青空がどこまでも続いていく。
見渡す限りどこまでも。
この青空をあの人も見ているのだろうか?
無論、あの子も……
The Blue Sky
あの夢幻の夏から三年。
私は学校を卒業した後あの町を抜け出し、遠くの町で一人暮らしをしながら大学に通っている。
当然ながら、みちるにも最近会っていない。
「寂しい……です」
今更ながらそんな事を呟いてしまう。
みちるだけではなく、あの人にも会えないのだから仕方ないと言えば仕方ない……はず。
「大丈夫……会えます。もうすぐ」
誰に言ったわけでもない呟き。
最近、こんな独り言が多くなってきている。
……でも、本当にもうすぐ会える。
ふっと、窓の外を見る。
流れていく景色が徐々に私の故郷のものになっていく。
そう、私は帰郷するためにバスに乗っている。
電車は、未だ廃線のまま。もともと、田舎だしそんな簡単に開通するはずがない。
まあ、私としては開通しない方がいいのだけど……
――ビー!
バスの停車を知らせるベルがなる。
私のほかにもあの町に降りる人がいるらしい。
――プシュー
バスが停車する。
私は荷物をまとめ席から立ち上がる。
そのとき、不意に気付く。
……あれ? 私のほかには乗客はいない……?
「お客さん、降りないのかね?」
バスの運転手が不思議そうな顔で私を見る。
「あ、降ります」
そうして、私はまたこの町に戻ってきた。
よく見知った町を歩く。
三年前のあの日と何一つ変わっていない。
そう、このうだるような暑さも、この切なくなる潮風も。
「……帰って来た」
学校の前に来てようやくその実感がわく。
何故、駅に先に行かないのだろう?
当然の疑問。でも、私は答えを知っている。
「みちる……怒ってるかな?」
さよならも言わずに飛び出した事を今更後悔する。
「……それでも、会わなきゃいけません」
そうだ、後悔なんてしても始まらない。今はすぐにでもみちるに会いに行くことが先決だ。
私は踵を返すと駅へ向かう。
あの、思い出の詰まった駅へ。
どんな顔をして会えばいい?
どんな台詞で挨拶すればいい?
どんな言葉で謝ればいい?
頭の中で堂々巡りが続いていく。
しかし、答えが見つかる訳がない。
それでも、私は駅への道を歩いていく。
駅が見えた。
その前には赤い髪の女の子と黒い服の青年がいる。
何かを話しているようだ。
女の子が楽しそうに青年の話を聞いている。
不意に、女の子がこちらを見る。
一瞬、きょとんとした顔を見せたけどすぐに満面の笑みになってこちらに走ってくる。
「みなぎ〜!」
――ドン
「……みちる?」
「やっぱりみなぎだ〜! 学校どうしたの?」
「夏季休校です」
「かききゅうこう? それって美味しいの?」
「お休みです」
「へぇ〜、お休みなんだ〜」
「そうです。ところで、みちる……」
「あ、そうだ〜。美凪に会いたいって人がいるんだ〜」
そう言って、みちるは私のもとからあの青年の方へ駆け出す。
不思議なほど、みちるは私のことをなんとも思ってないようだ。
「みなぎ〜! はやく〜」
みちるが大声で私を急かす。
私は少しだけ早歩きでその青年の前に立つ。
「ほら、この人だよ」
みちるが彼を指差して楽しそうに言う。
私は彼をまっすぐ見つめる。
彼はどこか恥ずかしそうにけれども成し遂げたぞというような目で私を見つめ返す。
『おかえり』
私と彼の言葉がハミングする。
少しだけ可笑しい。
『ただいま』
また、ハミング。
今度は三人とも大笑いする。
一通り笑った後、私たちは帰ることにした。
とりあえず、明日話そうということになったから。
帰路につきながら、抜けるような青空を見上げると――
「みなぎ〜! また明日ね〜!」
――みちるの元気な声が背中にかかった。
そのとき、三年越しの夢が今現実に変わった気がした。
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あとがき
せんせー! 何か変ですこのSS!!
……失礼しました。白犬です。
なんて言うか、初めてAIRのSS書いたんですけど、ムズイですねぇ〜。
もともと、完成度の高すぎる作品故なのか話がまとまらない。
それでも美凪は好きなキャラだったため何とか書き上げました。
はぁ〜へビィだぜ。リクエストをくださったアルキリアさんよければ感想を戴きたいですw
ではでは、白犬でした。
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