コンポスト・トイレ(Komposti vessa)

 フィンランドの一戸建て住宅では,汚水道の整備地区を除いてトイレは母屋から離して戸外に作るのが一般的です。マイナス20度〜30度になる冬に,用足しに外へ出るのは勇気が要りますがこれが当たり前になってしまえば,まァ,たいしたことはありません。

 この外便所をフィンランド語では,käymälä とか huussi と言います。käymälä とはフィンランド語で「通うところ」という意味ですし,huussi はスウェーデン語の hus(フース,家や邸宅の意)がフィンランド語化した言葉です。「ちょっと邸宅に行ってくる」などというフィンランド人のユーモアが感じられます。

 さて,長野県八ヶ岳のふもとに小さな土地を求め,kesämökki(夏の小屋=冬場は使わない春から秋にかけて使う小屋で,別荘という程のものではありません)を建てました。小屋は,セルフビルドのミニ・ログハウスでフィンランドから輸入したものです。家族3人用で春から秋に使用し,冬は使わない。水道はあるが,電気がない。汚水管がないのでぼっとん便所かカーキャンピング用のコンパクトトイレ。こんな条件でしたので何かいいトイレはないか探していたところにフィンランドの雑誌記事を読み,それを私なりにアレンジしてこのようなコンポスト・トイレを作りました。

<コンポストトイレの原理>

 その前に原理をお話します。

(1) ぼっとん便所の最大の欠点は,尿と大便を一緒にすることです。一緒にすることによって腐敗が始まり,異臭を放ちます。悪臭の原因は尿(水分)です。用を足したら尿と大便をすぐに分離し,水分を蒸発させれば臭いはほとんどしません。 カラカラになった路傍の犬の糞が臭いを発しないのと同様に,大便をそのまま乾燥させればほとんど臭いはしません。

(2) 大便は穴の開いた桶で受け止め,尿は桶の底に開けた穴を通過して蒸発皿で受け止めます。 蒸発皿には混合材(枯れ葉,刻んだ藁,樹皮,おが屑など)や砂を混ぜたものを入れておき尿の蒸発を促進させます。
 ここの部分は,水分を蒸発させるための仕組みでこのシステムの重要な部分,即ち「ドライ・トイレ」です。

(3) 晩秋になって小屋を閉めるとき桶に溜まった大便を処理し,堆肥を作ります。

概 念 図
概念図

<外便所の作り方>

 平坦地に建てるなら少し高めの基礎を作ります。私の場合は写真にあるとおり傾斜地ですので傾斜の下側に90センチほどの空間があります。この空間が狭すぎるとコンポストトイレの施工面,大便の始末など管理面で嫌気がさします。70〜100センチぐらいの高さを保持した方がいいと思います(平地ですと数段の階段で昇ることになりますので高く感じるかもしれません)。

 基礎が出来たら根太を回し,その上に建物を作ります。私の場合はマリ18を組み立てました。数段組み立てたら風で飛ばされないように根太とマリ18とを金具でつなぎます。 建物が完成したら雨の吹き込み防止用に床下の空間に庇または衝立を取り付けます。これはいつも蒸発皿を乾燥状態に保つために必要です。

<コンポストトイレ実際の作り方>

<用意するもの>

(1) プラ舟 1個 (コンクリートを捏ねるための容器で,大きな日曜大工店にある。これが尿を蒸発させる皿となります。)

(2) レンガ 3個 (尿と大便を分離させるための空間を作る重要な役割があります。)

(3) 漬物桶 1個 (60リットル程度のもの。底に3〜5mmの穴を開け尿と大便とに分離すると同時に8〜9ヶ月間溜めておく容器となります。)

(4) ゴミ箱 1個 (尿と大便が飛び散らず床穴をまっすぐ下に通過させる飛散防止具です。角型蓋付ゴミ箱(便座から床下まで突き抜ける長さが必要)の底を抜き,便座のところに引っ掛けます。)

