ネタバレ激多!!!


第六話B『僕と犬の楽園』
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 9月1日(水)

 当クラスきってのショタ萌え対策員、白石雪也の成績が、どうもあまり芳しくないようです。
 雪也といえば顔は美少年、性格は温厚、学力は超一流進学校を狙える優秀ぶりと非の打ちどころがない優良生徒。これまでは完璧超人No.2の座に甘んじていましたが、前話において高千穂誠が転校した今、誰もが認める新たな完璧超人No.1としてこの世の春を満喫しているはず。新たな帝王として、人の上に立つ者のプレッシャーに苦しんででもいるのでしょうか(←凡愚は黙っててください)。

 そこで土手にいた雪也を訪ねてみると、彼は大きな白い犬とボール投げをして遊んでいるところでした。見たところあれはグレートピレネーズ、真っ白で毛並みが綺麗で大人しくて顔がキャワユイことで当方に絶大な人気を誇るワンコです。ギャー! ゴムボールくわえてこっち向いてるさまの可愛いことと言ったら! 庭付きのでけえ家に住んでたら是非ともさらって帰りたい愛らしさですヨ!!

 興奮しながら雪也に話しかけてみると(この文だけ見るとイヤな記述だな)、このワンコは土手近くで大量の捨て犬を飼育している【犬爺】という老人から、最近譲ってもらった愛犬なのだそうです。立ち絵の正面顔がブチャイクでとても可愛いです(悦)。
 ともあれ、シェリーと名付けた飼い犬を心底可愛がっている様子の雪也。その表情を見る限り、成績に響くほどの悩みを抱えているようにはとても思えません。

 とりあえず、雪也から教えてもらった犬爺の家に行ってみることにします。
 川の土手沿いにポツンと一軒だけ建っている彼の家は、庭の塀に囲まれた犬たちの鳴き声が始終こだましており、あまり犬にとっていい環境ではないようです。家から出てきた老人の身なりも薄汚れていて、お世辞にも多くの犬を養っていけるほど裕福とは言いがたい風貌。この人が犬爺でしょうか。

 ともかく本人を直撃してみたものの、あまり大した情報は得られないまま追い返されてしまったため、公園にいた中島ヒカルを訪ねてみることにしました。どうやら近所のコンビニでよく姿を見かける人物のようです。町内でもかなりの有名人みたいですね。


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 9月2日(木)

 今日も土手で愛犬シェリーと仲良く遊んでいた白石雪也に、【犬爺】のことを聞いてみました。
 主人公が彼の家を訪ねたことを知って、表情を曇らせる雪也。その横で「ご主人をいじめる奴は許さないワン!」とばかりに怒った顔をするシェリー(悦)。ハァハァなんて可愛いんだ。

 どう見ても純血のピレネー犬に見えるシェリーも、元は心無い飼い主に捨てられ、犬爺によって拾われてきた野良犬の一頭。犬爺が犬を集めている理由はわからないが、彼には感謝していると雪也は語ります。
 譲られてまだ日が浅いのに、シェリーが雪也に懐いていることからも【シェリーは友だち】と言う雪也の言葉が嘘でないことはよくわかります。

 四ターン目の夜、マップ上にコンビニが表示されたので行ってみることに。
 生憎そこにいたのは関原教諭でしたが、彼も【犬爺】のことはよく知っていました。騒音と悪臭の元凶として評判の嫌われ者で、おまけに犬たちの餌を手に入れるため、コンビニや飲食店のゴミ箱をあさったりするのだそうです。それを見かねた店員が余り物の食料品を持たせているらしいのですが……まさに典型的な犬屋敷・猫屋敷の住人というわけですね。そこまでして【野良犬を飼う理由】を、関原も理解しかねているようです。

本日の美咲 サクラ橋にて遭遇。【シェリーは友だち】を見せてみると「はいはい、先生は友達たくさんで良かったでちゅねー」と幼児プレイを強要される。あるいは羞恥プレイだったかも知れないが、メガネ萌えと覆面萌え以外の変態性欲に興味を持たない当方には区別する術もない。

