溝上 泰(鳴門教育大学教授),片上宗二(広島大学教授),北 俊夫(文部省教科調査官)共編
「社会科授業を面白くするアイデア大百科 第6巻 単元別授業に使えるモノ図鑑」
明治図書出版 1995.8. p.141より

単元別授業に使えるモノ図鑑

B アミラ‐リ・ビ−ル(東郷ピ−ル)

【入手の方法】
 大手デパートの食料品(洋酒)売り場で購入できる。また,横須賀の三笠公園(記念艦三笠が保存されている公園)の売店でも購入できる。近くに購入できる場所がない場合は,輸入業者,日本ビール株式会社(東京都港区白金台5-8-7 Tel03-3446-0456)に問い含わせる。

【活用の学年・小単元】
 第6学年の「条約改正」に関わる実物資料として効果的である。
 日露戦争の日本海海戦の圧倒的な日本の連合艦隊の勝利は,世界海戦史上例を見ないものである。世界を驚かせたその勝利の中心的な人物が,連合艦隊司令長官東郷平八郎である。彼は,この勝利によってイギリスのネルソン提督と並び称され「東洋のネルソン」と呼ばれた。
 当時ロシアの支配下にあったフィンランドでは,その勝利に喜び,東郷は一躍国の英雄になった。後に発売されたアミラーリ(提督)ビールのラべルに東郷が描かれたのもうなずける。(このビールのラべルには,東郷,ネルソンなどの数人の有名な提督がシリーズで登場する。)しかし,現在このビールは,フィンランドではなく,オランダで製造さている。工場がオランダに移ってからは,缶のビールは製造しなくなり,瓶だけとなった。
 以上のような歴史的な背景があることを教師が理解した上で,彼が世界的に有名だったことを,子どもに気づかせたい。

【活用のポイント】
 日露戦争の大陸での戦いで多くの犠牲者を出したことを学習した後に,各グループにビール瓶を渡し,観察させる。
 子どもは,日本人が外国製品のラべルに描いてあることに気づき,名前のローマ字を読み東郷平八郎であることを知る。そして,子どもは,「なぜ,日本人が外国のビールのラべルになるほど有名なのだろう。」という問題意識をもち,追求を始める。
 その際,ロシアと国境を接しているトルコも,東郷は英雄として扱われ,赤ん坊や道路の名前に「トーゴー」という名がつけられたことも,補説しておくとよい。
 この後の学習活動や資料によって,様々な学習展開が考えられるが,ここで注意しなければならないことは,東郷のイメージを,「世界的に有名な人物」「日本海海戦でバルチック艦隊に勝った時の連合艦隊の司令長官」「たいへん運のいい人物」などの歴史的な事実をもとにしたものとしてとらえさせ,「好き」「嫌い」「偉い」などの主観的なものとしてとらえさせるべきではないということである。

参考文献
清水勲編「続ビゴー日本素描集』92 岩波書店
NHK編「日露戦争」1990 日本放送出版協会
前田哲夫著『東郷元師は何をしたか』89高文研
              <関ロ修司>

 


 

 

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