「招待状〜?」
エルロン家に響く間抜けな声。
「そう、何でも武闘祭らしいよ」
そんな兄に便箋の中から取り出した手紙に目を通しながら答えるリリス。
「舞踏祭って、俺の柄じゃないよ」
「お兄ちゃん、字、間違えてるでしょ。武闘祭だよ」
「武闘……祭?」
「そ、自分の武力で闘うお祭り」
「なるほど、それなら俺に合ってるかも」
「それじゃあ、行こう」
「え? 今からか?」
「うん、会場までは今日から出発しないと間に合わないから」
「随分行き成りだな……まあ、仕方ないか」
こうして、スタンとリリスは武闘祭に出るため家を出た。
テイルズ歴代最強決定戦
「さあ、着いたぞ……って、ここどこ?」
スタンはそう言って辺りを見回す。
スタンたちがいるのは小高い丘。そこから見えるのは鬱蒼と茂った密林や切り立った岩山、澄み切った湖に何もない平原。そして、海。
つまり、そこは島。しかも、お約束のごとく周りには他の島の影はなく、所謂絶海の孤島と言うやつだった。
「分かんないよ。変なワープ装置に乗せられて着いた先なんだから」
そう言って、リリスはワープ装置を見遣る。
そのワープ装置は壊れたのか意図的に停止したのか――おそらく、後者だろうが――うんともすんとも言わない。
仕方なく二人であたりを見渡してみると、不意に場内アナウンスのようなものが周辺に響いた。
――ピーンポーンパーンポーン
『ええー、これより、武闘祭を開始いたします。ルールはいたってシンプル。ただ、最後の一人になればいいだけです。無論、一定時間毎に残り人数をアナウンスいたしますし、最後の二人になったときもアナウンスいたします。それでは、御武運を』
――ピーンポーンパーンポーン
「え〜と、つまり?」
「バトルロワイヤルってことだね」
「そんなのあり?」
「まあ、人数は分からないのはともかく、行き成りスタートはお兄ちゃんみたいな人には辛いかも」
「なんだと」
「ともかく、兄妹同士で争うのも不毛だから別れよう」
「別れるったって」
「お兄ちゃんはあっち、わたしはこっち。それじゃあ、また後で会おうねお兄ちゃん」
言うが早いか、リリスは丘を駆け下りていった。
「元気なやつ……」
スタンはそう呟いて、リリスの指差した方向にとぼとぼと歩いていった。
――一方その頃、そこらかしこで……
「バトルロワイヤル……?」
「力を試すには丁度いいかな」
「なんか、めんどくせえな」
「すっげぇ、楽しそう」
「俺が、最強になるぜ」
様々な意気込みがひしめいていた。
――ドオン
密林の中に響く轟音。
なぎ倒されていく木々。
そして、その奥から現れた銃を持った大男。
「がーはっはっは、隠れてないで出て来いってんだ」
大男――フォッグは銃を担ぎながら大声で笑う。
そして、その様子を木の上と木の根元からそれぞれ窺う弓使いの男女。
「ち、くそ。アレは反則だぜ」
「その反則を倒すために手を組んだんだから、出し惜しみしないで、最強の技で挟み撃ちにするよ」
「最強の技? それだとあんたを巻き込むぜ」
「かまやしないよ。あたしもあんたを巻き込むおそれがあるしね」
「なら、やるか」
「そうだね」
二人は互いに納得しあうと瞬間的にフォッグの左右に回り込む。
「おう? やられに出てきやがったな」
フォッグがそう言ってチェスターに向かって銃を向ける。その刹那――
「やられんのはてめえだ! くらえ、屠龍!!」
「ワイルド・ギース!」
二人の最大の技がフォッグを挟み撃ちにする。
「おう? 挟み撃ちか……がっはっは、俺様をなめるなよ」
「何!?」
「バーニングフォース!」
フォッグの銃から放たれた火炎弾が屠龍の初弾を相殺する。
「ダークイレイザー!!」
そして、続けて放たれた暗黒弾が屠龍の残りの矢を打ち落とす。
「エレメンタルマスター!!!」
そう叫び、フォッグは頭上で展開しつつある光と共にナナリーの放つ矢を悉く極太のレーザーでかき消していった。
「うそ……だ、ろ?」
「俺たちの最強技が……」
「がーはっはっは、だから、なめるなと言ったんだ」
高笑いしているフォッグ。
その姿を見遣りながらナナリーの後ろに音もなく舞い降りるエプロンドレスの少女。
リリスである。
「一列に並んでいると危ないですよ?」
一言呟く、と同時に――
「サンダーソード」
彼女が突き出した掌から紫色の光線が放たれていた。
「きゃあ!」
「おう?」
「なっ!?」
