(2006.1.15掲載)


木こりのローソク橋 Jätkänkynttiläsilta

Kuva=Jussi

木こりのローソク橋(写真をクリックするとYouTubeから音楽が流れます。)

 ロバニエミのシンボルの橋を日本では単に「ローソク橋」として紹介されていますが,本当はこれは「Jätkänkynttiläsilta=木こりのローソク橋」といいます。Jätkäとは,英語で lumberman とか lumberjack(木こり)のことで,フィンランド語では loafer のらくら者・チンピラの意味もあります。

 英語では次のように言うとここのページ http://www.rovaniemi.fi/?deptid=7293 に書いてあります。
The ”Lumberjack’s Candle Bridge” was built in 1989.

 よくダイヤモンド社「地球の歩き方・北欧」には「サーメの松明をモチーフにした」とか「サーメの松明をイメージした」したというように「サーメの松明」が起源であるかのように説明されていますが,「サーメの松明」って見たことありますか。それに明りという意味では同じですが,松明であれば「ローソク」ではないですよねェ。

 それで「Jätkänkynttilä」をネット検索し,見つかった説明(フィンランド語)がこちらです。

 その要点を訳したものが次のとおりです。

木こりのローソク

 何十年もの間,木こりが針葉樹で手軽にコーヒーを沸かす火として使ってきました。また同様に野戦兵も戦場で手軽で心強い味方として使ってきたのです。
 「木こりのローソク」は,丸太の一方の端に縦に十字の切れ込みを入れ,この切れ込みに火つけを詰め込みます。これをまっすぐに立て火つけに火をつけ,コーヒーやかんをその丸太の上に置きます。湯は程なく沸き,その間に冷え切った身体を温めるというものです。野戦兵は,丸太を持ち歩き,この木こりの火で炊事用にも使っていました。
 現在では特別の集まりやお祭りとかクリスマスイブの庭の飾りとして使われています。

 木こりの火の作り方は,まず,乾いた直径20センチぐらいで,長さ1メートルほどの針葉樹または白樺の丸太を用意します。この丸太の一方の端を長手方向に20センチほど十字にチェーンソーを入れます。
 できた十字の隙間に火つけ材を詰めます。詰め終わったら丸太を直立させて,火をつけます。

 日照時間の少ない冬場の森の中では,遠目から見れば当然のことながらローソクに見えます。そこで「Jätkänkynttilä=木こりのローソク」というロマンチックな名がついたものと思われますが,極寒の中で生きる森林労働者や兵士たちの生きるための知恵だったのです。それも昔の話ではなく,チェーンソーが普及した時期からのものでしょう。
 従って現在のサーメも「木こりのローソク」を使うことはあるでしょうが,「サーメの松明起源説」については首を傾げます。そこでサーメ文化に詳しい現地の日本人に聞いた返事が次のとおり(青字部分)です。

 ロヴァニエミは,サーミ(サーミ人)の地方だからそれにこじつけて「サーメの松明をモチーフにした」とか「サーメの松明をイメージした」というのかも知れませんね。

 彼らはそもそも放牧民ですのでたいまつは使いません。また北部では木がなかなか育たないし太目の木はとても貴重で,住居やテント張りに使い,燃やすことなどタブーです。かれらがしたのは焚き火であって,生活の中で松明として使う意味などなかった。夏は白夜,冬は家の中か移動の時にはテントの中では暖房兼用。松明など持ってトナカイを移動させたらそれこそ彼らが防寒に着ているトナカイコート(外側はトナカイそのもの)が燃えるしね。そして又明かりをともすと足元は明るく見えてもその他のところが全く眼くらになるので歩けません。

 もともとは,きこりや木を運搬する(昔は川に流して運搬)する連中が一休みに暖と飲と食を同時に取るために売り物にならない枯れ木(これをケロ=keloという)を切って,酸素がまわるように隙間を入れたのです。(あんまり入れすぎもすぐ燃えてよくないし,十字が一番良し,長すぎるのもだめ。50cmから1m位がよし。そしてまた隙間の上のほうに火をつけ,下から空気がまわるようにすべきでまちがっても下部から火をつけないこと,下部からだと良く燃えるがすぐに終わるし崩れるし,高々と火があがってあぶないし,あとかたずけが大変。)よく乾燥している木は上部からきれいに燃え数時間もってくれるし,遠くから見ればまさにローソク。もともとは枯れ木(たいがい芯がくされるから枯れ木になるのでその芯をとって立てて空洞に火)をつけて使った。
 燃えそうでなかなかうまく燃えないものです,大概は下のほうが燃え切って上のほうが燃えきれないうちに崩れる。

 ロバニエミあたりではすごくきこりが盛んでしたし,とにかく川や沢があり下流の工場やら船につめるように木材を流し運んだ。あの川も昔は大きい沢でしたが今はダムが出来ておだやかな深い川になってつまらなくなった。ですからあのところにそういう形で橋を取り入れたのは良いことでしょう。
 とりとめのない答えですがごめんなさい。

 jätkä  は,初め野郎,奴とか度胸のある木材搬出人(森から馬を使って気を切り出す人)を指して言っていましたが,今では男性(子供も含める)を強めて言うときに用います。善悪共通(すごい奴,ひどい奴,賢い野郎,ずるい餓鬼,,,,というように)
 注 ある地方の方言では女性にも用います。

【実際にやるときの注意】

★隙間に詰める火つけ材は,白樺の皮が最適だが簡単に燃えるものなら何でもいい。

★チェーンソーのガソリンは,使用禁止。

★風の強い時は,森林火災を起こさぬよう見張りをしっかりすること。水の用意も。

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