武田龍夫著 「白夜の国ぐに −米ソ対立の谷間で−」 中公新書 1985.5.25 p.39より

 

   白夜の国ぐに −米ソ対立の谷間で− 中公新書
(ちなみにフィンランド独立の遠因を作る契機となった日本のロシア撃破は,ロマノフ王朝を揺さぶり、革命への道を開いた歴史の中の一環として記憶されており、フィンランドの現代史においても,同国独立の関連で日本と日露戦争に言及することがずい分と多いのである。実際当時生まれた子供にノギ,トーゴーの名前をつけるフィンランド人があちこちにいた。また明石大佐の諜報機関による武器密輸船に対する資金援助の工作なども,フィンランド独立の舞台裏での一挿話と言うべきだろう。例えば英国から一万五五○○丁のライフル銃および弾薬二五○万発,爆薬三トンを運んだ汽船グラフトン号の航海などがその一つであった。これらについては旧陸軍調査部の謄写刊行になる明石復命書『落花流水』に詳しい。今でもトーゴー元帥ラベルのビールがあったりするのはこの背景からである。それはロシアと国境を接して,歴史的に戦いを繰り返してきた同じトルコ国民の、日露戦争における日本勝利に対する熱狂ぶりと恐らく似たようなものであったろうが,フィンランドの場合は直接建国独立の苦悶と結びついたことで、より爆発的な日本に対する特殊な感情を解き放つことになったものであろう。とにかくフィンランドはこののちも満州国の承認と防共協定への参加で、日本と少なからぬ関係を持つことになる。)

 


 

 

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