さっきの攻防で消耗していた所為か、誰もが反応できずに綺麗に直撃した。
「ふふふ、後方注意ですね」
リリスはエプロンドレスの裾を摘まんで優雅にお辞儀すると、どこかに駆け出して行った。
――フォッグ・チェスター・ナナリー……リタイア
――ギィン、ガキィーン
何度目かの鬩ぎ合いを負え距離を離したレイスは息を整えた。
「ふう、まったく妙な剣捌きをする。しかも、二人とも魔法剣士と来た。本当、私にはどうして損な役回りばかり回ってくるかな」
「あんただって、すげえと思うけどな。二人掛りで攻めきれねぇからな」
「魔法剣士などたいしたことはない。呪文詠唱中は無防備だからな」
「それでも、闘いにくいことは変わらないよ。さて、息も整ったことだし、そろそろ行こうか」
そう言った直後、レイスの体がぶれ、クラトスの後ろに回りこむ。
「魔神剣・双牙!」
それを見越したようにゼロスが円の軌道を取る魔神剣をクラトスに向けて放つ。
「なるほど、だが! 風雷神剣!」
突き出した剣が纏う風圧が魔神剣の検圧を相殺し、そのままクラトスに向かう。
――ガキィーン
「くっ!」
ぎりぎりで防ぐ。が――
――ズドン
「かはっ……」
剣目掛けて落ちてきた雷がクラトスに直撃する。
「だんな!」
「余所見はいけないなっ!」
ゼロスの後ろに瞬間的に出現するレイス。
「なに!?」
ゼロスは振り向くがそこには誰も居ず、
「爪竜斬光剣」
その一言だけが聞こえた。
――ゼロス・クラトス……リタイア
「やっぱり、魔術師同士ってコンビ組むんだね」
「そのようだな」
「何組いるかな?」
「五組、十人だ」
「三つ巴……ならぬ、五つ巴?」
「そうだな、来るぞ!」
五組の魔術師の片割れがそれぞれ最短で呪文を詠唱する。
「アイスニードル」
「ライトニング」
「シャドウエッジ」
「フォトン」
「フレアショット」
――ズドーン
五人の呪文が五組の中心でぶつかり、炸裂する。
「オリジン」
その爆風に煽られながらもクラースは手を突き出し根源の精霊を召喚する。
「ディストーション」
しかし、その精霊をキールが時の魔術で捕縛する。
「今だ、フィアフルストーム」
「僕も行くぞ! インディグネイション」
「あら、打ち合いなら負けないわよ。シャイニングレイ」
最強クラスの呪文同士の応酬。しかし、全てが相殺しあい、ただそこに爆風が吹き荒れるだけにしかならない。
「仕方ないな、アーチェ最強呪文で一気に行く」
「了解」
「いくぞ! プルート!!」
「ビックバン!」
その瞬間、その声に反応してその場にいた全員が己の最強呪文を唱える。
「アプソリュート!」
「シューティングスター!」
「シルフィスティア!」
「クレイジーコメット!」
「インディグネイト・ジャッチメント!」
「セイグリッドシャイン!」
「ディザスターロアー!」
「ディバインセイバー!」
刹那、閃光と共に巨大なきのこ雲がその場に出現した。
――アーチェ・クラース・キール・メルディ・リアラ・ハロルド・ジーニアス・リフィル・マオ・ヒルダ……リタイア
――ドオン
遠方で聞こえる爆発音。
それに反応して、スタンは音の聞こえた方を見る。
「あちゃー、あの爆発に巻き込まれた人、全員リタイアだよな」
「おい、よそ見していいのか?」
コングマンは不適に笑い、スタンに詰め寄る。
「いや、近づいて来たら分かるから」
「てめぇ、なめてんのか?」
「そんなことないけど……なんで、ジョニーまでいるわけ?」
「ああ、俺かい? 一人だと勝ち目がないからかな」
「そう言うことだ、いくぜ!」
コングマンが普通に直進して拳を振るってくる。
「そんな見え見えであたるはずが……」
「あたれ〜、あたれ〜」
突然、コングマンの後ろから不思議な歌声が聞こえてくる。
その刹那、コングマンの体が淡く光り、その拳がスタンの目から消えた。
「え? なに?」
――ガン
「うわっ!?」
「どうだ、これが俺とジョニーのコンビネーションだぜ」
「ただ単に、卑怯なだけじゃないか」
「なにぃ?」
「もう、怒った。本気で行くからな。獅吼爆炎陣!」
言ったその瞬間に炎を纏った獅子の闘気をコングマンにぶつけ、ジョニーのそばまで押しやる。
そして、大地に剣を突き立て大地から爆炎を噴出させた。
「ぐお〜!」
「くっ」
「きゃあ」
その瞬間、なぜか女の悲鳴が上がる。
「え? フィリア?」