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 9月3日(金)

 学校へ白石雪也の母が訪ねて来ました。一昨日高峰教諭とりん子先生が話していた【雪也成績ダウン】の心当たりを相談に来たようです。
 うーん……今のところの理由としては「犬に現を抜かして勉強がおろそかになった」程度しか考えつきません。シェリーのことを知らないりん子先生に思い当たることがあるわけはなく、万年失語症の主人公に適切な理由が説明できるはずもなく、雪也の母は「そうですか……だとすると」と気がかりな台詞を口にして帰って行ってしまいました。

 心当たりを知る一番の手掛かりは、やはり本人を直接あたってみること。というわけで、今日も土手にいた雪也に【雪也成績ダウン】を見せて直球勝負。
 テストで実力を出せなかった原因は、体調を崩したシェリーの看病をしていたためでした。老犬であるシェリーを心配した雪也は、つい勉強よりも看病を優先させてしまったのです。

 シェリーを譲り受けた後も、雪也は犬爺の家に足しげく通っているようでした。犬爺を「捨て犬を助けてあげている立派な人物」だと高く評価している様子の雪也。自分が近隣住民からどう思われているかを知っている犬爺は、そんな彼にいい顔をしません。
 どうも雪也は、ワンコ至上思考に陥ってしまっているあまり、犬爺のように客観的な見方ができなくなっているみたいです。病気になっても助けてやれず、餌も満足に与えてやれず、散歩にも連れて行ってやれないことを考えると、こういう飼い方は決して犬にとって幸せとは言えないはずなのですが……

本日の太陽 図書室にて遭遇。才能開花により職業Iの国際協力隊員に開眼。コメントが凄いやる気で誇らしげだが、この期に及んで医療職を選ぶらしい。赤十字か……

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 9月6日(月)

 田沼教頭と小須田教諭に、白石雪也の家庭訪問を命ぜられたので早速特攻。「成績の良い生徒は特別扱いしなさい」と小須田教諭が漢らしい発言をしていたのが印象的でした。スゲエ成績の良い元引きこもりとスゲエ成績の悪い媚び媚び系を日常的に特別待遇でストーキングしているため「これが教師の発言か!」と憤ることができないのが残念です。しかしこんなこと言ってる割には、高千穂誠とか中島ヒカルは余裕でスルーしてるよな、こいつら……

 丁度玄関で呼び鈴を押そうとしたところ、家の中から雪也と母親が言い争う声が聞こえて来ました。
 どうやらもうすぐ家庭教師の時間なのに、シェリーと散歩に出かけようとする雪也を母親が叱っているようです。ワンコの散歩は大事ですが、人を呼びつけておいて待たせるのはいけません。
 したがって、この場合一番正しい選択は「お母さんが散歩に連れて行くからその間にちゃんと勉強しなさい」となります。ただし多用すると我が家のように愛犬の所有権が変動する恐れがありますのでご注意ください。リアル妹の熱望で飼うことになったはずだったんですけどね、うちの犬。

 昨日手に入れた【野良犬を飼う理由】を、犬爺に見せてみることにしました。
 「犬が好きだからに決まっとる、別にお前さんに理解してもらおうとは思わん」と予想通りのお返事。
 まあ、一頭あたりの待遇としては、50年前の飼い方とそう変わりはないのでしょうけどね……食事は残飯、寝床は適当、糞の始末はそこら辺……実際に犬を飼ってみると、これが雑種だからできる荒技であることを痛い程思い知らされます。広い家にお住まいの方は、雑種を飼う方が5倍は楽ですよ、実際。グレートピレネーズなんてよくこの中で生き延びて来られたなあ。

本日の美咲 サクラ橋にて遭遇。【雪也成績ダウン】を見せたところ「どうせ美咲の成績はこれ以上ダウンしないもん」と逆ギレ。三年の二学期にこの状況で開き直れるタフネスっぷりが素敵だ。