(5) 混合材 混合材には,雑草,木材チップ,樹皮,枯葉,刻んだ藁,おが屑などなんでも利用できます。うちでは暇な時,ベランダに座って皆で雑草刈りで出た枯れ草を鋏でチョキチョキ切って作っています。製材所が近くにある人はおが屑をタダでもらえるでしょう。

<製作上の留意点>

 稚拙な絵や写真を参考にしながらお読みください。

(i) お尻を乗せる穴の位置とプラ舟の位置(上下関係)を確認して位置決めをします。

(ii) 飛沫防止用の家庭用ゴミ入れを落し入れて床にその位置を書き,ジグソーまたは回し挽き鋸で穴をあけます(この時床が抜け落ちないよう補強をお忘れなく)。

(iii) 便所内にお尻を乗せる高さの腰掛け部分を作ります。床穴,(4),上の板の連携を確認して便座を取り付けます。

(iv) (1)の中に(2)を適当な間隔で置き,(4)の真下に(3)が来るように調整します。この時,便座と(3)との隙間が開きすぎていれば角材で,なければスコップで土を削り取り(1)の上下を調節します。

 以上が作り方の概要ですが,考えるよりも実際にやり始めれば色々アイディアが出てきて工夫するものです。

組み立て図

完成図  これが完成です。これをイメージして作ってみてください。
 便座が乗る座面に合わせて水平を出し,枠を取り付けます。
(床穴の下に桶が見えます。)
 ジグソーまたは回し挽き鋸で穴を開ける時,床が抜け落ちないよう補強します。
 古くなって捨てようと思っていた角型蓋付ゴミ箱がこんなところで役に立つとは思わなかった。蓋は外気の吹き込み防止です。
 用を足す時,便座を下ろすとぴったりです。
ホンカヌンミ墓地の墓参者用コンポストトイレ  この写真は,ヘルシンキの隣町,Vantaa市のHonkanummi墓地内にあったコンポストトイレです。
 用便後,赤いバケツにある樹皮を砕いたものを上からばら撒きます。下の便を受ける桶の半分はトイレの壁の外側にあり,時々回転させて大量の便を収容する構造になっています。

<使用と管理>

(i) (1)プラ船の中に混合材(雑草,木材チップ,樹皮,枯葉,刻んだ藁,おが屑など)と土を混ぜたものを10センチほどに敷く。もちろんレンガの高さ以下に敷きます。これが(3)桶と接していては分離する意味がありません。

(ii) (2)レンガの上に(3)桶を置く(桶の中にはフィルター代わりに藁なければ雑草をたっぷり詰め込んでおく,時間が経つとカサが小さくなるので大げさに入れておいても問題ない)。

(iii) 用便後混合材を大便が見えなくなるまで上から振り掛けます。また,トイレットペーパーは直接落とさずに分別しています(堆肥化しにくいため)。

(iv) 使用しているうちに(3)の穴が目詰まりすることがあります。こうなるとぼっとん便所と同じになりドライ・トイレの用をなしません。太い針金か尖らせた棒の先で穴を探し突っついて穴を広げてください。

(v) 1年間使用しても桶の中の量は1/3程度です。秋になったら春に向けてコンポスト作りをします。

<コンポスト作り>

 私ははじめ,コンポスト作りのために蓋付漬物樽の中でやってみました。しかし,樽に蓋をすると酸欠になり,内容物は腐るだけでカビが生え,これは失敗でした。
 そこで今では貫板で箱を作り,空気が発酵を促すようにしています。
発酵箱  雨よけと空気の循環を考慮した発酵箱

発酵箱 上の雑草を取り除くと堆肥化が進行している。

 発酵箱には夏の間刈った雑草,(3)漬物桶の内容物即ち大便,(1)プラ舟に入れた混合材の土を何層にも積み重ね,上から雑草を重ねて蓋をします。このとき発酵を促すためジョーロで水をまいておきます。春になったら切り替えして酸素を供給し,熟成を待ちます。


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