その悲鳴の正体は運悪く、スタンが奥義を出した瞬間にその場に来てしまったフィリアであった。
「あ〜、やっちゃった」
こうして、スタンは図らずとも三人を撃破した。
――コングマン・ジョニー・フィリア……リタイア
「ポイハン」
チャットは掛け声と共にあたりに、緑色のピコピコハンマーをばら撒く。
「散力符」
「曼珠沙華」
しかし、それは一つも地面に落ちることなく、空中で破壊されていく。
「これならどうです。エターナルスロー」
チャットはバッグに入っているものを手当たり次第に投げる。
「どうしろってんだよ……きゃあ!!」
しいなの用いる符術ではさすがにこれを防ぐことは出来なかったのか、直撃を食らってしまう。
「これは、曼珠沙華では打ち落とせませんね。では、伊賀栗流忍法奥義・児雷也」
すずがそう言うと空中から大蝦蟇がチャットの上に落ちてきた。
「ぎゃん! これはいったい……いやーーーーーーー! 蛙はいやですーーーーー!!!」
そういって、チャットは気絶してしまった。
「落とす場所を間違えてしまいました」
すずはそう言って、その場を去ろうとしたとき、ふと金色に光る玉を見つけた。
「なんでしょうか?」
すずはそれに興味を持ち触れた瞬間――
――バチバチバチ
「きゃああああぁぁぁ……し、し〜び〜れ〜る〜」
じつは、それはチャットが手当たり次第に物を投げているときに偶然にも落としてしまったパラライボールだった。
――しいな・チャット・すず……リタイア
「爆灰鐘!」
「天雷槍」
――ガギィン
振り下ろされる斧と振り上げられる槍が交錯する。
「やるなおっさん」
「ふむ、筋はいいようだ」
「なら、これでもくらえ、神空割砕人!」
「む、滅翔槍」
二人の武器は同じ軌道を取り、二人は互いに飛び上がる。
――ガギィン
そして、空中で再度武器が交錯する。
「ち、続けてくらえ! 震天裂空斬光旋風滅砕神罰割殺撃!!!」
「く、迅雷天翔撃!!!」
地面におりた瞬間、互いの最終奥義を繰り出す。
そして、二人の力の衝突にその場に閃光が走った。
「おっさん……あんた、やるな」
「少年、君も、な」
二人は互いの健闘を称えるとその場に倒れた。
――ロニ・ユージーン……リタイア
「いくぜぇ、牙連撃!」
「連牙弾」
「飛燕連脚」
「飛燕連脚」
高速で衝突した三つの影は間合いを離し、その場に止まる。
「ち、実質二対一だってのに、攻めきれねぇなんて……」
「素晴らしい動きだ」
二人の男は対峙している少女に言葉をかける。
「そんなことないよ。二人とも凄く強い」
少女はそう言うと、二人を直線上に捕らえられる位置に瞬間的に移動する。
「だから、一発で終らせるよ。獅吼爆砕陣!」
瞬間、少女は三連続で巨大な獅子の闘気を放った。
「ぐわぁ」
「くぅ」
二人の男は獅子の闘気の直撃を受け、彼方へと吹き飛んだ。
「ふう、いけるいける」
「では、私の相手をしてくださいね」
突然に後ろから掛けられた声に少女――ファラは身構える。
「行きますよ、雷神十連撃」
「く、殺劇舞荒拳」
ファラとリリスの拳と蹴りが交錯する。
――ドン、ドス、ガン、ガキ……
どこまで続くのだろうかと言うほどの長い攻防。
そして、何度目かの衝突の後、ようやく勝負が決しようとした。
「く、はぁっ」
さすがに疲れが見えたのかファラが不意に体勢を崩す。
「もらった。雷神拳」
「きゃあ」
ファラの一瞬の隙を突いたリリスが辛くも勝利を収めた。
――ティトレイ・リーガル・ファラ……リタイア
――ガァン、ギィン、キィィーン
打ち合わされる剣の音が森の中に響き渡る。
現れては、自分の得物と相手の得物を交錯させる。
そんな戦いが、かれこれ一時間。休む事なく四人で続けられていた。
「いい加減、不毛な戦いだ」
そう呟いた彼は、一人無防備に剣を鞘に入れたまま木蔭から姿を現した。
「そろそろ決着をつけようってことかな?」
「いいだろう、受けてたつよ」
「……戦う」
それに呼応してか、今まで戦っていた者達がそれぞれ現れる。
「いくぞ! 爪竜連牙斬」
「斬!」
「双月爆連舞」
三人が一斉にウッドロウに切りかかる。
しかし、ウッドロウは避ける素振りすら見せずにその場に佇む。
そして、三人の攻撃が当たる。刹那――
「裂空刃」
瞬間、風の刃が三人を切り刻む。
「ぐあっ」
「うわっ」
「……くっ」
その攻撃で二人は怯むが、最後の一人はそのまま突っ込んできた。
「何? うわっ」
――ドーン