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 9月7日(火)

 重要そうな人物がマップ上に全く出て来ずハズレ日かと思いきや、4ターン目になって唐突に白石雪也の自宅がマップに出て来ました。
 家の中でしきりにシェリーを探している様子の雪也とは対照的に、妙に愛想のいい彼の母親。不審に思ってよく様子を伺ってみると、大変なことが明らかになってしまいました。雪也の成績ダウンの原因が犬にあると考えた母親は、なんとシェリーを野良犬と偽って保健所送りにしたというのです!

 なんて女だ! それでも人の血が流れているのか人非人! 非国民! 自分勝手な理由で殺生をしておいて、よくもいけしゃあしゃあと母親を名乗れたものだな!! お前のような人間は死してなお永劫の責め苦を味わい三千世界を一切の救いも得られぬまま彷徨うことになるであろう!!(←筆者は深刻な犬信者であるため発言が大幅に偏っております)

 もうね、こういうことを正気でやれる人間は人の親になる資格はありません。飼ってる動物にどうしても飼えない理由ができてしまって、引き取り手も見つからないのなら、責任持って自分で殺すくらいのことはしなきゃいかんと思います。自分達の勝手な都合で捨てたり保健所送りにする程度の愛着しかないのなら、殺すくらい朝飯前でしょう。子供を含めた家族全員の前で、殺害から死体の始末まで徹底的にきっちりやって頂きたいものです。

 結局何が言いたいのかというと、トロとたまごっち程度で音を上げた人間はお呼びじゃねえと言うことです。ただし、現実の生き物を手ずから育てると雑草すら焦土と化す特技をお持ちの方は、当方と同じようにシーマンで我慢しましょう。


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 9月8日(水)

 哀れ保健所=死地に送られてしまった【シェリーの行方】を探して、家を飛び出してしまった雪也。母親によると、それっきり家には帰ってきていないようです。

 が、雪也の方は幸い、犬爺の家ですぐに発見することができました。
 シェリーが捨て犬として殺処分されていないかどうか確かめるため、手始めに最寄りの動物愛護センターを訪ねてみることにしたらしい二人。気は進みませんが、シェリーの無事を確かめるために同行します。

 係員に案内された部屋の中には、「新規」「1日」「2日」「3日」と札の貼られた檻と、そこに入れられた殺処分を待つ犬たちが待ち受けていました。
 こちらを向いて人懐っこく尻尾を振る「新規」の檻の犬たちとは逆に、札の日付が進むごとに元気のなくなっていく「1日」「2日」の犬たち。「3日」の犬は自分の運命を知っているのか、隅にうずくまったまま身動きもしません。うあぁあぁぁぁぁあぁ可哀想に可哀想に可哀想に。

 ここに入れられた犬たちは、一日経つごとに隣の檻へと移され、最後にはガス室で十五分以上もかけて窒息死させられるのだそうです。
 「ひどい」とそのシステムを責める雪也ですが、本当にひどいのはそうした現実も知らずに動物を廃棄するアホ共です。施設や職員の方々を罵るのはお門違いというものでしょう。

 が、残念ながらここにシェリーは入れられていないようでした。引き続き犬爺の家に泊めてもらい、行方を探し続けることに決めた【雪也の決心】は固いようです。無理矢理家に連れて帰るようなことはできません。

 嫌だけどやらないと話が先進まないんで 仕方なくこの事実を母親に伝えます。
 「嘘です! 雪也がそんなこと言うはずありません」と激昂する母親。相変わらず自分の殺生に関する反省は微塵も覚えていないどころか、雪也の受験のためにやったことだと正当化に励む有様。こんな【母の心配】など糞喰らえという感じです。

 雪也本人になど伝えるのも馬鹿らしいため、コンビニで食料調達をしていた犬爺にだけ、それとなく話しておくことにしました。
 雪也が犬を救おうと一生懸命になるあまり、周りのことが見えなくなっていることも、自分のやっていることが犬のためになっているとはいえないことも、犬爺はよく解っていました。

