帝京メディア・ラボⅡ Teikyo Media Laboratory

TML1.jpg森のテラス全景

TML2.jpgエントランスゲートTML3.jpg北側外観夕景TML13.jpg既存施設と繋ぐブリッジTML4.jpg1階エントランスから見る
TML6.jpg2階から吹抜けを見下ろすTML7.jpg1階吹抜けの自然光TML5.jpg資料・展示スペースTML8.jpg資料・展示スペース夕景
TML9.jpg3階バルコニーTML10.jpg無響室TML11.jpgコンセプト模型TML12.jpg南側全景模型

千葉県市原市
2000 03
大学研究所
2,843.27㎡

CONCEPT
帝京平成大学は情報学部系の大学で千葉県市原市郊外の丘陵地に位置し、周囲を森に囲まれた環境の優れた立地である。この施設は既存校舎の増築であり、騒音環境の総合的シュミレーションを行う無響室を主体とした研究所として、文部省のハイテクリサーチセンター整備事業の一環で建設された。機能諸室としては無響室のある実験棟と、資料・展示スペース、情報処理室、共同研究室等がある研究棟、実験の為の模型を製作する工房などである。
敷地は南東方向になだらかな傾斜地がひろがり、雑木林の美しい風景を見渡す小高い丘に位置している。当初この敷地を訪れた時その豊かな景観に魅せられ、学生が自然環境の中で憩い、交流する場を創りたいと考えた。そしてこの建築の目指したものはその優れた自然・眺望を生かした「環境の装置としての建築」であった。

建築の構成は躯体を伝わる騒音を避けるため実験棟と研究棟を別棟とし、その間をこの施設へのエントランスゲートとして演出し、2階レベルでは既存校舎とブリッジで連結した。このゲートをくぐると雑木林を望む南面のテラスに導かれ、その地下に傾斜地を利用した工房を配した。このテラスは一階の資料・展示スペースとガラス張りで連続し、両者を生徒ラウンジとして語らい・集う場と位置づけた。
建築の意匠は「環境の装置」としての意図から、南立面は自然に開放する透明な表現を求め、薄い庇状のバルコニーを設けて床から天井までを全面開口とし、周囲の風景を取り込むことを狙った。ここではかつて自然と呼応していた伝統的日本建築のように、環境と建築が相互に浸透し合う手法を意識した。北立面は実験棟を外部騒音から守り、また、南側の自然環境へと開く方向性を強調するため壁的な表現とし、タイルの素材感を生かした清潔感のあるデザインとした。
内部は空間のプロポーションやバランスに注意し、丸柱サイズからサッシュ、手摺ディテール等最小限に切りつめ、内装には自然環境に調和した素材、色彩を選択した。これらにより空間が周囲の風景を損なわない事や、単純でなにげない構成の中に爽やかさや快適性といった感覚を求めた。

建築内部に浸透する四季と共に変化する色彩。吹抜を時間と共に変化する光。空間を体験する人々に移ろいゆく時間と自然が詩情をもって感じられることを望み、また、学生にとってこの豊かな環境の中で交流することで、学生時代の良き思い出が育まれるようなスペースを求めた。