立ち上る砂煙。
それが晴れた先には、巨大な斧を持った少女が一人だけ立っていた。
「……損傷、甚大……行動不能」
少女はそう呟くと、その場に倒れた。
――レイス・マリー・ウッドロウ・プレセア……リタイア
各所で激しい戦闘が繰り返されえる中、物凄く静かな戦闘が行なわれていた。
「ここに人が通れば、ブービートラップが……」
「むふふ〜、落とし穴になんて誰も気付きませんよね」
「うぅ〜、ロイド達どこ行ったのかな〜?」
二人がそれぞれ怪しげなワナをはってあるエリアに迷い込む兎……もといコレット。
「来たわね、後はかかるのを祈るだけ」
「むふふ〜、早く引っかかってくださいですぅ〜」
そして、コレットはそれに誘われるがままブービートラップに引っかかる。
「あれ? なにこ……」
――ゴォーーー
「え、え、え〜!!!? 何で、木が降ってくるの〜?」
「きゃわー、助けてください〜!!!」
コレットの頭上からチェルシーが乗った巨木が落ちてきた。
――ズゴゴーーーン
そして、そのまま下敷きになるコレットとチェルシー。
「やったわ」
その様子を見て、喜び勇んで駆け出すアニー。しかし――
――ズッ
「え?」
――ボッ
「きゃあぁぁぁぁーーーーー………」
チェルシーが作ったであろう落とし穴にはまって、落ちていった。
いったい、どれほど深いのだろうか?
――コレット・チェルシー・アニー……リタイア
「たく〜、あたしが何でこんなことしなきゃいけないのよ」
文句を言いつつも、警戒を怠らずに歩くルーティー。
「ルーティーさん」
そのルーティーの警戒網に引っかかることなく、後ろから声をかけるリリス。
「あんたは……確か、スタンの……」
「はい、お兄ちゃんの妹です。ところで、ルーティーさんがここにいるってことは、ルーティーさんも参加者なんですよね」
「と、言うことは……あんたも?」
「はい。ですから、是非闘ってください」
そう言ってリリスは戦闘態勢をとる。
「スタンの妹だからって手加減しないわよ?」
「はい、こちらもするつもりはありません」
刹那、リリスの姿が歪み、
――ビュン
ルーティーの真横にいきなり現れ、拳を振るう。
「甘いわよ。アイスニードル」
それを難なくかわしたルーティーはそのまま晶術を放つ。
しかし、リリスはそれを眉一つ動かさず打ち落とす。
「ふう、やっぱりまともにやってもダメですね。ここは一つ、弱点を攻めさせてもらいます」
そう言って懐から取り出したのは、100ガルド。そして、それをばら撒く。
――チャリーン
「サーチガルド!!」
ケチの習性か、即刻探し出すルーティー。
そこに、ニッコリ笑ったリリスが近寄る。
「戦闘中にそんなことやっちゃいけませんよ」
その瞬間、リリスの一撃がルーティーの意識を刈り取った。
――ルーティー……リタイア
「おい、そこの仮面」
道なき道を歩むジューダスに不意に声がかかる。
「過去の亡霊が何の用だ?」
ジューダスは、不機嫌そうに声の主――リオンの方に振り向く。
「ふん、そう言う貴様は僕の弱い心か」
「何だと、貴様の方が弱い心だろう」
「ならば、どちらが弱い心か決着をつけるぞ」
「望むところだ」
二人は対峙したままお互いをにらみ合う。
「余計なものはいらない。一撃で決める。魔人闇」
「僕は、過去を断ち切る。魔人煉獄刹」
二人がほぼ同時に最終奥義を放つ。
力と力の激突があたりに暴風を巻き起こし、視界が閉ざされる。
そして、二人は立ったまま剣を打ち合わせている状態で気絶していた。
――リオン・ジューダス……リタイア
「散葉塵」
「虎牙破斬」
――キィン
二人の剣が弾きあう。
「やるじゃんか、お前」
「お前こそ、二刀流って言うんだろそう言うの」
二人の少年は互いを褒めあう。
「でも、俺の方が強いけどな」
「何言ってんだよ。俺の方が強い」
「やるか?」
「おう」
が、やはり子供だったのか、いつの間にか喧嘩腰になっている。
「しゃあ、お互いの最強技で勝負だ」
「望むところだ」
「いくぜ、天翔蒼破斬」
「くらえ、翔王絶憐衝」
お互いの最強技がぶつかり合う。
その威力は子供と言えども、凄まじく烈風が巻き起こる。
二人は互いに攻撃を受けつつも最後まで奥義を放ち続け、その場に倒れこんだ。
「やるな、お前」
「お前もな」
青春とか言うやつだった。
――ロイド・カイル……リタイア
――ギィン
どれほど切り合っただろうか?