 「わしのようなやり方で犬を飼うこと……それもまた人間のエゴの行く末だということを、あの子はまだ知らん」
 学もなく年老いた犬爺には【犬のしあわせ】のために出来ることが、他に何もありません。わかっていてもそうせざるを得ない、そんな彼の言葉が胸を打ちます。


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 9月9日(木)

 今日もシェリーの行方を懸命に探し続ける白石雪也。地域の保健所は全部回ったものの、まだ手掛かりを得ることはできないようです。
 あまりにも純真に犬爺の行動を正当化してしまっている雪也。「ここは人間に捨てられた犬たちが最後に辿り着いた楽園なんだ」という言葉も、昨夜の犬爺の言葉を聞いた後ではあまりにも悲しく響きます。

 一方、動物愛護センターの係員に【シェリーの行方】を尋ねてみると、約束通り昨日処分した大型犬のことを調べておいてくれていました。ただし、わかったのは頭数のみ。その中にシェリーがいたかどうかまでは突き止められなかったようです。
 こんな仕事に就いている彼ですが、それだけに身勝手に犬を捨てる飼い主への憤りは人一倍強いようです。ただでさえ嫌悪感を伴う仕事である上、心ない偽善者からの罵りに耐え、身勝手な飼い主共に文句も言えない。もう気の毒過ぎます。そりゃあ事務的にならなきゃやってられないでしょう。

 なお、いつもの通り病院の金八先生に雪也のことを相談しに行くと「成績軒並みダウンってのは心配だよな、でも勉強が全てじゃないからしっかり指導してやれ」と果てしなく今更な助言をくださいました。あまりの感激に、危うく「役立たず」と口走ってしまうところだった当方です。


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 9月10日(金)

 ゆ、ユッキーが! みんなのアイドルユッキーがメタクソにボロ汚れてゴミ漁りしてるヨ!!(涙)
 何故かサクラ通りなんかにいる白石雪也を追いかけてみれば、着いたところはいかがわしいお店の並ぶ裏通り。昼間なので閑散とした往来のポリバケツを覗いて、我らがユッキーは健気にもワンコの餌を探し集めています。

 そうだな……だが坊や、その方法では効率が悪い。餌を集めるにはもっと夜遅くを狙わなきゃいかん。
 まず、一見金にも恋にも名誉にも恵まれ、孤独を飼い馴らすのにも慣れ切っているようだが、時折過ぎ去った情熱を振り返って古い唄の一節を口ずさんでしまう心の隙間を持っていそうな紳士淑女に狙いを付け、その人物が立ち止まったのを見計らってさりげなく近くに腰掛ける。斜め後ろがベストだ。
 そしておもむろにこう話しかけるんだ。「……あなたも、捨てられたんですか?」宗教がかった調子になってしまってはいけない。ここは無感動に、独り言を呟くように発音するのがベストだろう。
 紳士淑女は君の方を振り返り、君の顔と服装を見て驚いたり頬を染めたり舌舐めずりをしながら上から下まで眺め回すかもしれないが、勝負はこれからだ。そこですかさず「ごめんなさい、あなたも僕たちと同じように見えたから」と寂しげに相手の目を見て微笑まなければならない。
 その言葉を聞いて紳士淑女の表情に暗い影が走ったのならもうこっちのものだ。キャッチセールスならカモを店内に連れ込む所まで成功したも同然、何故なら後は現在の身の上を語るだけで事足りるからだ。導入部は「楽園を見たことがありますか」といった、思わせぶりかつ印象的なフレーズを使うと良いだろう。自分の言葉に酔わず、激昂せず、あくまで淡々と己の境遇を語っていくことが肝要だ。
 ターゲットの目利きに誤りがなければ、相手は話が終わった後に神妙な面持ちで財布をまさぐり、その中身をあたかも汚らわしいものであるかのように君の掌の中に押し込めるだろう。一応「そんな、いけません」と社交辞令を述べておくといい(返事は9割がた「いいんだ、私が持っていても仕方のないものだから」であるため、面倒な場合は省略しても可)。
 別れ際の台詞は「(小声で)あなたも、僕たちのところへ来ませんか」→「……いえ、何でもありません」のコンボで、余韻を残しつつ完膚なきまでに突き放して決めたい。「犬」の部分を「仲間」「彼ら」等とし、完全に擬人化して語れるようになれば立派な上級者だ。

