――数日後。
遂に茜が泊まりに来る日がやってきた。
「せや、後は任せたでぇ〜」
いそいそと出て行く葉子。
「それでは、行ってきますね。洋一君に薫さん」
それとは対照的にきちんと挨拶する相馬。
「お土産よろしくね」
楽天的なことを言う薫。
「頼むから、早く帰ってきてくれ」
必死に懇願する洋一。
と、十人十色の反応をする神谷一家。
そんな中、
「後は任せてくださいね。御義父様、御義母様」
いつの間にか入ってきて爆弾発言をかます茜。
「茜ちゃん、うちの馬鹿息子のこと頼むで」
「茜さん、無茶はしないで下さいね」
そして、何気にスルーする葉子と相馬。
「はい、分かりました。それでは、良い御旅行を」
笑顔で二人を送り出す茜の横顔にはこれからの波乱の様相が伺えた。
「洋一〜、あそぼ〜」
昼食をとって数十分後、今まで静かだった茜がいよいよ動き出した。
「遊ぶって、何で?」
「ゲームでもトランプでも何でもいいよ」
「ゲームつっても二人でできる物持ってねえし、トランプなんて二人でやったって楽しくないだろ」
そう言われて茜は少しだけ考えると楽しそうに切り出した。
「じゃあ、洋一の部屋のガサ入れ」
「は?」
「それじゃ、行ってきます」
「ちょっと待てぇーーー」
その言葉にリビングを出ようとしていた茜が振り返り一言。
「い・や」
そしてそのまま出て行ってしまった。
「嫌じゃなくて……」
その場で何も出来ず固まる洋一だった。
「え〜と、えっちぃ本はどっこかな〜?」
そう言いながら定番と言えるベッドの下を漁っている茜。
「おい、何を探してるんだ?」
「え〜と、洋一のエロ本」
微塵も恥じらいを見せず言い切る茜。
「そんな場所に隠すかって、普通」
「じゃあどこに隠してるの?」
「言うか! つーか、もってねえし」
そんな事をしていると、ちょうど通りかかった薫が、
「お兄ちゃんのエッチな本ならお母さんが借りていったよ」
原爆を投下していった。
「マジか? 薫」
瞬間的に反応する洋一に茜は半眼で呆れたような視線をおくる。
「い、いや。何でもない」
「はあ、そんなに欲求不満ならあたしが相……」
途端に口篭って赤面する茜。
「ん? どうした?」
「え? う、うん、何でもない。えと……じゃね」
そう言って洋一の部屋を出て行った茜。
「どうしたんだ?」
不思議な顔をして薫に訊く洋一。
「……お兄ちゃん。鈍感すぎ」
「?」
心底呆れる薫であった。
その後、茜は大人しくなり夕食が終った後も何もなかった。
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