遂にこの日が来た……

俺はこの日のために生きて来たと言っても過言ではないだろう。

何故ならそう今日は……バレンタインだ!









北川君のバレンタイン大作戦










――AM 7:00

「とりあえずはやっぱ水瀬だよな」

 本当は美坂から貰いたいのだがやはりまずは安全に行くべきだろう。

 そんなこんなで俺は水瀬家の前にいる。

「まずは相沢を迎えに来たふりをして、元気よく水瀬家に入る」

 そうすればあの水瀬のことだ、北川君あげるよって感じでくれるに違いない。

 あわよくば秋子さんからも……

「ふふふっ、完璧だ。完璧すぎる」

 思わず含み笑いしてしまう。

 おっと、平日の朝っぱらから他人の家の前で笑っていては変質者に間違われる。

「では、いざとつにゅ……」

「だお〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

――ビクッ。

 入ろうとした瞬間、水瀬の鳴き声(?)が響き渡る。

「な、何だ……はっ、ま、まさか」

 前に相沢から聞いた秋子さんの必殺・謎ジャムか?

「やばい。直ちに戦線離脱! とわぁ!!」

 俺は脱兎のごとく逃げ出した。











――AM 7:30

「つ、疲れた」

 俺はあの後一気に学校まで来てしまった。

「しくじった。水瀬家にあんなものがあるとは……こんな事なら美坂の家から行くべきだった」

「あたしがどうかしたの北川君」

「み、美坂?」

「何でそんなに驚くのよ?」

 見るといつものように半眼で腕を組んだ美坂が立っていた。

「み、美坂。今日もいい天気だな」

「曇ってるわよ」

 即、反論される。

「じゃ、じゃあ。今日も綺麗だな」

「また変なものでも食べたの北川君?」

 脊髄反射並みのスピードで扱下ろされる。

 美坂、またって……

「ところで、相沢君も名雪もまだ来てないわよね」

「うんにゃ、来てないぞ」

「そう。渡したいものがあったんだけど……」

 わ、渡したいもの? 美坂それって……

「来てないんなら後で良いわね」

 そう言って美坂は他の友達のところに行ってしまった。

「俺にはないのか?」











――PM 12:30

「おい、北川。学食行くぞ」

 相沢が俺を誘ってくる。

「なにぼさっとしてるのよ」

 美坂もそう言って立ち上がる。

「おお。でも、水瀬ほっといていいのか?」

 そう言って席で熟睡している皆瀬を指差す。

「俺が起こして連れて行くから、香里と北川は席取っといてくれ」

 そう言って相沢が水瀬を起こしにかかる。

「しょうがないわね。行きましょ、北川君」

 教室を出て行く美坂。

 こ、これは、千載一遇の大チャンス?

「ま、待て、美坂」

「何よ?」

 先を歩いていた美坂が忌々しげに振り向く。

 俺なんかしましたか?

「きょ、今日は何の日か知ってるか?」

「バレンタインデーでしょ。それがどうかした?」

「い、いや、どうもしてないけど……」

「そう。ならさっさと行きましょ」

 スタスタと先を歩いていく美坂。

 そこまで分かってるならくれてもいいんじゃありませんか?

 その後、学食帰りに一人トイレに行って戻ってきたら、美坂が相沢と水瀬にチョコをあげていた。

 何で、俺だけ……











――PM 5:00

「はぁ、夕日が目に沁みるぜぃ」

 俺は屋上の上で黄昏ていた。

 今年も美坂のチョコほしさに駆けずり回ったが、結局手に入らなかった。

「もう諦めようかな……」

 結構長い付き合い――だと思ってる――なのに未だに貰った覚えがない。

「美坂ぁ〜」

「何よ?」

「……? 幻聴が聞こえるなんて俺もきたかな……」

「幻聴って何が?」

「幻聴と会話できてる。いよいよ持ってヤバイのかな俺」

「あっそ、チョコレートいらないんだ」

「そうそう、チョコ……ん? チョコ?」

 急いで振り返るとそこには、いつものように腕を組んで半眼で腕を組んだ美坂が呆れたように俺を見ていた。

「み、美坂?」

「あたし意外誰がいるの?」

 ホントに美坂か? 幻じゃないよな?

「はい、北川君」

「美坂、これって……」

「チョコレートよ。言っておくけど義理だから」

 そう言って包みを差し出す美坂の顔は夕日の所為で赤く見えた。

「チョコ……? やったー、美坂からのバレンタインチョコだー!」

「うるさいわね、チョコ一つで」

「だって、貰えると思ってなかったから……ところで美坂、何でこんな時間まで学校に居たんだ? も、もしかして……」

「勘違いしないで、部活があっただけよ。それにそのチョコレートだって後輩の子に配った物が一つ余っただけなんだから」

「み、美坂ぁ〜」

「何泣きそうな顔してるのよ。ほら、帰るわよ北川君」

 そう言って美坂は踵を返して校舎の中に消えていった。

「お、おう。待ってくれ美坂」

 俺は慌てて美坂を追っていった。





 しかし、北川は気付いていなかった。香里の顔が赤かったのは夕日の所為だけじゃなかったことを……





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あとがき

どもども、香×北肯定派の白犬です。

長々とお送りした「北川君のバレンタイン大作戦」ですが……
う〜ん、どうでしょう?(長嶋元読売巨人軍監督風に

作品説明に一部誤りが!!
説明のところでは美坂チームとなってますが、実態はかおりんと北川君のほのぼのでした。
でも、美坂チーム一応は全員出てるということで許してください。

感想とか聞かせてくれると嬉しいです。
メールや掲示板で待ってます。
ではでは、白犬でした。





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