(注)万一そろそろ新しい性の世界を開発してみようかと考えている紳士淑女に当たってしまった場合は、本作戦はほとんど効力を成さないため、撤退するか一か八かの勝負に出るかを速やかに決断すること。

 なお、素直に一行目で読むのをやめた貴方は勝ち組です。ウッカリ全部読んでしまった貴方も、わざわざこんな文を二時間もかけて書いていた当方に比べれば遥かに勝ち組ですので安心してください。

 ともかく、こんな調子ですっかり犬爺のライフスタイルが板についてきてしまった様子の彼。母親が持ってきた毛布や着替を一切受け取らないので、身なりがすっかり汚くなってしまっています。しかし、それを気にしている様子は少しもありません。
 こりゃあシェリーが見つからない限り、本当にずっとここで生活しかねない有様ですね……学校にも来ていないはずですが、クラスの皆は心配していないのでしょうか。

本日の美咲 サクラ橋にて遭遇。【母の心配】を見せたところ「美咲んちは高峰先生がいるからお母さんも安心だって」と一言。平均点一桁の娘に安心できる母の剛胆っぷりは、是非他の母親に見習わせたいところである。

※文中の作戦を実行した結果、本当にあかの他人から金品をせしめることに成功した美少年の方は御一報ください。もれなくミスターファンタジーの称号を差し上げます。


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 9月11日(土)

 学校は休みのはずなのに、やることが無いせいか職員室でダラダラしている主人公(←当直なんだろ)。するとそこに白石雪也から電話がかかって来ました。

 連絡を受けて犬爺の家に急行すると、家の周りは大勢の人に囲まれています。どうやら犬の鳴き声や臭いに耐えかねた近所の住民が、苦情に押しかけてきたようですね。
 とりあえず来てはみたものの……周辺住民の立場からすれば彼らこそが被害者。「素直にお犬様を崇めてろ! 人間共は地べたに這いつくばってりゃ良いんだ!(シュピーン!)と決め台詞を突き付けて終了するわけにはいきません。

 【犬のしあわせ】のためにちょっとだけ勘弁してもらえませんか、とやんわりフォローするも「可哀想だが犬を捨てたのは俺たちじゃない」と言われてしまってはお手上げです。確かにいくら犬好きな人だって、日がな一日ワンワカ吠えられて悪臭をまき散らされたんじゃ、たまったもんじゃありませんよねえ……

 やむを得ずホースで水をまき散らし、住民たちを追い散らしてしまった犬爺。その表情は暗く沈んでおり、犬を悪く言う人々を追い返して喜んでいる雪也とは対照的です。
 ここが「犬の楽園」ではないことに、雪也はまだ気付いていません。……しかし、もうぼちぼち、真実を知る頃合ではないでしょうか。


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 9月13日(月)

 週が明けた本日は、白石雪也の祖母宅がマップ初登場。そういえば昨日、近くにおばあちゃんの家があると話していましたっけ。
 とりあえず訪ねてみますと、家の中から出てきたのは……シェ、シェリー!!?
 このブチャイクな正面顔はまぎれもなくシェリーです。良いものを喰わせてもらっているのか、相変わらずふかふかして元気そうです。なんだよ畜生呑気な顔してやがって……雪也はお前のために六日間もフロ入ってないってのによう……カワイイな……