かれこれ、小一時間は同じ相手と切り合っている。
そう思えるほど、濃度の濃い戦闘を出会ったときから行なっている。
――キィーン
ようやく、鍔迫り合いを終えて息を吐く。
「強いね。しかも、剣の軌道まで似ている。どこの流派だい?」
「我流だよ。もともと猟師だしな」
「我流でそこまでの剣技を? すごいな」
「そんなことより、そろそろ決着をつけないか?」
「そうだね。なら最高の技で決着をつけようか」
「ああ、吠え面かくなよ?」
「いくよ、冥空斬翔剣!」
「いくぜ、極光剣!」
二人の振り上げた剣がぶれ、そのまま振り下ろす。
奇しくも二人の奥義の軌道までほぼ同じ。
そのまま、二人は剣閃のなかに飲み込まれていった。
――クレス・リッド……リタイア
氷の剣士と炎の剣士。
相性で言えば、抜群と言える相克した力を持つ剣士が対峙していた。
丁度半分。二人の間には世界の違いがあった。
片方は灼熱地獄。
片方は氷結地獄。
二人が本気を出して闘った結果がこれだった。
そして、二人は互いに構える。
お互い言葉などもう要らず、次で決着を付ける。ただ、それだけを考えていた。
「崩龍無影剣」
氷の剣士――ヴェイグが先に動く。
氷の刃を自身の周りに纏い突進してくる。
「皇王天翔翼」
炎の剣士――スタンがそう叫び、自らに炎を纏い、自身の姿を鳳凰の姿に変えた。
そして、そのままヴェイグに向かい突っ込む。
全身に炎と周りに氷の刃では、さすがにヴェイグに分が悪かったようで、ヴェイグの体が吹き飛んだ。
――ヴェイグ……リタイア
「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ」
辛くもヴェイグに勝利したスタンは剣を大地に突き立て、荒い息をはいていた。
「お兄ちゃん、やっぱり勝ち残ってたんだ」
そこに現れるリリス。
「リリス?」
「うん。じゃあ、お兄ちゃん。一戦所望仕る」
「どこで覚えたんだ? そんな言葉」
苦笑いしつつも、剣を構えるスタン。
そして、二人が走り出し、突撃する。刹那――
「タイムストップ」
よく通る声。
そして、世界の時間が止まる。
「すみません。こうしなくては私では勝てなくて……」
そう言いつつ、ミントは止まっている二人に歩み寄る。
「えい」
――ポカ
「やぁ」
――ポカ
気の抜ける掛け声と共に二人の後頭部を殴る。
そして、ちょっとだけ二人から距離を離すとぺこりとお辞儀した。
刹那――
――ドオーーーン
二人が勢いよく、地面にのめり込んだ。
――スタン・リリス……リタイア
こうして、武闘祭は幕を閉じた。
「それにしても、こんな勝ち方でよかったのでしょうか?」
……幕を閉じたのだ。
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あとがき
HAHAHAHAHA…………
分かってる、分かってるから何も言わないで(泣
いや、それでも何かある方は何なりとどうぞ。本当にこれは疲れました。
ある意味、18禁物を書くより(書いたことあるの?
まあ、気にしない気にしない。
私のSSの実力はこんなもんですよ。ホント。
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