制できませんし.僕だって,良い研究のために一生恋愛するな,なんて少しも思ってないですから.でもつい先日も仲間内でこの話題になり統計を取ってみたところ,確かに研究室内恋愛をしてしまった人で,いい仕事をしてるなっていう人,皆無なんですよ.それどころか,「あいつ昔はもう少し出来たような気がするんだけどなんでこんなに落ちこぼれちゃったの?」っていうケースはたいてい研究室内の恋愛が原因です.僕の評価では,研究室内でつき合ってしまった人の研究(nは20以上)は,10段階評価で最高で4点あげられるかどうか,多くは1~2点しかつけられないほどの目を覆いたくなるようなありさまです.当事者の学生だけでなく,それで卒業させてしまう教授陣も問題なんですけどね.いずれにせよ,良い(というか普通レベルさえの)研究者を目指そうと思ったら,研究室でつき合うのは絶対に止めるべきです.そうは言ってもどうしても中の人を好きになってしまった時の打開策,ありますよ.片方が研究室を移るか,卒業まで待つだけで良いんです.何につけてもそうですけど,楽して目先の欲におぼれる人には後にきついしっぺ返しが待ってますね.大学生にもなって,それに気づかないというのが今の若い世代を取り巻く問題の深さを表していますが.
最初から,あまり多くの条件をあげても実践できないと思うので,まずはこの三つにしておきます.簡単に実行できるような項目をあげておいたので,思うところがある人はぜひ参考にしてみて下さい.