 なんと雪也の母親は、シェリーを保健所送りにしたと偽って、密かに実家へ預けていたのでした。
 ただ犬を預かって欲しいとしか聞いていなかった祖母は、事情を聞いて申し訳なさそう。しかし、娘がとった行動の理由には、思い当たる節があるようです。
 雪也の母親には、可愛がっていたメリーという犬を病気で亡くし、ひどく悲しんだ過去がありました。生き物を飼えば必ずやってくる死別を厭うあまり、彼女は動物そのものを嫌うようになってしまっていたのです。

 ………「シェリー」に「メリー」か………(折角の良いシーンに否応なく甦る某大風呂敷RPGの記憶)

 しかし雪也母、犬キライならキライで「成績が元に戻るまで、シェリーはおばあちゃんに預かってもらいます! 面会不可!」と叱れば済んだ話じゃないですか。どうしてわざわざ「保健所送りにした」といらん煽りを入れたりしたのでしょう。 これじゃあ沈まぬ太陽がいるくせに旅人のコートを剥げたためしのない某国と同じです。
 っていうか普通の親は子供が犬屋敷に走った時点で真相バラして家に連れ帰ります。一週間も放置して無駄に保健所巡りをさせたりしません。

 しかし、そんな当方の心の叫びは全く通じず、愚かにも犬爺の家から強引に連れ出そうとしていた雪也母。
 祖母から預かった【メリーの思い出】の写真を見せると、彼女は急に動揺を見せます。母が動物嫌いだと思っていた雪也も驚きの表情。やはりメリーの存在は彼女にとって大きかったらしく、母親はようやくシェリーの居所を雪也に白状してくれました。

 おばあちゃん宅で一週間ぶりにご主人と再会できて大喜びのシェリー。愛犬の無事を知った雪也も心底嬉しそうです。
 これで万事解決かと思いきや……おそろしいことに雪也は「家には帰らない、僕はシェリーを連れて犬爺と暮らす」と言い始めました。

 あの親にしてこの子ありか!!!

 てめえ! 血統書付きのグレートピレネーズが予防接種も月イチのシャンプーもちゃんとしたドッグフードもなしに生きていけると思ってんのかこの若造が!! 血統書付きは純血交配の影響で抵抗力が弱いんだよ!! 獅子丸みたいにチクワと鉄アレイだけ喰ってて生きられるわけねえだろうが!!!(←ガッちゃんじゃないんだから鉄アレイは食べないと思います)

 雪也のことなどどうでもいい勢いでシェリーのために怒る当方(人でなし)。【犬のしあわせ】を考えろやボゲ! という思いで叩き付けた決めカードでしたが、

 「本気で犬たちを救いたいなら、自分なりの答えを見つけ出せ」

 と主人公がうまい具合にオブラートに包んでくれたおかげで、表向きは人でなし呼ばわりを免れることができました(なんて野郎だ)。
 そうですね。ちゃんと勉強して専門の技術や知識を身につければ、犬爺のように周りの人に迷惑をかけることも、犬に不自由な暮らしをさせることもない、本当の意味で犬の幸せのためになる道を見つけられるかもしれません。

 これまで意味を見出せなかった進学という道の向こうに、目指す犬の楽園を垣間見た雪也。その思いが変わらない限り、楽園の扉が閉ざされることはないでしょう。
 でも母親譲りの暴走癖は直そうな! 間違った楽園目指しちゃって『相次ぐフランダーステロ、死者30名超える』とか新聞に載るのは勘弁だぜ!!

【→ 第七話『キネマ狂想曲』へ続く】

 ちなみに六話Aと同じく、本章でも結末を14日まで引き延ばすことができます。才能開花を急ぎたい方は、翌日の2ターンまで無駄なく使い切りましょう。

本日の太陽 図書館にて遭遇、才能開花により職業Hのナノテク技術者に開眼。「得意学科は生かせそう」と言っているが、ナノテクってどんな学科のどんな勉強を生かせるんですか太陽君。

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