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余談になるが,北欧のフィンランドに,通称「東郷ビール」と呼ばれるビールがある。なぜ東郷ビールと呼ばれるかというと,ラベルの中央に東郷平八郎元帥の正装の肖像画が描かれているからである。当時,フィンランドはロシアの属国であった。バルト海を威風堂々と出て行くバルチック艦隊を見ながら,フィンランド国民は「これで東洋の小国日本もダメだろう」と思ったのも無理はない。
ところがバルチック艦隊は全滅したのである。民族意識は高揚し,ついに,フィンランドは強国ロシアからその独立を果たした。東郷ビールは,それを記念して東郷平八郎をラベルに残したのである。もちろん今でも売られているし,日本にも輸入されている(口絵4ページ参照)。
上の文章から推測するにバルチック艦隊はセントペテルブルク港を出発してフィンランドをかすめて日本に向かったように読める。
しかし,バルチック艦隊が出港した港はリバウ(現・ラトビアのリエパーヤ)で,全く見ることはできないし,したがってフィンランド国民が「これで東洋の小国日本もダメだろう」と思うはずもないのである。
この著者は有名な歴史学者であるが,史実によらない歴史はフィクションでしかない。
ちなみにこの著者が「バルト海を威風堂々と出て行くバルチック艦隊を・・」と言うバルト海は正確には「フィンランド湾」である(日本語版グーグルマップには間違いが多いのでご注意)。
(2012.3.19 追記)
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