賑やかな(?)昼食後――
茜と薫は昼食の後片付けをしていた。
テキパキと家事を分担してやっている姿は、間違いなく本当の姉妹に見える。
しかし、そんな日常風景に薫が爆弾を放り込む。
「茜さんって、お兄ちゃんに告白してないんだっけ?」
「――え? きゃあ?」
薫の何の前触れもない言葉に茜は危うく持っていた食器を落としかける。
「い、いきなりそんな事……」
「……やっぱりないんだ。そうだよね、お兄ちゃん前と変わってないし」
薫はそう言うと一所懸命に弁解している茜を無視して洗い物を続ける。
「それでも、それっぽい事はあった……んだよ?」
ようやく弁明を終えた茜は、今自身の口から漏らした言葉に気付かない。
「茜さん、その話本当?」
「え? その話って?」
事実、茜は薫から聞き返された質問の意味が分かっていない。
「だから、お兄ちゃんに告白っぽいことをしたって話」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………?」
暫くの沈黙。
「……あの、茜さん?」
「えぇーーー! 何で薫ちゃんがそのこと知ってるの〜!?」
沈黙に耐え切れなくなった薫が茜に問いかけた刹那、茜が覚醒したように大声を上げる。
「うひゃぁ」
その声に盛大にビビる薫。
黙っていた人がいきなり近所迷惑になるほどの大声を出したのだから無理もないだろう。その証拠に、リビングでくつろいでいた筈の洋一ですら何事かと駆けつけてきた。
「おい茜、どうした? 近所迷惑だぞ」
「だ、だってぇ〜、薫ちゃんが〜」
半ば泣き出しそうな勢いで茜が洋一に振り返る。
「はぁ〜、薫、茜に何した?」
茜に聞いてもどうにもならないと悟った洋一は質問の矛先を尻餅をついている妹へと向ける。
「え、えっと……お話を聞こうとしただけ」
「お話?」
「うん。茜さんがお兄ちゃんに告白もどきをしたお話」
正直に話す薫。
その言葉に洋一は頭を抱え、溜息を吐く。
「あの話か? 薫、その話誰に聞いたんだ?」
「茜さんが自分から口走った」
その言葉に洋一がさらに深い溜息を吐く。
「茜、自業自得だ」
「う〜、でもでも〜」
目で必死に助けてくれと懇願する茜。
「自分で蒔いた種は自分で刈れ」
だが、洋一は取り付く島もなく茜をあしらうとリビングに戻っていった。
「洋一の裏切り者〜」
茜の悲痛な叫びが台所に木霊した。
そんなこんなで、昼食の後片付けが終り、茜と薫はリビングで向かい合っていた。
「で、茜さん。お話聞かせて?」
零れんばかりの笑顔を見せる薫。
「うぅ、洋一の裏切り者……」
それとは対照的に沈んだ表情の茜。
ちなみに洋一は、眠いと言って部屋に帰っている。
「どこからでもいいよ。茜さんの話しやすいところから」
「はぁ〜、話したくないんだけどなぁ〜」
そう言いつつもどこから話し出そうか考える茜。別に話す必要がないのに考えるところは何気に律儀である。
「ん〜、そうだね。じゃあ……」
茜はそう言って語り始める。
洋一を好きになった理由や経緯、その時の自分の状況など、それこそ母親が自分の娘に父親との馴れ初めを語るように。
――それは、六年前の夏の物語……
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